COLUMNコラム
自家製シリーズ パート1 パン編
ついに人類は月に足を下ろしました。今年の初めに、僕もスマートフォンを購入しました。
しかし、なんでちゃんとした説明書が無いんでしょうかね?ちょっと前まで只の持ちにくい携帯でした。
努力の甲斐あって、携帯で撮った写真をホームページに載せる裏技を発見しました。まだやり方の分からない方、ご来店時にこそっと声をかけてください。お教えします。
youtubeで、ナポリ風ミックスホルモンの煮込みで検索して頂くと動画もでます。しかしなんであんなに画像が悪いんでしょ?
てな訳で、今回の更新から写真付きでいきます。何回続くか賭けたりしないで下さい。
ちなみに、イタリアに4年半住んでいて、僕自身が撮った写真はフィルム一本分ない位です。 オッズの参考までに。
今回から自家製シリーズ?です。自分で作れるものは自分で作ってみる。ウチの店出身者には、世界中どこででも働けるようになりなさい、と言ってます。技術者の特権です。
場所と、環境が変われば当然食材も変わるし、手に入らない物もあります。あきらめずに解決する方法の1つが自家製です。
まずはパンから。
ただ今当店で焼いているパン4種類です。これ以外で突き出しのタラッリ、メニューによってはブリオッシュ、ピッツァ系も焼ます。
あと、玉ねぎのパニーノ、パニーノナポレターノ、ゴマパン、松の実とレーズンパン、玉ねぎとオリーヴのパン。。。
オープン当初から、惣菜パン的な物をずっと出してきまして、評判も良かったのですが、皆さんパンを食べすぎて料理が食べきれなくなる事が多く、止めました。
イタリア料理におけるパンは非常に重要です。料理やワイン同様、パンも地方ごとに特色があり、その地方のパン、料理、ワインと揃って初めて地方料理が成り立ちます。
ナポリ料理食べながらバゲットやクロワッサンは、合いません。しっかりした味付けの料理を食べ、しっかり焼き込んだかたく、モチモチしたパンを食べると口の中がニュートラルになり、また次の一口に手が伸びます。
パンを食べすぎるとお腹が一杯になりますが、パンが全くないのと、パンが適量あるのでは、パンを全く食べない方が料理もあまり食べれません。
あと、パンにオリーヴオイルやバターを付けるのもマナー的な事で無く本来の料理とパンを一緒に食べる美味しさを損ないます。
皆様、家庭のご飯のおかずで1番好きなおかずを思い描いて下さい。チンジャオロースーでも、生姜焼きでもすき焼きでもなんでも結構です。
その1番好きなオカズの日、ご飯が炊きこみご飯なのと、好みの炊き具合の白ご飯とどちらがいいですか?
もちろん好みの問題ですけど、僕は白ご飯の方がいいです。
パンも同じで、美味しい料理の汁(別鍋で作ったソースでなく、その料理の汁、煮汁、焼汁、焼脂をイタリア語でス―ゴと言います。)とパン。
至福です。
パンにオリーヴオイルやバターも美味しいですが、オカズとご飯を食べるように料理とパンを食べてみてください。
このパンはそのための、その美味しさに狙いを合わせたパンです。
オープン当初から定番のパーネナポレターノ。プレーンタイプとアニスシード入りがあります。アニスシードは苦手な方もたまにいますが、非常に個性的な美味しさがあり、またアニスは生地の発酵を助ける性質があるらしく、昔ながらのパン屋では、アニスを入れてる所が多いように思います。
当店のパンは、ヨーグルトで起こした100%自家製の自然発酵種です。当店を卒業するスタッフには暖簾分けの様にこの天然酵母を持たして、店創りの基本にしてねと言ってます。
どんな料理のアレンジをしようと、ワインが飲める、パンが欲しくなる。これだけは外したらアカンでーとも。
最近の新作かつ超お気に入り、アルタムーラ風プーリアパン。小麦でなくセモリナです。焼き立てで無く、1日熟成させてから皮目を炭火で焼いてお出ししています。セモリナはアルタムーラ産、酵母も自然発酵、足らないのは石窯だけです。
南イタリア料理をするのに欠かせないフリセッレ。元は船乗りが航海に持って出たカチカチに乾燥した保存性の高いパンです。しかもネズミ等に食べられないようロープに吊るして保存していました。その名残で、今でもロープが通せそうな穴あきパンです。
このままだと硬すぎて口が切れる程です。昔の船乗りは海水につけて、ふやかして食べていました。
いまでも、水につけて少し柔らかくしてからトマトを乗っけたり、そのままスープをかけたりします。
フリセッレの魅力は、水分を吸って柔らかくなった所の素朴な粉の美味しさと、その吸った水分の旨味、そして何より柔らかくなった所と、まだ固くカリッとしている所のコントラストです。
ケロッグに牛乳をかけて直ぐ食べると一体感が無いし、置いとき過ぎるとブヨブヨで気持ち悪いですよね?
カリッ、グニャが入り混じる所が美味しいと思うのですがフリセッレもそれに通じます。
料理と同じウエイトでパンに取り組んでいます。好きなのもありますが老後はパン等の粉モンで生計を立てたいと小さな夢を持っています。
と、こんな感じで第一回自家製自慢大会パン編を終わります。
SAGRA DI MAIALE 豚祭り
イタリアでは、年中どこかで何かの収穫祭が行われています。代表的なのはブドウの収穫祭。
ローマ近郊のマリーノという小さな町は、すごいです。町の小さな噴水からその日は水ではなく、白ワインが出てきて観光客にも振舞われます。
そして、豚の丸焼きのパニーノなんかも屋台で売られ、本当にわくわくするお祭りです。
こういった僕のイタリアの原体験を、お店でも反映して行こうと今年から、思いつく限りのサグラをやっていきます。
第一回は、大好きな豚。ご存知の通り、養豚場でも少し働いたくらい豚に興味がある時期がございまして、それが祟ってか、
出荷直前の豚の様に私自身成長致しました。
メニューに載せきれませんが、今ジラソーレで用意している豚関連
1、SOFFRITTO DI MAIALE ナポリ風ミックスホルモンの煮込み(心臓、レバー、脾臓、食道軟骨)
2、FEGATO DI MAIALE IN RETE 豚レバーの網脂包み焼き
3、MAIALETTO AL FORNO イタリア産乳飲み子豚のオーヴン焼、ポルケッタの1部を切り取った感じで
4、SALSICCIA 自家製ソーセージ
5、STENTENIELLO AL FORNO 詰め物をした豚小腸のロースト
6、SANGUINACCIO RUSTICO 豚の血のソーセージ
7、SANGUINACCIO DOLCE CON CHIACCHERE 豚の血入りチョコレートクリーム キャッキェレ添え
8、MAIALE ALLA BRACE 極み豚肩ロースの炭火焼
4名様以上で前日までにご予約頂くと、ほとんどの豚料理を盛り込みます。
(お取り分けして頂く事になります。)
別に豚ずくしがしたい訳ではありません。これ以外にもたくさんメニューはありますので、全く豚無しもいけますし、1品お試しもありです。只、食文化として豚を1頭食べつくす知恵と食欲をお伝え出来たらと思います。
出会い
最近、一般的に中年と呼ばれる年齢に達し、周りに感謝する事が増えました。20代、30代前半のあの爆発的なエネルギーは、すっかり使い果たしましたが、また違うう強さも得てきています。
去年の年末に、見習いが数カ月で去っていきました。
当然、仕事量も増えて大変ですし、毎日鍋も自分で磨いています。
でも、不思議とすがすがしい気持ちで、日々を過ごせています。そして、ずっと続いている今のスタッフには、より何かを分け与えていきたいと思いますし、心から彼らの人生にエールを送りたいと思います。
すでに独立した大神君、楠戸君、今いるアンナ、ヒデ、短い間だったけど一緒にやれたマウリ、素晴らしい出会いです。
逆に、当店に数カ月居ただけで、職歴にジラソーレと平気で書く人たち。どっかで気張ってくれる事を願っています。
スタッフとの出会いもそうですが、今まで出会ってきて、僕に多大な影響を与えて下さったマエストロ達。
イルモンドひら井の平井シェフ、エルポニエンテの小西シェフ、イタリアでお世話になったティーナ、ジェンナーロ、振り返るとつくづく素晴らしい人たちに出会ってきたなと思います。
そしてに両親にも、この年になってやっと心から感謝しています。
こんな事を書くと、なんか杉原は、もうすぐ死ぬんちゃうかと思われるかもしれませんが、実は真逆なんです。
景気も良くないし、体力落ちてきているの実感しますし、見習いは続かないし、奥さん恐いし、大変な事も多いのですが、妙に充実してて幸せを実感できる事が多いのです。
で、この原動力は何かというと、情熱と価値観です。
この情熱と価値観は、持って生まれたものでなく、親と、マエストロ達に植えつけられた物だと感じます。特に情熱の部分は、只ただ僕は、彼らに強烈に憧れていました。
そして思い起こせば、マエストロ達も、誰かに強烈に憧れていたような気がします。
なんでも話せる友人にも恵まれています。親友のルーポの森さんなんか親戚化してますし、少しずつ知り合った料理人仲間が日本各地にいます。
同じように、最近付き合いが始まったのが2人の農夫。1人が九州のシルヴィオ。ナポリ人で、本人も料理人。日本で、ナポリ料理をしようと思っても、独特の個性のイタリア野菜が無い。そこで、九州の農家のご協力のもと、ナポリ野菜を作りだしたそうです。
もう一人が、尼崎の島中さん。専業農家で産まれ育った彼は、そのまま農業の道へ。数年前から、イタリア野菜も作りだし、アーティストの様な感性で料理をするように野菜を作る方です。
この二人の共通点は、僕と同世代、二人とも自ら料理もする、そしてモノづくり精神あふれる職人である事です。
知り合いのレストランを紹介しましょうか?と、もちかけても、今は作るバランスと売るバランスはこれくらいが丁度いいと、売る事より先ず、良い物を作る事を考えています。
どちらの畑にも遊びに行きましたが、子供が自分の秘密基地を案内してくれるがごとく、目を輝かせ熱心に説明してくれました。あー、この方たちの野菜で料理出来るのは、本当に幸せやなーと心から思います。
僕が、お客さんと勝負しているように、彼らは料理人と勝負してるなーと感じます。実際野菜が届いた後、翌日とかにどーでしたか?と電話まであります。ここまで来ると、一緒に店やってる気になります。
後は、魚屋が2軒。一軒は淡路と徳島の魚専門店。ジラソーレのオープン当初からのお付き合い。このお店との出会いが、その後の当店の方向性を決めたと言っても過言ではありません。一緒にバーベキューしたり、淡路で良く遊びます。
もう一軒の魚屋は、去年からのお付き合いなんですが、当店担当の方が、元淡路島の漁師さんで、これまた色々教えてくれます。この一年でかなり目から鱗が落ちました。
もう1軒だけ自慢させてください。東京のお肉屋さんからもらう、極み豚。当店を造った内装屋さんの紹介で知った豚肉で、豚はこれ以外使う気になれないです。特質すべきはサービスの良さ。いかなるカットも、部位も内臓も用意してくれます。
2月にSAGRA DI MAIALE 豚祭りを計画しています。今回も僕のへんてこな注文に完璧に答えてくれました。GRAZIE!
と、スタッフは少ないんですが、僕には超すごいパートナーが一杯います。
1泊2日 ナポリ、シチリア
1泊2日で、ナポリとシチリアに行ってきました。
スミマセン。ちょっと大げさに言いました。そんな夢のような話ではありませんが、それに匹敵するつかの間のトリップでした。
ジラソーレの創業時から、5年当店に努めてくれた、ガミちゃん事、大神君。九州の博多で、オステリア オオガミというレストランをやっております。
オープニングを手伝いにいって以来、彼の料理を食べていないので、1周年辺りで襲撃して、思いっきり師匠風ふかしに行こうと思っていたのですが、近いようで遠い九州、なかなか実現できず、やっと11月の下旬に行ってきました。
今回も、もうひとつのきっかけが無かったら、伸ばし延ばしになっていたかもしれません。
ただ今、ジラソーレでは、今まで血眼になって探していた、ナポリ独特の野菜や、イタリア野菜を仕入れています。
九州でナポリの野菜を作っていると、イタリア人から直接売り込みの電話があり、福岡のスーパーシェフ、アンティカ オステリア トトさんの本田シェフのご紹介だとの事。
フィアリエッリやスカローラ、ブロッコリー ディ ナターレ等、今まで夢にまで見ていた野菜を作っていると豪語する、このナポリ人シルヴィオ。半信半疑でサンプルを送ってもらい1通り試食しました。
正直、涙がでました。あーこの辺の野菜が日本で使える日が来るなんて!!!
これを読んだ方は、どれだけこの野菜が美味しいのだろうと想像すると思います。実際かなり美味しく、良くできているのですが、僕は、美味しさにはいくつか種類があると定義しておりまして、
一つは美味しさの数値が高い美味しさ。フォアグラや、和牛がこの代表でしょう。料理でいうとすき焼き等です。
2つ目は、バランス、塩梅の良さの美味しさ。メロンやマンゴーとミカンを比べると、メロン、マンゴーの方が美味しさの数値は高いですが、ミカンがメロンやマンゴーに負けるという事ではありません。ただ、ミカンを美味しく作ろうと、糖度を上げることばかり考えても美味しくなく、ミカンの美味しさは、酸味と甘みのバランス×香りです。
料理でいうと、そばが代表的でしょうか。旨味の数値的にはあまり高くないですが、風味、喉越し、香り、キレ等のバランスで素晴らしく美味しく感じます。
3つ目は、他に代わりがない個性を持つ美味しさ。梅干し、牛蒡、鮒寿司等でしょうか。
八百屋さんで、キュウリと牛蒡どっちが美味しいと質問しても店主は困るでしょう?もちろん、この3つの美味しさの個性をそれぞれかね揃えて、複合的な美味しさの数値がでます。
話は少しそれますが、来店して一言目に今日のお勧めは?と初来店のお客様に聞かれても答えようがないのは、まさにこの理由です。
果物屋さんで、1番美味しい果物どれ?と聞かれてメロンと即答出来るのであれば、僕はメロンの時期はメロンしか売らないと思います。
逆にリンゴが複種あったとして、リンゴを買いたいのですがどれがお勧めですか?と聞かれると、シャキッとしたリンゴと、パキッとしたリンゴどちらがお好みか伺います。
リンゴならこのパキッとしたやつしかあり得ないと思えば、それしか扱わないでしょう。でも世の中には、パキッとしたリンゴを食べると、歯ぐきから血が出る方もいますし、アップルパイを作るからパキッとしてないとだめな時もあります。
情報社会で情報もあふれていますし、商品の選択肢も信じられないくらい多くなりましたが、逆にドンドン生産者と消費者の意識は離れて行っている気もします。
どういう事かと申しますと、物凄い選択肢の様に見えて、意外に選択肢は流行りや、価格競争の方向に集中しています。そうしますと、消費はさらにそちらの方向に集中しますので、生産者側は足並みをそろえて更に、流行りと低価格を追わざるを得ません。
グローバル化への愚痴になりましたが、シルヴィオが作る野菜は、代用がきかない位の明確な個性があり、かといって強烈なドリアンの様な個性でもない独特の香りと風味、後味を持つ野菜なんです。
牛蒡とかレンコンて、これは牛蒡じゃないとダメ、レンコンじゃないとダメってあるじゃないですか?菊菜なんかもそうですね。
こんな感じでシルヴィオと急速に仲が良くなり、しかも紹介してくれたのはあの本田シェフ、これは直接ご挨拶にも伺わないとと思い九州遠征を決めました。
1日目ナポリ。
オステリア オオガミに着いてカウンターに座りました。お昼に伺ったのですが、夜のメニューでおまかせでお願いしておきました。
まず、すごく嬉しかったのがお店がピカピカです。掃除を超えて磨くのレベルです。これは別に姑の様に細かくチェックした訳ではありません。瞬間的に清潔な空間にいると実感できます。
フェラーリのロゼを1本大神君がプレゼントしてくれました。昔はこんな気遣いもなかったなー。
次に又二ヤリとしました。突き出しのオリーヴとタラッリです。タラッリは昨日焼いた味です。(前日に焼いて1番置いたのが1番美味しいです。)オリーヴのマリネもつかり具合が丁度。
これは、うちの元従業員だからべた褒めしてるのではありません。でも突き出しってお金を頂く物じゃないけど、ただ出すだけになったらダメです。これはアミューズでなく、アミューズまでのつまみですから、毎日営業していると、何となく出すようになりがちです。
うちの店でも、口酸っぱく行っていますが、漬かりすぎたオリーヴやちょっと湿気たタラッリお出しするくらいなら、辞めた方がいいと。
当り前の事ですが、掃除も料理も毎日の事です。これ以上は無い、と思えるところまでレベルを上げて、それを当り前とする。
僕が従業員に伝えたいのはこの一言に尽きます。
堅い話になりましたが、1品目の前菜を半分ほど食べ、僕は初めて嫁さんに感情の入った文章のメールを送りました。(いつもは用事の件だけですね。スミマセン。)
まー内容は、期待していた以上に旨い、連れて来てあげたら良かった等です。
これは食べログではないので、何を食べてどうやったとは書きません。でも料理で人を幸せにする。大神君はその段階に入ってきたなと大いに感激しました。
もちろん技術的にもまだまだ、伸びていかなければならない事もあるでしょうが(もちろん僕も)伸びていく方角は正しいのではないでしょうか。
彼が、当店で働いてくれていた事を誇りに思う再開でした。
まー、フェラーリのロゼ1本分くらい褒めてあげて、早速師匠風ふかしまくりました。この日僕の為に、大神君は夜の営業を休み(決して強制しておりません。自主的に休みました)、車で一緒にシルヴィオの所へ行きました。無理やり大神君の所のスタッフ全員を連れて。。。(一応デートの約束が無いか位は聞いたと思います)
予定より1時間くらい遅くなり、何とか暗くなる前にシルヴィオの畑に着きました。会うのは初めてですが、電話ですでに何度も喋っていたのですぐバーチ(イタリア式あいさつのキス、ホッぺトゥーホッぺです。もちろん)
すぐに暗くなりそうだったので暗くなる前に急ぎ足で全畑を見て回りました。しかし、産地めぐりはサイコーです。
市場も料理のアイデアがドンドン浮かびますが、産地はもうトランス状態。真っ裸になりたい衝動に駆られます。その衝動を料理に変換する時のパワーは岡本太郎が乗り移ったかなと、周りを不安にさせてるようです。
シルヴィオとナポリ話や、今後どんな野菜が作りたいとか、どんな野菜が欲しいとかちょっと下ネタとか話してるうち、あっという間に3時間。外はもう真っ暗でした。
翌日は、ガミちゃんとシルヴィオ、シルヴィオの奥さんとアンティカ オステリア トトさんに行くのでこの日はまあまあおとなしくホテルに帰りました。
前日の夜を控えたからか、絶好調でトトさんへ。
基本、僕は酒を飲まないとやや無口です。特に昼の12時を回らないとほんと喋れないのですが、この日はきっちり12時くらいに飲みだしてそのままなんと5時30分まで居座って飲み続けるというKYなグループになっていました。本田シェフ、ほんとスミマセン。。。
まーあまりに料理がハイテンションでそれにつられたと申し上げておきましょう。うちも、大神も、そしてここ、トトさんも(オステリア)と謳っております。共通点は何か?店主が酒飲みで、酒飲みがハッピーになれる料理ですね。
前日、ガミちゃんとこで、1人でワイン2本、本日トトさんで3人で5本と食後酒を飲み続ける僕。飲まし続ける店たち。そしてドンドンあおるイタリア人。
VIVA! OSTERIA!!!
さて、本田シェフのお料理ですが、聞きしに勝る剛腕でした。初めてお会いしたのはシェフが当店にお越し下さった時で、その時は本田シェフの澄んだ眼となんか金色のオーラにすごく惹かれた印象が強かったんです。
そして実際料理をする男の顔は、やはりリアルです。野生動物の様な傭兵のような、戦う男の姿がありました。
そして、すごいのは戦う男の力強さの中に、なぜ戦うのかというデリケートな部分と、何と戦っているのかという明確なテーマが全品に表現されていて、シチリアを強く感じ、そして本田シェフという造り手も強く感じました。
ここでいう(戦い)とは決して暴力的な物ではありません。例えるなら、誰かにさせられている仕事か、産みの苦しみを超えた仕事かの違いです。
同世代で、同じイタリア料理で同じ様に、地方料理に力を入れ、地元愛が強い、共感できる部分が沢山のトトさん。サイコーの料理でした!まさにこんなん食べれたら良いなーと思ってました。
毎日ゼロからはじめ何十皿という料理をつくり、深夜まで片づけをし、またゼロから始める毎日。
心からこの仕事が好きな僕ですが、時折心が折れそうになります。でもこんな素敵な出会いが、又僕を強くし、よーし、負けてられへん!!!とがんばる活力になります。
たった1泊2日の旅行でしたが、ものすごく中身のある最高の旅行でした。ありがとうございました。
店創り
久しぶりの更新です。この夏にディナー、ランチともメニューのシステムを変更しました。
システムを変更しただけで、根本的な料理や店のコンセプトが変わった訳ではありません。
始めたばかりなので、今後どう受け入れられていくか見極めなければなりませんが、今のところお客様の反応は良さそうです。
今日は、こういった些細な(?)リニューアルや、小さな装飾、設備投資など、お店を開けてからもずーと続く店創りの話を。
まず、僕は料理以外で人並みの事は全くできません。もし、病気や怪我でこの仕事ができなくなると思うと不安で夜も眠れません。
そこで、司法試験を将来受けようと勉強を試みますが、今度は朝までグッスリ寝てしまっています。
ですので、この仕事ができなくなったら、画家か詩人になると思います。もしくはプライベートフィッシャーマン。日本語でいうと釣り人ですね。完全に職業でないですが。。。
まー第二の開高建を目指します。後は奥さんの甲斐性次第です。
現時点では僕の甲斐性が試されている訳で、それはそれで死ぬ気でがんばっております。
ここで最初のポイントは、何に対して死ぬ気でがんばるか?これが店創りのお話の本質になります。
まず、お店は生き物です。実の子のようでもあり、盆栽のようでもあり、グリノッぺの様でもあります。
共通しているのは、構ってあげる(手入れをする)必要があることです。分かりやすい所では掃除ですね。
掃除をしないと、店が生き物どころが店中生き物になるかも知れません。
哲学的には、掃除とは希釈だと定義されています。つまりなんぼ掃除しても家が無菌状態になる訳ではないので、どこまで希釈するか(汚れ等を)だと。
釈迦のありがたいお言葉みたいです。
レストランなので当然、清潔さはものすごく大事ですし、それこそ除菌、殺菌もしまくります。
でも、掃除を一歩踏み込んで~磨く~の域に達すると掃除を終えた時、店がニコっとします。
一般的な掃除は店創りでなく、店がニコッとしたらそれは店創りなんじゃないかと。
意外にも僕は掃除が得意です。ですので僕が掃除をすると店はニコッとします。むしろニコッとしてくれるまで掃除を止めません。
やっぱり時間がかかります。そうすると、仕込み、仕入れ、営業中の仕事とすべての仕事が押してきます。
そこで雇用が発生します。ここで、僕の代わりに掃除をしてくれる人が僕と同程度の掃除をしてくれるまで根気よく指導する。
これも店創りです。
今、掃除でたとえ話をしましたがどんな些細な事でもこれで絶対大丈夫!ということはありません。
もうひとつ例をあげてみると、おしぼり。この世にはおしぼり屋さんという便利なサービスがあります。しかしおしぼり屋さんのおしぼりは少し特殊な洗剤の匂いがする時があります。
以前使っていた時期もありますが、今は自分のところで洗濯し、やさしい良い香りがほんのりする、暖かいおしぼりを用意しています。でも今年の夏の様に強烈に暑い夏は冷たいおしぼりの方が喜ばれるかなーとか、
いっそのこと暑いおしぼり先ず出して、それから冷たいの持っていったらもっと喜ばれるんじゃないかとか考えるときりがありません。
今回のメニューのシステムの変更は、お客様によってはそんなに大きな変化を感じないかもしれません。
それはそれで一つの成功の証かもしれませんし、効果が無いのかもしれません。でも最終的にはいろいろ考えて試してみるしか成長の道はありません。やりながら修正する。少しずつ立ち止りながらでもより前へ。
この仕事が長くなればなるほど地道に行かなしゃーないなーと思います。
装飾とか設備投資みたいなハレの部分は、店創りの中の息抜き、自分へのご褒美ですね。
第二部に続く