芦屋のイタリア料理とイタリアワインのお店

tel 0797-35-0847 open AM11:30~PM2:00 PM6:00~PM9:00 (L.O)

COLUMNコラム

ワインが美味しい季節です。

 んー、秋ですね。ずーと秋の気温で食材だけ変わればいいのにと思います。
でも、夏の暑さの後だから、この気持ちよさが愛おしいのでしょうね。

秋は、収穫の秋です。イタリアでは1年中何らかの収穫祭(サグラ)がありますが、秋のワインの収穫祭は華やかさ、盛り上がりともに別格です。
今まであまりワインの事を書いてこなかったので、今回はワインの話を。

 第何次ワインブームとか言われながら、何度かワイン熱に包まれた日本。
ワインが生き甲斐という方から、レストランに行けば楽しむという方まで様々でしょう。

イタリアは世界有数のワイン産出国であり、消費国です。そして人口の80%位の人は地酒的な地元のワインを飲んでいます。
いえ、むしろ地元のワインしか飲まないと言った方が正しいかもしれません。

 イタリアの酒屋(エノテカ)に行くと、安い物から高級な物まで、見慣れたビン詰めしたボトルワインも沢山売っていますが、ヴィーノ スフーゾと呼ばれる量り売りのワインが人気です。
空のペットボトルとか、空ビンを持っていき、何々を(大体ブドウ品種名)何リットルという風に買います。

はっきり言って、強烈に安いです。よく水より安いと揶揄されますが、それは大げさとしてもコーラと変わらない値段の物もあります。
で、素晴らしいのは日本みたいに、安かろう不味かろうではありません。むしろ雑味の無い綺麗な味の物が殆どです。

量り売りのワインは、何年も熟成出来ません。でもそれでいいのです。人間の介入している要素が非常に少ない、自然の恵み、農作物の延長と実感できるワインです。

それに対してビン詰めされたワインは、熟成という要素を含みます。ワインが他の酒類と一線を画するのはここです。
いくら高級ワインでも、飲み頃でなければ飲み物として何の値打もありません。そして、ワインの熟成期間は比較的話題になりますが、1年を通じての飲み頃、旬を意識なさっているでしょうか?

今日は、美味しいワインの話で無く、ワインを美味しくお出しするお話を中心にしましょうか。
 
ワインは1年の間に2回味が大きく変わります。もちろんちゃんとしたセラーに入れていての話です。
冬の終わりから春にかけてと、夏の終わりから秋にかけてです。この時期に特に熟成が進む訳ではありません。
種を明かすと、人間の味覚が大きく変わります。
当店は、約150種類のワインを扱っています。
そのうち約60%位のワインをケースで買っています。
ワインをケースで買うと、支払いもでかいので本来は避けたい所です。
でも、ワインを美味しく提供するには仕方がないのです、

ワインって、買ってすぐ売れないんです。最低2週間位休ませてから売ります。全然違いますよ。一般的に荒れてると表現したりしますが、例えるなら緑茶を水筒に入れちょっと泡立つくらい振って飲むと確実に味が違います。
多分悪い意味で、妙にマイルドになってそう。。。
ワインも配達の際、悪気は無くても車の中で多少揺れてしまいます。

ケースで買わない40%のワインは結構高額なワインです。そんなにポンポン売れませんので、売れたら発注。最低でも在庫は5-6本ありますので、十分セラーで休ませれるローテーションです。

このワインを休ませる工夫は、その気になれはすぐできます。
次がちょっと難しい。ワインの季節感です。

現在、トマトは1年中スーパーで売られています。
本来の旬はいつでしょう?
なんか、夏野菜の代表みたいな存在ですよね。

でも実際、夏のトマトは美味しくありません。
冬から春まで位のトマトが一番美味しいです。
生食のトマトの話に限定していきますが、このころが1番鮮烈な香りと、トマト本来の美味しい酸味その2つを支える旨味のバランスが素晴らしいです。大切なのは太陽の光で無く、乾季である事らしいです。

白ワインのソーヴィニョン ブランという品種はよくトマトの葉っぱの香りとか、猫のおしっこの香りと表現されますが、この時期のトマトの葉は確かにソーヴィニョンの香りがします。
このソーヴィニョンブランで例えますと、このブドウは非常に香味成分が豊富でして、イタリアのあまり暑い地方では栽培されません。冷やかな香りといいますか凛とした香りです。パイナップルやマンゴーみたいなリッチな南国の香りではありません。
ブドウ品種的に、春が特に美味しそうな気がしませんか?
あと、夏のウリっぽい香りの物、またはそんな香りと相性がいい物とも合いそうな気がします。ウナギ、穴子、キュウリ、鮎、ディル、セロリ、蛸、フェンネル。。。と連想ゲームの様に出てきます。
でも、秋っぽい食材のイメージではないですね。

赤ワインで言いますと、なんじゃらベリーとつくような果実の香り。このフルーティーさは春が一番無くて良い気がします。
むしろ、春は僕はあまり赤ワインに手が伸びなくなってきました。白が美味しすぎます。真夏よりこの時期、色んな白ワインが旬を迎えます。

そして今の時期は、落ち葉やキノコ等茶色いイメージの香りを持つ赤ワインが美味しいですね。秋はあまりフルボディーなワインでなく香りとなめらかさと奥行きで飲みたい。
むしろ、真夏、真冬の方がフルボディーのワインを良く飲みます。
真冬のフルボディーは分かりやすいですが、真夏のフルボディー?と思う方もいらっしゃるかも知れません。
でも、真夏って意外と味の濃い物欲するんですよ。焼肉とかフォアグラとか。
あまり軽い、酸味のある赤ワインを飲むと、この時期は水も良く飲みますのでお腹がタプタプになります。

ここで、気を付けないといけないのがワインの温度。
良く赤ワインは常温でといいますが、16-18度位、つまりヨーロッパの地下のワイン倉庫の常温です。日本の常温ではありません。
18度の飲み物って口に入れるとひんやりしています。決してぬるくはありません。
特に夏は、すぐにワインの温度が上がります。すでにグラスがぬるいですから。
夏場にぬるいフルボディーの赤はしんどいです。

そしてもちろん、真冬にイノシシの煮込みとフルボディーの赤ワイン。これも至福ですね。
では、夏に当店でとあるフルボディーのワインを飲まれて気に入った物を、また真冬にご注文頂いて同じように美味しいかというと美味しい場合もありますし、あれ?こんなんやったっけと思う事もあります。
もちろん不味くは無いですよ。常に美味しい範疇です。
でも、夏に美味しいフルボディーと冬に美味しいフルボディーは別に存在してると思っています。

では、美味しいワインはガイドブックの点数とか、有名だとかインターネットとかで調べれますが、その時期の旬のワインはどうすれば分かるでしょう?
答えは、飲みまくる事です。
うちの店は定期的に色んなワインをドンドン試飲します。
ですので、ケースで買っとかないとすぐに在庫が足らなくなります。

試飲会に行って新しいワインを見るより、自分とこのワインを定期的に試飲する方が大切だと思っています。
ですので、ワインに詳しい方も、当店でワインをお選びの際は、この時期の旬もちょっとお尋ね下さい。

旬のワインを1部ご紹介しましょう。

 

201461794928.jpg
ソンニョディリヴォルタ(白)
飲む時期で印象が変わる代表みたいなワインです。暑い時期に飲むとちょっとくどくも感じますが、秋以降すごく美味しいです。
華やかでインパクトもあり、でも後抜けの良い綺麗なワイン。洋ナシのイメージです。
201461794947.jpg
こちらも秋冬に俄然美味しくなるフィアーノ ディ アヴェッリーノ べシャール。
和食の1番だし的な旨味と生姜、オレンジピールなどのオリエンタルな香り。当店の冬の名物スッポンと是非。
201461794959.jpg
コスタ ダマルフィー フィオールドゥーヴァ。
白ワインですが赤ワインのように飲めます。蟹やアワビ等海のエッセンスが凝縮したものと。

 

201461795013.jpg
エフェゾ。カラブリアの白です。
ザラッとしたミネラルが美味しいしっかりした白です。これは真夏も美味しいし、冬も美味しいワインです。でも印象は結構変わると思いますけど。
アサリやムール貝みたいな出汁が出る貝や、ブリっコリー的な香りの野菜と合うと思います。
201461795023.jpg
レ オルトレ(白)。カンパーニア州のシンデレラワインの一つカーサヴェッキアと同じメーカー。
南の高級ワインのイメージ通りなリッチな仕上がり。
201461795035.jpg

仙人、ヴァレンティーニ。普通のワインではありません。ジビエの為の白と言いきってしまっても良いかもしれません。

 

201461795049.jpg

トレッビアーノ ダブルッツォ マリナチベティッチ。白は魚介というイメージを覆す山のワイン。魚介とも楽しめますが、俄然山の幸です。

20146179510.jpg

この山ウズラの料理、左のトレッビアーノも右上のヴァレンティーニのトレビアーノも面白いですよ。

201461795111.jpg

トゥデーリ。サルデーニアのカンノーナウ。素晴らしいの一言に尽きるワインです。

 

201461795130.jpg
先ほど登場しましたレ オルトレのメーカー。
黒オリーヴ的な香りと果実味の妙で、鹿、鴨、山鳩なんか良いと思います。
201461795143.jpg

セルピコ。10年以上寝たセルピコはヤバいです。これは99年。ホンマにヤバいです。

201461795157.jpg

サルヴァトーレ モレッティエーリのタウラージ。一番黒トリュフの香りと合うなーと思います。

 

201461795211.jpg
ちょっと高級ワインを並べすぎました。
こちら5000~6000円台のアリアニコですがまー素晴らしい。まさにワイン。食中酒。飲めば飲むほどお腹がすきます。
201461795228.jpg

こちらも5000円台のワインですが、単純なワインではありません。フルーツの香りの前に、落ち葉とか茶色いイメージの香りがします。

201461795240.jpg
10年以上寝たアリアニコはネビオロに負けない。
相当数のアリアニコ嫌いなワイン通を改宗させました。
98のカマラート。

 

201461795257.jpg
イストリア ナトゥラリス99。
お宝90年代、結構もってますよ。しかも我ながらアホみたいな良心プライス。
20146179539.jpg
こちらも5000円台のアリアニコ。しかし素晴らしい完成度。毎日飲めます。
焼そばUFOとか、サッポロ一番みたい。定番って軽く見られがちですけど、僕は最高の敬意を払います。
201461795321.jpg

仔豚のロースト。絶賛発売中。

 

201461795334.jpg
そしてガヤのバルバレスコ。お安くさせて頂いております。だってこんな素晴らしい、しかも食事と楽しめるワインが売れないのもったいない!
横の雷鳥とはすごいですよ。
ランバダをスローモーションで見ているようなエロス!
201461795350.jpg

予想以上に大好評の雷鳥。有難うございます。

20146179546.jpg
このトゥデーリ、上の仔豚とも最強に合いますし、横の雷鳥とも素晴らしい相性です。
決して濃くないこのワイン。でも完璧にこれらの料理と寄り添う姿は、僕もこんな料理を作ろうと、奮い立たせてくれます。

 

AMORE 仔羊

 ジビエ真っ盛りな今日この頃ですが、先日仔豚のお料理をご紹介した所、仕込みがおっつかない位仔豚がフィーバーして困りました。
がんばって仕込み続けますが、いかんせん2-3日仕込みに掛ります。売り切れの場合はご勘弁下さい。

まあ、この時期ジビエと相変わらず牛肉はほっといても注文がありますので、今回は親愛なる仔羊のご紹介を。

 ご存知の方も、ご存知ない方もいらっしゃると思いますが、2年くらい前、短い期間でしたが(羊飼いの晩餐)という名のコースをしておりました。
ディ ナーメニューのページにアホみたいに長々とコンセプトを書いておりますが(近々見やすく改造する予定です)、アブルッツォ州から南の地域(以下南イタリア と呼びます)の代表的な肉は、仔羊、山羊、ウサギ、仔牛、鳥、豚、牛ですが特に前3つが、代表的な地方料理として残っている物が多いです。

 最近はモッツァレラブームの延長で水牛の肉も良く使われているようですが、そのうちごく一部の水牛生息地を除いて、使われなくなるでしょう。
作り手側のテンションと食べて側のテンションに、結構な差がある気がします。

関西で(多分神戸で特に)肉といえば、牛肉の事です。西洋料理店では、しばしば普通のお肉とも呼ばれます。
神戸ビーフのお膝元、それも文化かなと思いますが神戸ビーフは高すぎて使えません。

以前、師匠のジェンナーロがお忍びで日本に来た時、軽ーい気持ちで何食べたい?って聞くと、そら神戸ビーフに決まってるやろ、友達2人連れてきてるから、4人でどっか予約しといてくれって。。。
何食べたい?って聞いた時、ご馳走するけどって言葉聞こえたんやろうか???
それとも神戸ビーフ4人で食べに行ったらなんぼするか知らんのやろうか????
弟子に払わす金額で無い事を知っているのだろうか?????

僕 は彼を良く知っています。料理以外全く気が回らない超天然記念物です。悪気は無いのでしょう。何より毎回イタリアに行く度、本当に良くしてくれるし、何倍 もご馳走になってるし、なにより恩人です。ここはひとつ嫁さんにばれないよう現金で支払って、レシートも捨てて、記憶から消し去りましょう。

数年前からずっと神戸ビーフを食べてみたいと言っていたので(毎回僕がイタリアに行く度、神戸ビーフ持ってきたかと本気で聞きます。当然持って行ってない訳ですが5分ぐらい機嫌が悪そうなのは気のせいでしょうか)
念願の神戸ビーフです。
さすが、ガンベロロッソで(イタリアのレストランガイド)1位になったシェフ、食べる時の真剣さが違います。
その時のコメント

E' buono. 
E' interessante.
Lo userei come foie gras.
ma basta poca roba,non riesco a mangiarene tanto.

意訳(関西弁で)
うん、ウマいな
おもろいやん。
フォアグラみたいに使こてみたろかな。
せやけどあれやな、ちょっとでええな。あんまぎょーさん食われへんわ。

。。。ぎょーさん食べはりましたけど。

また話が脱線しました。5分ほどパソコンの前で寝ていたようです。

関西で牛肉がどれほど愛されてるかの話で無く、子羊の話でした。

イタリアにはアペニン山脈が南北に走っています。東西の幅はイタリア半島の付け根の方まで行かないとあまりありませんので、3方を海に囲まれた地形の変化に富んだ国と言えます。
特に南イタリアは海から急に標高が高くなる地形が多く、あまり平野がありません。

牛は体が大きいのであまり急斜面が得意ではありません。
僕も10代の頃(痩せていた頃とも言います)、鳶職の仕事をしてた時期があり、高いとこや屋根の斜面も平気で走り回っていましたが、体が重たくなるとダメです。牛の気持ちが良く分かります。多分平野の方が好きです。

羊や山羊は比較的傾斜も大丈夫なようです。そういえばハイジが買ってるユキちゃんはヤギですね。身軽そうです。
ウサギもあまり敷地が要りません。飼いやすいようです。

少し前まではアブルッツォ州からプーリア州にかけて羊の大移動がありました。寒い時期は、より南のプーリアに行き、春になるとアブルッツォに帰る。
はー雄大なお話しですよね。じゃあ、羊飼いの納税はアブルッツォで?なんて冗談を思いつく僕は、なんて汚れてるんでしょ。

 魚は漁師さん、野菜は農家の方、羊は羊飼いが最も美味しい食べ方を知っているはずです。
例えばこんな料理があります

子羊の羊飼い風

魚介で漁師風 アッラ ぺスカト―ラというと海老、イカなんかもふんだんに入った魚介の煮込みっぽいものが多いですがこちらはどうでしょう?


レシピ解説 子羊の羊飼い風

1)骨付きの子羊を香りのよい薪(オリーヴか乳香木が望ましい)で焼く。

以上。

マジ?

しかし、これがイタリア料理の神髄。経験した者だけが分かる究極のシンプル。
残念ながらオリーブの薪も、ましてや乳香木もありませんが、最高の子羊を、最適な火加減で完璧に焼くと後光が差します。当店には和歌山産無形文化財指定の馬目樫の炭があります。

そして下の写真、2段目ご覧ください。脂なし。皮、骨。ちょっと肉。子羊の肋骨はこうじゃなきゃ!!!
一般的には
scottadito d'abbacchio
乳飲み子羊のスコッタディートという名前で呼ばれます。
スコッタディートは指が火傷するという意味。もちろん手で食べます。

子羊はオーヴン焼も美味しいです。
代表的な料理は

子羊の羊飼いの嫁はん風

羊飼いの嫁はんは料理好きなのでしょう。旦那に比べて手が込んでいます。
といっても、ニンニクとハーブと一緒にローストし、ペコリーノチーズ(羊の乳由来のチーズ。世界最古のチーズは羊乳です。)の香りを添えます。

以前は、鳥や羊をローストする際、必ずじゃがいもを一緒にローストしていました。それはそれは美味しいじゃがいもになります。

しかし、最近はあまりしなくなりました。じゃがいもは子羊から出た旨味を吸います。今はイモにくれてやらず、なんとか肉に戻す努力をします。

この、子羊の火の入れ方、最近の流行と本来のイタリア料理ではかなり違います。まあ好みでしょうが、本来焼いた肉の美味しさは表面の香ばしさと中のジュ―シーさではないでしょうか。
最近良く見かけるのは、ある程度、肉は熱を感じてタンパク質は変化しかけてるけど、血および水分に熱が伝わって無い感じで苦手です。

師匠の言葉を借りると、あれですね、ちょっとなら良いけどぎょうさん食べれないですね。

こう書くと、なんかイタリアの肉はパサパサちゃうかと思われるかもしれませんがちょっと違います。

まず、このオーヴン焼にしてもそう。一般常識では肉はフライパンで表面に焼き色を付けてからオーヴンで焼くとありますが、基本的にそんなことはしません。それこそ表面がカピカピになります。

オーヴンに入れて勝手によく焼けるまで放置!逆に表面が美味しそうに焼けた時に中がジューシーに焼きあがるように、大きさなり火加減なり、途中で出すなりの工夫をします。
料理人が肉を支配するのでなく、肉がいかに自然に無理なく焼けるかの手伝いをします。

上手に焼けたら、一家3人で半頭食べよかなと思うくらい止まりません。これもすごく美味しい食べ方です。ただ、ある程度塊の方が圧倒的に美味しいので3,4名様からお勧めしています。
もっ と究極を言うと、関節から骨を外して肉に出来るだけ包丁を入れず、例えば後ろ足丸ごと一本焼くとシビレます。モモ肉、特に外モモと呼ばれる辺は、筋繊維が 太く、加熱後の離水が顕著です。しかし、肉に全く傷を付けなければ殆ど、肉汁の流出はありません。むしろ生きてた時の血液の様に肉の仲を駆け巡りジュー シーさとなります。
だから、焼いた後すぐ切ったらダメなんです。

こちらのオーヴン焼も骨付きです。

今日の格言
骨付きとはソースである。

骨付きだとソースは要りません。それほど圧倒的に美味しさが違います。焼上がりも違います。焼縮みもありません。

しかし、どうしても骨なしの部分と骨だけの部分も出てきます。

骨なしは良く自分で食べていました。そして飽きました。そして考えました。なんとか骨なしだからこそって言う料理。
必要は発明の母です。

 子羊の卵包み焼

僕、玉子王子です。
卵むっちゃ好きです。
かといって卵は太る等思わないで下さい。卵に罪はありません。産むんちゃうかと思うくらい食べる僕が悪いんです。

この料理良く出来ています。
卵は味にも貢献していますし、加熱にも貢献します。

簡単に説明すると、卵はたんぱく質の塊ですので温度のレーダーになります。卵に何の変化もない温度は、卵より熱伝導の悪い水分を含む肉にはもっと変化がありません。つまり肉の周りに付けた卵で肉が感じる温度を理解しながら火を入れていきます。
ある線でやはり急激に火が入るポイントがありますが、その際本来流出する旨味、肉汁は卵が吸いますので一滴たりとも無駄になりません。

最終的にはしっとり柔らかく焼上がりすごく美味しいです。

 

201461794219.jpg

先ずは解体。

 

201461794231.jpg

炭火焼き用の肋骨。スコッタディートです。

 

201461794245.jpg

足の付け根と首。こちらは煮込みにします。煮込むとすごく柔らかく、ええ出汁が出ます。

20146179437.jpg

僕の好きな部位。すね肉。大きい子羊だったら煮込まないとダメですが、この大きさの子羊ならオーヴン焼。サイコーです。

201461794319.jpg

ミスターオーヴン焼の肩。5.6名様でお越しの場合是非!大きな塊のリターンは大きいです。

 

201461794332.jpg

モモ一本丸焼きのご予約は滅多にありませんので基本的には骨なしになるモモ肉。しかし卵包み焼でしっとり大変身!

 

201461794350.jpg

子羊半頭で、余るのこんだけ。しかもこれもラグー炊く時ほり込みます。ナポリの知恵です。

 

おめでとう!!!

 先日、倉敷のクスこと、楠戸伸太郎君(倉敷のイタリア料理店、トラットリアはしまやオーナーシェフ)がご結婚なさいました。で、披露宴にご招待頂き、新郎側の代表のスピーチまでさせて頂いて光栄です。
クス、まゆみちゃん、おめでとう!
僕から夫婦円満のアドバイスは、イスラム過激派がカトリックを説くのと同じなので辞めときます。
手さぐりでがんばれ!
 
 披露宴には、今当店でがんばっている、ヒデ(谷口君)とアンナ(後藤さん)、クスの前にウチから独立したガミちゃん(博多のオステリア オオガミのオーナーシェフ)
と、もとジラソーレマネージャー、マウリも来ていて、なんか同窓会みたいになりました。
 
しかし、まあ立派な披露宴でした。そして僕が1番感動したのは、クスのとこのスタッフがかくし芸といいますか、催しをしていまして(ドリフのヒゲダンス)、それ自体も良く出来ていたんですが、結構練習してるなーというのが見てとれました。
 
不景気ながら、トラットリアはしまやさん、よー流行っております。ジラソーレも帰宅時刻はやたら遅いですが、はしまやもそっちゅう夜中の2時、3時まで働いています。
そういう環境が続くと、人間、余計な事をしたくなくなります。それでもその環境下で、結構練習したんでしょうね。ヒゲダンス。しかも内緒で。。。
胸が熱くなりました。
 
クス、ガミちゃん、マウリ、日本語で言うと元従業員です。でも、そんな言葉では表現できません。
一番近いのは、戦友でしょうか?
 
ジラソーレが今の場所に移転したころ、前の店の時から、当時僕に出来る準備は全てしているつもりでした。
前の小さな店のなけなしの売り上げで、スタッフを余分に雇い、次の店の家賃も発生し、国金からは希望額が借りれず、精神的にも金銭的にもギリギリなところで、もし移転して見込んでいる売り上げが無かったら夜逃げやなと家の荷物の整理もしつつの準備期間でした。
 
その、マジでプレッシャーに潰れそうな時、支えてくれていたのがクスとガミちゃんです。
 
クスの方が年上ですが、ガミちゃんの方がウチでは長く、クスが入った時は4年目くらいでした。
ガミちゃんは、無口であまりアピールをしませんが、任せている仕事は結構なレベルでこなしていました。
 
クスが入って来て、今まであまりしゃべらなかったガミちゃんも結構話すようになり、(多分僕と口ききたくなかっただけですね)クスは、ウチに来た時すでにフランス料理を7年やっていて下地はしっかりありました。
まあ、しっかりしたやつでした。楠戸君。明確な目標があると、人間こんなに成長が早いもんだと感心しました。
 
ガミちゃん、クスと本気な青年があの小さな店に2人も働きに来てくれている。本当にテンションの高い時期でした。
元々すべて自分一人でするつもりでオープンしたので、厨房もそれに合わせて1人で調理するように設計していました。
 こんな本気な青年2人の青春を預かって、がむしゃらな2人を見ていて移転を決意しました。
このままじゃ、こいつらになんもさせてやれないまま年月が経つ。お客さんは、杉原が作る料理を食べに来て下さっている訳ですから、彼らに任せて僕が料理しない訳にはいきません。
しかし、一緒に鍋を振るスペース、僕の手元をもっと間近で見るスペース、そして彼らに与える責任とそれを果たしてもらうスペース。全てが足りませんでした。
 
 なんぼ仕事教えても、成長したら辞めて余所行きよる。。。
当時はそんな事、微塵も考えませんでした。いや、むしろもうチョイウチでがんばって、そして胸張ってジラソーレ出身ですと自分の店を持ち、成功して欲しい。
そして、そんな彼らを見て、彼らの後輩、その後輩もがんばれるんじゃないかと信じていました。
何より、この二人は僕の事を信じてくれていました。
 タイガーマスクの虎の穴です。死ぬかも知れへんけど、生き残ったら無敵。こんな職場にしよう!
と、親方としての目標を初めて持ちました。
 
 虎の穴は、そもそもタイガーマスクは漫画の話です。(プロレスラーでもいましたが)
死ぬかもしれへん。。。
自分の店で、ホンマにそう思いました。
移転直後、予想を上回るお客様の数で、すぐにどうにもならなくなりました。すぐにスタッフ募集をし、新たにもう一人コックの見習いを雇いましたが、ゴールデンウィーク直前、ガミちゃんとクス以外が、同時期に敵前逃亡しました。
 
 
 
おい、ゴールデンウィーク、俺ら3人やで。。。
可能な限り、僕の奥さんも店を手伝ってくれましたが、当時、1日中電話が鳴りっぱなしでした。
一人は、電話に出まくる、僕は調理、一人はホール、このタイミングでご到着のお客様があればチーン。手詰まりです。
 
皆様、期待してお越し下さってたでしょうに、本当にあの頃はご迷惑も沢山お掛けしました。なかなかうまい事行きません。
 何より悔しかったです。
期待してお越し頂いているお客様に、自分たちが納得できる仕事ができない事。
辞めますも言わずに、急に来なくなった若者にも。
そして、自分の夢の結晶の自分の店が、お客さまも満足させれない、自分も満足できていない、そして従業員も幸せに出来ていない。
 
 俺、コック向いてないかも。。。
8歳で、コックになろうと決めてから、初めての挫折でした。
 
でも、そんな時も泣き言と文句をこれでもかと言いながら、クスとガミちゃんはついて来てくれた。
1番大変だった時、朝7時出勤、帰るの深夜3時とか、3時半とか。
見習二人が急に辞めた時、それまでアルバイトを雇う事に抵抗があったんですが、そうも言ってられない。
アルバイトでも、お水とおしぼりくらいは持っていける。ちょっとでもお客様をお待たせするのがマシになる。
何より、ホンマ死ぬんちゃうかと3人とも思っていましたから。
 
ある日のランチ時、ガミちゃんが片手で仕事してるのを見つけ(その仕事は両手でしないとダメな仕事でした。)、0.2秒でキレて、サモ・ハン・キンポーの燃えよ デブゴンよろしく作業台を飛び越え、ガミちゃんにドラゴンスープレックスをお見舞いしようとしたら、クスが割って入って、「シェフ、今日大神さん、ごっつい熱あるみたいですねん。今日はちょっと堪えとって下さい.」
どれどれ、、、、なんじゃこりゃー!!!赤身肉なら火通るんちゃうかと思うくらい熱いガミちゃん。
 
ゴメンネ。
クスも言うてくれてありがとう。
 
僕 : ガミちゃん、取りあえず今日はもう帰り。
ガミちゃん : 大丈夫です。
 
僕 : 今日のディナーは、ちょっと落ち着いてるから、今日は帰って、マシになったら明日来てくれる方がありがたい。明日はまたクンクンやし。
ガミちゃん : 。。。
 
ガミちゃん、ちょっと悔し涙が出かけてました。5年いてこの時だけかな。
そこで熱血野郎、楠戸君が一言。
今日は、僕が死ぬ気でがんばります。シェフ2人でなんとかディナーしましょう。
 
これ書きながら、思い出して目頭が熱くなります。
 
その日のディナーは、惨敗でした。絶対負ける喧嘩、2対14くらいでしたかね。途中で留守電にしてやりましたよ。
 
そっから再出発です。学生のアルバイトを雇って、アルバイトの子らに更にキレるお客さん続出。
そらそうです、当店の制服は白いシャツなんですが、透けて見えるくらいド派手な下着を付けてくる子、ヘアピンしてる男子、1日で辞める子、かってに店のドリンク飲む奴。。。
今はもうこんな事は無いのでご安心を。
 
しかし、当時は本当にへこみました。
このころ食べログとかにもケチョンケチョンに書かれてたみたいです。
そらそうですね。
 
でも、収穫もありました。
今、当店のホールをがんばってくれているアンナ事、後藤杏奈さん。
実は、このアルバイトの唯一の生き残り且つ、そのまま就職してくれた奇特なお方。
今では、アンナに会うのを楽しみにして下さるお客さまも。
 
 その後、社員でコック見習いを何人も雇いましたが、クスもガミちゃんも、一線を越えたタイガーマスクになってたので、その後が誰も続かない。
ずーと1年続かない人が続いて、やっとヒデ(谷口君)が入ります。ヒデは今年四年目。多分ドМです。
こいつもタイガーマスクにいつかなるんやろなー。
 
はー、あっという間に時間が経っていきます。クスも結婚したし、次はガミちゃんかなー。
しかしガミちゃん、男前やのに、女っ気ないなー。
そのうち、サンフランシスコで結婚式しますとか言ってきたらおもろいなーと、得意の毒舌で終わりましょうか。
 
P。S
倉敷と、博多のタイガーマスクへ
 
こんな滅茶苦茶な店で働いてくれてありがとう。
君らが、君らのスタッフと接している所を見ると、結婚式の親の気持ちってこんな感じかなーって思います。
 
クス、この前くれたメッセージ、(シェフ、自分がシェフになった今でも貴方は僕のシェフです。僕も早く痛風になりたいです)
僕が、クスに送った披露宴のメッセージより上等やな。
 
君らの店のオープンに立ち会わせてもらったり、結婚式呼んでもらったり、君らとまだ交流が持てているのは財産です。
ますますのご発展をお祈りしております。
戦友より
 
 
201461711716.jpg
堂々として、貫録も出てきて良い男になったな。
奥さんも聡明で、酒飲みでいいじゃなーい!
 
お幸せに!!!!!!

NON SOLO SELVAGGINE. ECCO,UN PIATTO DEDICATO AI FR

まーしかし、今ジラソーレの厨房は、僕ともう一人、ヒデ(谷口君)だけで、このメニューの多さは大丈夫なのか?と自問自答しながら、仕事における自分のドMっぷりに回りに感謝しながら、腹の底から怒鳴り倒している毎日です。
全く仕込みが追いつきません。
 
最近、当店で (なあ、ちょっと休憩したら~)というと、野鳥の羽をむしる事です。
この時期以外は、休憩とはシルバーでも拭いてこいやという意味です。
どちらも、まあ単純作業で頭を使わなくていいし、両手を使うので他の事出来ません。
 
当店では、一つの作業しかしていない状態を、いつの間にか休憩と呼ぶようになってきました。
そら、従業員なかなか続きません。
 
ジビエが始まって、同じ来客数でも絶対的な仕事量が増えてるのに、こんな料理が急にしたくなって作りました。
 
 今回のタイトルはシルビオも読めるようにイタリア語で書いてみましたが、前回のコラムでご紹介したフリアリエッリ(ナポリの青菜)が気温が下がる度、ドンドン美味しくなってきて、これに捧げる一皿をって考えました。
フリアリエッリは、サルシッチャとサイコーによく合います。その他、豚肉全般とも非常に合いますので、イタリア産の子豚を使って詰め物をしたローストを用意しました。
 
 
20146171826.jpg
あの子豚を解体した後、ロース部分とバラの部分に自家製のコテキーノ(豚の皮なんかも入ったゼラチン質たっぷりのサラミの一種。大晦日に良く食べます)を詰めて先ずはボイルします。
 
写真はボイル後、冷めて煮こごった状態。
20146171839.jpg

断面図。

20146171854.jpg
分厚くカットして、周りはカリッと、中はねっとりな感じにローストします。
出来上がりはこんな感じ。
煮こごりを煮詰めた物をソースにして、仕上げに常連で友人の高橋氏のイタリア土産、ヴィンコットヴィネガーを2,3滴。
 
そして、たっぷりとフリアリエッリを添えます。おー!!!肉に負けません。がっぷり四つ。肉を食べて、フリアリエッリ食べて、肉を食べて、フリアリエッリを食べて、肉を食べ、、、、あ、終わってしまった。
なんか、永久に食べれそうな料理です。
2014617197.jpg
ヴィンコットとは、ワインにする前のブドウ果汁を煮詰めた物。これはそれを更にヴィネガーにした物みたい。
初めて使いました。美味しいです。
高橋さん、有難うございます。
20146171939.jpg
イタリア料理の、このなんか押し迫ってくる感じが好きです。最近の綺麗な料理も結構ですが、これ何人前?と聞きたくなるような盛り付け。愛されてるなーと感じます。
上のロール状の物を、切って行くとこうなります。ウマそうでしょ?
20146171955.jpg
最後に仕上がりのアップ写真。すぐ売り切れるかもしれません。又すぐ作りますが。。。
 
と、ジビエとも格闘してますが、それ以外のお肉とも仲よくしています。
 
次回は子羊のご案内でも。

秋の食材 パート3

ちょっと地味に見えるかもしれませんが、僕にとって秋冬の一番の香りはフリアリエッリ。
ナポリの青菜です。
 
有名な話ですが、北イタリアと南イタリアは仲が悪いです。(今はちょっとマシみたいですけど)
お互いをののしる言葉で、南の人は北部の人をポレントー二(ポレンタばっかり食ってる人、ポレンタ野郎ってとこですかね。
 
北部の人は南部の人をマカロニ野郎と呼びますが、実は一昔前はマカロニ野郎でなく、マンジャフォッリエ≪葉っぱ食い≫)と呼ばれていました。
 
 まーしかし、イタリア人は野菜をよく食べます。イタリアで働くまで想像もしていませんでした。
日本に長い事住んでいるイタリア人に、イタリア帰ったら何が食べたい?て聞くと、意外に野菜の事言う人が多いです。
それは、野菜が特別好きと言う訳でなく、肉、魚は日本にもそれなりの物がありますが、イタリアにしかない野菜ってけっこうありますからね。
 
今から、野菜が盛り上がる時期です。入荷次第ご紹介しますね。
 
201461703843.jpg
今年も始まりました。シルヴィオからフリアリエッリの第一弾。
胸がキュンとします。
201461703856.jpg
火を入れるとこんな感じです。
クタクタに見えますが、ちゃんと歯ごたえがあるのが特徴です。
美味しい苦みと鮮烈な香りが素晴らしい!
 
201461703915.jpg
フリアリエッリと言えばサルシッチャ。ナポリではソーセージとフリアリエッリは切っても切れない仲です。
サルシッチャだけでなく、色んな肉類とよく合いますが、やはり豚肉は特に相性が良いです。
 
久しぶりに仕入れました。イタリア産の皮つき乳飲み子豚。
僕のイタリア料理に対するあこがれの原点。
子豚は丸焼きに限ります。しかし通常営業では、なかなか丸焼きは難しいので、ポーションカットしながらも丸焼きに近い仕上がりを常に目指しています。
201461703933.jpg
こちらは山ウズラのロースト カセルタ風。
普通のウズラでも良くこの料理をしますが、やはり香りが違います。
ポーっとする香りですね。
 
201461703951.jpg
友情出演のマウリ。以前貸切パーティーで子豚の丸焼きをした時の写真を、お客様が下さいました。
中に肩ロースを詰めて焼くので、20人前位取れます。
20146170414.jpg

月に1回くらい、子豚の丸焼きデーでもしましょうか。

201461704120.jpg

プリティーな子豚のお尻。モモ肉にも詰め物をして、ハズレの部位なしの1品。

201461704239.jpg

イタリア菓子の中でもお気に入りの一つ、カンノ―リ。
自家製のリコッタで作っています。
アレンジなしの100%イタリアテイスト。震えます。

loading