芦屋のイタリア料理とイタリアワインのお店

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COLUMNコラム

地方料理と伝統料理 そして 創作料理と現代料理

 今回は難しいテーマです。そしてアホみたいに長いです。
 
僕はイタリア料理が大好きです。
ここで言うイタリア料理は、バブル期に一気に人気者になったイタメシでもなければ、おしゃれなイタリアンでもありません。
 
イタリアでイタリア人が、心と体の糧とするソウルフードを指します。
そして、そのソウルフードは地理的、気候的要因、歴史的背景等により地方地方でかなり異なり、それゆえ地方料理と呼ばれます。
 
今日はその地方料理と伝統料理、そして創作料理と現代料理の話を。
 
これは、イタリア料理に携わる人間にとって避けては通れないテーマであり、イタリア料理のアイデンティティ― そのものです。
 
 
イタリア料理とは?実は非常に定義が難しい料理です。
イタリア共和国内で独自に発達した地方料理の集合体。
無理やり定義するとこんな感じでしょうか?
イタリア料理とは、実在する料理で無く、便宜上使われる表現、位の捉え方の方が的を得ているかもしれません。
こんなに歴史の古い国ですが、今のイタリアの領地で落ち着いてまだ150年ほどです。ナポリとミラノは200年前は違う国だったんですよ。
 
まー、これは政治的な国境で、すでに文化的な交流はあったと思いますが、それも上流階級の話ですね。
では、一般的な庶民のイタリア人がイタリア料理を意識したのはいつか?
それは、ムッソリーニ政権時代、兵役でイタリア中から集まる若者が、軍隊の食事で経験したのが始まりではないかという説が、説得力あります。
それまでマンマの料理しか食べてない若者が、駐屯地で他の地方出身者が作った他の地方の食材の料理。
日本だったら、米、その時代だったら芋粥とかなんですかね、とみそ汁。
これくらいの共通点はあるでしょう。
今までポレンタしか食べた事無い人が、パスタを食べる。
その逆しかり。
すごいです。
この保守さ加減。
 
 
では、日本料理の定義は簡単か?というと多分難しいと思います。
カレー、ハンバーグ、唐揚げ、焼そば、いずれもかなり生活に密着した日常食ですが、和食でしょうか?
最近新聞で読みましたが、日本料理を無形文化財だったかな?に申請する動きが出て来ているらしく、同じようにカレーや、ラーメン等と一線を画する定義付けを始めたそうです。
 
 これは、実は結構画期的な事でしょう。
食とは生命維持のため、その先にある味覚の楽しみ、20世紀はここまででした。
21世紀は、色んな国で料理を学術的にとらえ始めています。
 
20世紀以前、すでに料理を学術的に扱っていた国が2つあります。
フランスと中国です。
フランスは中世から、料理を外交手段として使っていました。
アントナンカレームって映画にもなっていますが宮廷の晩餐を料理はもちろん、贅の限りを尽くして色んなアトラクションを入れながら演出する職業がありました。
確か、レオナルドダヴィンチもそんな企画を手掛けた事があるような事を読んだ事があります。
 
宮廷料理として発展したフランス料理は、理論的に物凄く発達しています。
すでに厨房設計の理論なんかもあったみたいですから大したもんです。
 
同じく中国も宮廷料理が発達しています。
絶対的な権力者が存在すると食文化は発達するようです。
 
フランスと中国の違いは、外にアピールしてきたかと、基本的に自国と自国民の為の料理かの違いでしょうか。
 
今日に至っては、世界中で食が発展しています。
現在の絶対的支配者、それは資本主義です。
 
中国が、今の好景気に沸く前、15年くらい前ですかね、あるすごく有名な日本人の中華のシェフに聞いた話なんですが、中国に色々食べに行っても最終的には香港が1番美味しいと。
香港のコックは、がんばったら給料が上がる事を知ってるので向上心が全然違うとおっしゃっていました。
そして、1番外国人に料理を作る機会が多い地域でもあったでしょう。
 
その頃ですかね、ヌーベルシノワという言葉も聞くようになりました。
 
僕の勝手な定義ですが、ヌーベルキュイジーヌ、ヌオーヴァクチーナ、ヌーベルシノワ。
これらは、資本主義の産物です。
第二次大戦後、世界的に民主化、資本主義が発展し、市民の中でも成功者、裕福層が増えた事により飲食店の階級も細かく分かれたはずです。
客層が広がった、つまりビジネスチャンスが増えた訳です。
 
ヌーベルキュイジーヌのモードはフランスで始まり、フレッシュな食材を生かすため加熱時間の短縮や、油脂分、塩分を減らした軽い仕上がりを意識した料理を作る動きの事です。
健康に留意する、肉体労働から知的労働に変わる、交通、流通の発達。これらも資本主義の恩恵でしょう。
 
裕福層がどんどん増える事によって、レストラン側は、より多岐にわたるニーズに応える必要が出てきました。
そして資本主義の醍醐味は、ニーズに応える事ではありません。
ニーズを作りだした人が成功者になるのです。
 
そこから料理に創作性を盛り込むという理念が生まれました。
ここでしか食べられない、自分しか作れないという独自性、専売性を強く意識し出します。
 
その動きは盛り付けにも大きく影響しました。
それまでソースはたっぷりと肉や魚の上からかけるのが常識でしたが、先ずソースを皿に流し、その上に主材料を置くという手法が生まれます。
こうする事によって、ソースに頼りすぎず素材自体の味を楽しめるからです。
 
そして、西洋料理の盛り付けに高さが出ました。
立体的になってきたと申しますか。
これは日本料理の影響が少なからずあります。
日本の調理師学校やホテルに召喚され、来日するシェフが増えました。
そしてヨーロッパで活躍する日本人シェフも増えました。
資本主義によって発達したものは、その後必ずグローバル化して行きます。
 
 そして、フュージョン料理というジャンルが生まれました。
ごく自然な成り行きで発生しましたが、少しリスクのあるジャンルです。
フュージョン料理店と謳っている店は、まだそんなに多くありませんが、しっかりと料理の1ジャンルとして確立しています。
そして、元々、どこどこの国の料理という国境がなく、世界中の料理の魅力を取りこんでいますので、仮に、5人、10人集まって食事に伺ってもきっと好みの料理が見つかると思います。
 
そして、アイディアも自由で、ワクワクする盛り付けも魅力です。
カリフォルニアロールを例に挙げても分かるように、寿司を食べ慣れていない欧米人でも抵抗なく食べてもらえる工夫が満載です。
 
この様にフュージョン料理自体は、時代を捉えた魅力的なジャンルです。
何が危険かというと、フュージョンと謳っていない料理店(イタリア、フランス、中華、和食が顕著ですかね)がフュージョン化して行く事です。
 
フュージョン料理には、元々国境の観念がありません。
しかし、世界中のフレーバーが盛り込まれています。
逆に言えば、フュージョン料理にある国のフレーバーを強調すると、その国のモダンな料理に見えてきます。
 
先ほどの例ででましたカリフォルニアロール。
巻きずしの形を取らず、でも食材の組み合わせや味はそのままで、盛り付けをちょっと変えてトマトでも添えれば、イタリア料理店で出てくると、まあ、なんとなくイタリア料理として食べる事になります。
しかし、これはあくまでフュージョンであって、イタリア料理でのアレンジではありません。
替え歌みたいな感じですね。
フュージョンをイタリア料理化する。危ないのはこの線です。
 
 
日本には世界各国の料理店があります。
その中でイタリア料理だけが、イタリアから直接入らずアメリカから日本に入りました。
ピザとスパゲッティです。
パスタという言葉を知る前に、僕たちが子供のころからある、スパゲッティとピザ。
 
今、40歳以上の方で、小学校の頃からキッシュ食べてる方いらっしゃいます?
インスタントのポトフもなければ、冷凍のコック オー ヴァンも無いですね。
 
スぺゲッティとピザは、何十年も前からインスタントも冷凍もあります。
でも、イタリア料理ではなかった。
スパゲッティ、ピザの横にホットドックを置いていても違和感の無い、アメリカの食べ物だったんです。
 
何十年も前からちゃんとしたイタリア料理店も少ないながらありました。
多くは、イタリア人かイタリア系の二世のお店です。
外国の料理は、その国の方が営んでるのが1番自然ですね。
 
で、その頃、西洋料理と言えばフランス料理でした。
イタリア料理は一昔前、エスニック料理の括りでした。
 
日本の高度成長に伴い、先ほどの話とリンクしますが、ファッション、車等の流行りも手伝い、イタリア料理もクローズアップされます。
クローズアップされてから、イタリアに修行に行く方も増え、イタリアの情報も沢山入るようになりましたが、今度はフランス料理の呪縛に悩まされます。
 
 
イタリア料理のニーズがドッと増えた時の、1番の上客は一通りフレンチを食べてきた方です。
先ず、外食に対してお金を払う事にポジティヴです。
そして、食に対する好奇心も旺盛です。
 
しかし弊害もありました。
基本的にフレンチがお好きなんです。
そしてパスタも好き。
僕が見習いだったころのブイブイ言わしてたお客さんは、このタイプの方が圧倒的に多かった。
前菜とメイン、特にメインがシンプルすぎるとダメなんですね。価値が見出せないとおっしゃっていました。
で、パスタはロングパスタ。
変な話、前菜はカルパッチョか、魚介、もしくはフォアグラをちゃっとソテーしてバルサミコ味。
気の効いた?食材の組み合わせのスパゲッティ、フレンチ的なメイン料理に仕上げにオリーヴオイル。
デザートはティラミスとパンナコッタ。
90年代の主流はこれでした。
 
 
そんな中、日本でイタリアの地方料理というテーマで勝負されて初めに大成功を収めたのは、東京のアクアパッツァの日高シェフでしょう。
確実にフレンチと一線を画してなお、レストラン料理としての完成度を持ち合わせた料理は、僕のイタリアに修行に行きたいという気持ちにますます火を付けました。
その後、六本木にラ ゴーラというレストランが出来ました。
ラ ゴーラの澤口シェフの料理が、料理の専門誌に登場するようになり、完全にノックアウト。
やられた!
先を越された!
カッコよすぎる!
これこれ!まさにイタリアの原風景の様な料理。
もしくは歴史的建造物が風景に溶け込んだような料理。
薄く切ったアスパラを並べてみたり、長いアサツキ乗っけてデコレーションしてる皿が稚拙に見えました。
 
エルポニエンテの小西シェフの料理もそうでした。
装飾が無い。
むしろ装飾の余地が無い完成度と申しますか。。。日本の器、陶器に似てますかね。
プリミティヴな美しさ。
高級ブランドの服を着た、メタボなおっさんと、鍛え抜かれたボディーにTシャツとの違い。(作ってる人の話でなく料理の例えです)
僕は、メタボでTシャツですが、料理は鍛えられたボディーにTシャツでありたい。(そんな料理を目指して自分を鍛えると、メタボになります。僕は鍛え抜かれたメタボです。)
 
 
話を本題に戻しましょう。
イタリア料理を大胆にもカテゴライズすると、この6つに分かれます。
 
①伝統的な地方料理
 
②地方料理
 
③時代のニーズに沿った新しい地方料理
 
④アレンジ???
 
⑤創作料理
 
⑥現代的な料理(コンテンポラリー)
 
今回のタイトルで、地方料理と伝統料理を分けたように、必ずしも地方料理=昔の料理という事では無くなっています。
地方色、地方性があるか否か、それは必然性という言葉に置き換える事が出来ます。
 
④,⑤,⑥の料理は、必然性の代わりに閃きと理論の料理です。
 
⑥に至っては、まだあまり日本では、イタリア料理のジャンルでは見かけませんが、スペイン、フランス料理では、かなり認知されているグループです。
むしろ、現地でもレストランガイドのトップは、⑤と⑥で過半数、続いて③、②、①の順ですかね。
 
イタリアでは、①、②のカテゴリーばかりのレストランガイドもあり、僕ももっぱらそっちを愛読しています。
 
 
必然性がある料理とは?少し説明しますと、A+B=C という事なんです。
最強の方程式です。
ある食材を、美味しく食べる最もベストな、最短距離の料理です。
いくつか例をあげましょう。
 
僕は、魚のアクアパッツァをあまり店で作りません。
何故か?
瀬戸内の白身でアクアパッツァ(言い換えると水分調理)に向いている魚が、あまり無いからです。
水分に浸かった状態で火を入れて、美味しい魚が少ないんです。
 
メバルと石鯛、冬の旬では無い時期のスズキのしっぽに近い部分、あと瀬戸内にはいませんがキンメ、これくらいですかね。
納得できるアクアパッツァが出来るのは。。。
メバルや石鯛なんかは、煮汁と上手く馴染ませる事ができるのですが、例えば真鯛なんかは焼くと素晴らしいですが、水分調理は難しいです。
身が、緻密で上質すぎて煮汁をはじきます。
 
イタリアの魚はというと、加熱をすると適度に、身に隙間ができます。目には見えませんが、簡単に言うと硬くならない、煮汁とのなじみもいいんです。
 
そして、アクアパッツァは出来るだけ丸一匹で調理したい。
アクアパッツァは本来、ニンニクとパセリ、ほんの少しのトマトと水とオリーヴオイル、塩のみで作ります。
貝やオリーブ等は、いれません。
となると、必然的に丸一匹の調理が前提になってくるのですが、今日のお客様のニーズは、少量多皿な方が多いんです。
となると、なかなか作るチャンスが無い訳です。
何故丸一匹にこだわるかと言えば、メバルならメバルのむせかえる程の香りを引き出す事が出来ますし、石鯛なら石鯛、キンメならキンメの味しかしない、非常にクリアで綺麗な味の料理になるからです。
だから、ブイヨンでなく水を使います。
 
一人前の切り身のポーションで作るとすれば、やはり貝やオリーヴ等で旨味を足す必要が出てきます。
本来の姿を尊重しながら時代のニーズに合う工夫をした、新しい地方料理と呼べると思います。
 
先出の日高シェフのお店はまさにアクアパッツァという店名で、お魚のアクアパッツァがスぺシャリテです。
日高シェフのアクアパッツァの作り方は、先ず魚をソテーしてから煮込むそうなんですが、これも本来のアクアパッツァとは違います。
でも、実は素晴らしい工夫なのです。
最初に魚をソテ―する事によって、ある意味魚の身にダメージを与え、魚の身に(隙間)を作ってらっしゃるのだと思います。
これも見事な新しい地方料理でしょう。
ポイントは、着地点が分かっていて、そこにたどり着くために必要な、必然的な工夫です。
C'=A'+B' という感じです。
 
 
長くなったついでにもう一つ例えを。
この例えは、地方料理をしていて一番ブルッと来るケースです。
 
ナポリ料理で CARCIOFI E PATATE SOFFRITTI  (アーティチョークとジャガイモの炒め煮)という料理があります。
この古いレシピには注釈があって、(シーズンが終わりに近づくアーティチョークとシーズンが始まる新じゃがの素晴らしい出会い)と書いてあります。
 
今までも、アーティチョークとジャガイモの組み合わせは何度も作ってきましたが、今年初めてシーズン終わりかけのアーティチョークと、シルヴィオが送ってきた新じゃがでこの料理を作った所、今までのは何だったんだ!と衝撃を受けました。
そして注釈の意味を、完全に理解しました。
 
シーズン真っ盛りのアーティチョークは、ポコポコ沢山出てきますので、アーティチョーク単体で贅沢に楽しみます。
で、シーズン後半になってくると収穫量も減ってきます。
そうすると、ちょっと底上げしましょかとなり、出始めの新じゃがを加えるんですね。
よーできてます。
 
しかし、ヒネのジャガイモと新じゃがでこんなに差が出るのかというくらい美味しいんです。
どちらも土臭い香りの野菜なのに、さわやかさを感じるくらいフレッシュで素晴らしかった。
 
そしてシルヴィオの野菜を使うようになってから、あまり味見をしなくなりました。
僕の一番自然な感覚で、大体味が一発で決まります。
 
昔ながらの伝統的な地方料理というのは、全ての条件が揃うと、鍛え抜かれたボディーにTシャツ的な完成度があるんだと、思い知らされました。
 
しかし、この条件は、イタリアでもあまり揃わなくなってきています。
世の中が便利になりすぎたのと、手間がかかるので、イタリアで①のカテゴリーのレストランで素晴らしく美味しい所は滅多に出会えません。
もし出合ったら、その旅行で一番の思い出になると思います。
 
 
 
①の伝統的な地方料理と②の地方料理の線引きは、時代が変わっても、ほぼ、アレンジ、微調節の必要が無い料理。
むしろ変えてはいけない料理です。
 
②の地方料理は、時代のニーズに合わせ、嗜好や年齢等も考慮して、微調節の猶予がある、ベースとなる料理。
③が、その微調節をしつつ、地方性が色濃く残った料理と言えますでしょうか。
 
⑥は、一目で分かります。泡あわだったり、煙が出てたりと、明らかに今までの料理とは一線を画します。
一度、思いっきり奇抜さ、目新しさの方向に針が振り切った様な気もしますが、最近ではそのテクニックを用い、伝統料理を更に昇華させるための、味覚に訴える料理のための方法のひとつとして確立して行く動きもあります。
 
大阪のエルポニエンテ オラさんは、まさに美味しさが伴った、むしろ美味しさのための最新テクニックという感Jで素晴らしく美味しかった。
日本のイタリアンは⑥は少ないですね。
 
⑤の創作料理は、多くの店がこのカテゴリーに入るようですが、実はごく一部です。
創作料理。
今までにない新しい料理。
これは本当の天才だけが出来ます。
全く新しい料理というのは早々生まれません。
 
 
僕の修業先のTORRE DEL SARACINO のジェンナーロシェフは真のクレアティーヴォ(クリエーター)です。
彼のスぺシャリテの一つ、甲殻類と磯部の小魚とグラニャ―ノ産ミックスパスタの煮込みなんかは、見た目はやや地味な古典料理の様ですが、今までにない新しい料理です。
新しい料理なのに、古典料理の様な風格。
この先50年、100年後のナポリ料理の本に載るだろう料理です。
他の州の人が見ると、これはナポリの料理でしょうとすぐ分かるキャラクター、さりげなく、無理が無くでも斬新。
今でもはっきりと思い出せるあの味。
マンマの味の様な、でも情熱と野心をもった男のエロスも感じる本当に素晴らしい料理。
100年後には、ナポリの伝統料理になってますよ。
 
僕はナポリ料理を作っていますが、彼はナポリ料理を創りました。
これが、僕が思う真の創作料理です。
そして、それは(もう食べた事がある)とか、そういった話題で終わりません。
又あれが食べたい!
あれを食べにあそこに行こう!
と、リピート出来る料理です。
 
今の世の中、毎回来店ごとにメニューが変わっているのがよし!みたいな所がありますが、あれが食べたい!という欲求は、まだ食べた事の無い新しい料理が食べたいという欲求に勝るのが自然なのでは???
とも思います。
 
僕は、イタリアの地方料理に夢中です。
そしてナポリ料理を生業にしています。
でもいつかは僕もナポリ料理を創りたいと思います。
 
今回はやたらと長くなりましたが、最後まで読んで下さり有難うございました。
 
 

野菜が熱い!

 以前のコラムでも書きましたが、ジラソーレでは素晴らしい生産者から仕入れをしています。
 
オープン当初は全部~業者~でした。今は、~生産者~からの仕入れが殆どです。そんなに沢山の選択肢も無い中から、取りあえずって感じで使い始めた食材の数々。
ほとんどは、1,2回使ってみて止めました。オープンから数年間、まず安心して使いだしたのは、ヨーロッパ産の肉類、チーズ、肉加工品。
まー、あまり裏切られることは無かったです。でも、鮮度の面では常にちょっと不満でした。
 
古い訳じゃないですよ。むしろ食べごろピークが殆ど。店に来てから日持ちが全くしなかったんです。
移転前の小さな店では本当に苦労しました。
 
同時期、今も使っている極み豚に出合いました。これもオープンから今もずっと続いています。
20代前半、生意気にも将来豚が流行ると確信し、養豚場にも少しお世話になった事があります。
 その後、豚肉は大流行。数々のブランド豚が誕生しました。結構色々試しましたが、僕は極み豚が1番。
決め手は、ローズマリーの香りと最も合う事。後、赤身の質を高め、熟成させてから出荷させる事。
イベリコは確かに美味しかった。でも美味しすぎて豚じゃないみたい。もちろんウチがスペイン料理店なら確実に使ってましたが。
 
後、淡路の魚。正直ちょっとお値段張ります。淡路産の魚が高い訳でなく、この魚屋さんが特別なんです。
活け越し、〆の技術、素晴らしいと思います。
この前、兵庫県の日本海側の食材も開拓しようと、日本海側の漁師さんから直で魚を少し取りました。瀬戸内は、ちょっと深刻に海老が少ないんです。
んー、兵庫県縦断は、魚介類には遠いのかなー。今度、現地に行ってみようと思っています。
 
 そして、野菜はというと、最後のテーマでした。料理の専門誌に時々載せて頂くことがあり、そうすると、日本中から色んな生産者の方達から連絡を頂くようになりました。
特に野菜はこれっと言った物に出合っていなく、以前はイタリア産を使う事が多かったです。
産直の農家の方と色々お話をしましたが、実際僕が欲しい野菜を作っている所が意外と少ないんです。
 
僕は、変わった色の野菜とか、生で食べれるなんチャラとかに惹かれないんです。アスパラならアスパラ、ズッキーニならズッキーニの個性が明確なのが欲しい。
西洋野菜に関しては、良い出会いがなかなか無かったんです。あと、欲しいものだけ買える所も意外に少なかったかなー。
 遠方から送って頂くので、送料が掛ります。となると大きい箱に、命一杯詰めてもらうとお得なんですが、どうしても大根系が混ざってくる。
大根が嫌いな訳ではありません。むしろ美味しい素晴らしい大根を色んな所から送って頂きましたが、やはり大根以前にもっと極めたい、勉強したい野菜が沢山あるので続かないんです。
 
農家で、まず惚れたのが広島の中台さんの完全無農薬レモン。1回注文すると15キロ。防腐剤の掛って無いレモンって腐るんですよ。当り前ですけど。
昔、まだ見習いだったころレモンが腐ったの見た事無かった気がします。
 
この使っても使っても減らない感。イタリアを感じます。当然、自家製リモンチェッロ、自家製レモンジャム等作るようになります。
今では、リモンチェッロ、レモンジャムの為に買っていると言っても過言ではありません。
 
 次の愛すべき農夫は、明石のチーロのおじさん、おばさん。兵庫県の三木で畑をやってらっしゃるんですが、チーロの小谷さんがイタリアから色々持ち帰ってこれ植えて、あれ作ってとしてるのを分けて頂いています。
 
そして、九州のシルヴィオ。フリアリエッリ、ブロッコリー ディ ナターレ、スカローラ。ナポリ料理の1番のエッセンスは、魚介でも、肉でも無くもしかしたら野菜かもしれないと思う今日この頃です。
去年の冬は、シルヴィオのナポリ青菜で本当に楽しめました。
 
そして同じ冬、兵庫県の尼崎の島中さんからも、野菜を頂くようになりました。真冬に、信じられない美味しいトマトを作ります。生食では最高峰ですね。
真夏にあのトマトがあれば尚良いのですが、冬だからこそ、情熱と技術で作れるそうで、夏の湿度が一層恨めしくなります。
春の、アスパラ、カルチョ―フィもよかった!
 
三木の畑も、シルヴィオのとこも、島中さんとこも一斉に植え替え時期に入り、春から夏の準備中、がくっと野菜が減りましたが、まずは南のシルヴィオのとこから次々と収穫の報告が入ってきました。
いくつかご紹介しましょう。
 
 
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こちらバジリコ ナポレターノです。ナポリ種です。ちょっと葉っぱが縮れてますね。素晴らしく甘くさわやかな香りです。
この様に大きな葉っぱで、でも葉は薄く、色も普通のバジリコより少し薄いのが美味しいです。
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こちらバジリコジェノヴェーゼ。いわゆる、一般的なバジリコです。が、こちらのはホントにイタリアの種。
こっちのバジリコはペストにします。
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これはパキーノプリエーセと言う品種のプチトマト。写真では分かりにくいですが非常に皮がしっかりしてます。
で、日本のプチトマトはちょっと赤黒いですがこれは朱色。生でも食べれない事は無いですが基本加熱用です。
 
意外かもしれませんが、イタリアはあまりトマトを生で食べません。食べますけど、生と火を入れる割合が丁度日本の反対位です。
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昔、アメリカ大陸からトマトが伝わった時トマトは黄色かったってご存知ですか?奇をてらった物で無く、真面目な作物です。

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ナポリで働いた事がある人は、スゲーって思うじゃないでしょうか?写真で見ても、皮のしっかり具合、実の充実感が伝わってきます。
これは、火を入れて使います。加熱しても全然崩れてきません。
 
イタリアから輸入してきたような完成度。
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チリエージェ ヴェスヴィアーニ。ナポリでポモドリーニ(プチトマト)と言うとこれ。
ナポリ料理は全部トマトベースと思っている方がいますが違います。
外人が、和食は全部醤油味と思っているのと同じです。
しかし、醤油とトマトの使い方は似ています。
和食も醤油をよく使いますが、全部醤油味じゃないですね。ほんの少し、ほんの数滴といった使い方も多いと思います。
トマトも同じです。
アサリのスパゲッティ、1人前につきプチトマト2個。見た目はトマト入っていません。でも全然違います。入れるか入れないか。
逆に、日本でも有名なヴォンゴレロッソ。ナポリではほとんで見かけません。僕にはアサリとトマトが殺し合ってるようにしか思えません。
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超有名なサンマルツァーノ。ミニですが完全に反則。今回の仕入れ分全部杉原家で食べてしまいました。従業員にも内緒です。

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こちらレギュラーサイズのサンマルツァーノ。尼崎の島中さん作。しかも冬の2月に使っていました。
夏のサンマルツァーノは、完全にバカンスの味。美味しくて、甘美で、もうどうでもよくなる。
えーい、太ってやる―て感じ。
夏のビーチで仕事を何日もしてない、優雅さと不安の入り混ざった、でも人の幸せってこれこれって感じ。
 
冬のサンマルツァーノは、日射量が無い分熟すのに物凄く時間が掛ります。結局熟れますが、太陽で熟れたのではなく、大地のミネラルを吸い倒したような繊細な力強さ。ムキムキでなく、筑紫が地面から割って出てくるような神秘的な強さ。
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ズッキーニシリーズ。シルヴィオ一押しのサンパスクアーレ。これが素晴らしい。ズッキーニだけど別次元。アーティチョーク並みの個性があります。
もう添え物ではありません。主役です。
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サンパスクアーレのアップ。立体的な筋が見えますか?この写真の中で1番堅そうに見えますが、実は1番柔らかいんです。

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プリエーゼという種類。スカベ―チェとか詰め物に。

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ロマネスク種。見た目はサンパスクアーレより更にごつごつしてますが、味はプリエーセに近いです。

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普通のタイプ。でも、日本のスーパーで見るより色が薄いでしょ?あの濃い―緑はダメです。苦すぎる。

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丸ズッキーニ。ナポリでは見た事無かった。でもすっごい美味しいです。1番はグリル。

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三度豆。これまたスゲー!!!完全に日本市場を無視したインゲン!日本のスーパーのインゲンがブロイラーとすると完全にジビエやな。筋取るのがメンドクサイけど、(日本の三度豆って筋無いですよね)これも主役。
付け合わせじゃないですね。
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スカローラリッチャ。これまた愛してやまない野菜です。ほろ苦系。

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チコリアセルヴァティカ。苦み系野菜の王様。ホントに苦いです。
でもちゃんと料理すると、他に代役が効かない超個性派俳優に。
苦みフェチなんですが、意外とゴーヤにはあまり惹かれません。
 
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花田さんのイモ、シルヴィオのチコリアセルヴァティカ、最後サーヴィスでちょっとだけくれたグリンピースと下の写真の小ぶりなスルメイカの蒸し煮です。
ここにはゲソとワタだけ。あとでちゃっとソテーしたイカちゃんを上に載せます。
totani e patete all'amalfitana のチコリア入り。アーティチョークヴァージョンも旨い!
 
この料理の主役はジャガイモです。全ての旨味を吸いつくし、適度なとろみをつけてくれ、その上、大地の香りを放つすごいやつ。
で、このジャガイモのすごい所は、(さすがマエストロ花田)ジャガイモとして素晴らしく美味しい事。
 
なんじゃそら!と思うかもしれませんが必要以上に甘かったり、いらん味のするジャガイモって多いんですよ。
または、味もへったくれもないのとか。
 
これは、茹でたら茹でた美味しいイモの味。揚げたら揚げた美味しいイモの味がする。他の食材とも非常によく調和するし、
でもきちっとイモの存在感を放つ理想のイモ。男爵どころか、将軍か皇帝の位を上げましょう。
 
 
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スルメイカ。イワシとかスルメイカみたいなちょっとチープなイメージの食材に命を吹き込むのが大好きです。
イワシはイワシしか持ってない良さがあります。アコウやハモ、トラ河豚もいいですが僕にとっては横並び。
値段は世の中が決めた事。これぞイタリア料理って味ですよ、このイカ料理。
 

第3回収穫祭 子羊祭り

 春です。3月生まれの僕は、春が大好きです。以前は花粉症に悩まされていましたが、イタリアに数年住んで体質が変わったのか、花粉症も出ません。
躊躇なく春を満喫しております。
 
イタリアにももちろん四季はありますが、日本の四季はホントはっきりしています。はっきりしているし、次の季節に移るまでの過程、グラデーションがコマ送りの様に印象的です。
 
昔の人が作った暦はよく出来てるなーと、つくづく思います。
 
春は、僕の好きな食材であふれています。白身魚の種類が増えますし、アブラメなんかの根魚が素晴らしいですね。イカナゴ、飯タコ、貝類、そして、青魚も。
早春の苦い青菜で、冬の動物性の旨味になれた味覚をリセットし、アーティチョーク、そら豆、グリンピース、アスパラ、新じゃが、今のメニューを彩ってくれている春野菜。
春野菜と僕は心中してもいいくらい大好きです。
 
そして肉類では、子羊。春と言えば子羊です。イタリアにも、魚の旬はあります。日本の魚の旬は2回ある物が多く、脂がのったり、身が充実している味の旬と、非常に漁獲高が上がる時期です。
有名な桜鯛。桜が咲くころ、真鯛は水深の浅い所に産卵のため移動してきます。これをのっ込みと言いますが、非常に鯛の漁獲量が増え旬と言われています。
秋に、紅葉鯛と言われ冬になると水深の深い所に移動するのですが、その前に食いだめします。当然僕の様に脂がのります。秋の紅葉鯛は、味覚的な旬ですね。
カツオの初カツオと戻りカツオもそうです。
 
イタリアではよほどの漁港町で無い限り、こんなに魚の旬に執着は無いです。しかし、春の子羊は別格です。まー、宗教的な意味合いも強いですけど、春と言えば子羊、アーティチョーク、卵です。
 
クリスマスの次くらいに大切な、復活祭(パスクア)の象徴、卵(復活のシンボル)は、宗教的な意味合いですが、子羊は繁殖期で乳のみの小さな子羊が食べれます。
ヤギ、子羊の本当に小ぶりな物をイタリアで食べた時、神を信じました。あー、こんなにうまいから太古から神の生贄にされていたのねー!
神様ってグルメ。
 
この経験のあと、日本で血眼になって小さな子羊を探し続けましたが、なかなか出会わず、実際最初の数年はスポットで入るオーストラリアの乳飲み子羊を使うぐらいで、あまり普通に流通している子羊を使う気になりませんでした。
 
今使っている子羊、ヨーロッパ産のかなり小さな子羊です。これに出合って、いまディナーメニューのページに長々と書いている、僕がしたかった南イタリアの表現がかなり実現しました。
 
お苦手な方も時々いらっしゃいますが、すでに数名のお客様の羊嫌いを直しました。
一度試される価値ありと思います。
 
前書きが長くなりましたが、数年前に知り合った北海道で子羊を育てている今井さん。こちらから、特別に子羊の頭や内臓を一式送って頂いています。
一度今井さんを訪ねて北海道に行ってみたいものです。非常にエネルギッシュで魅力的な方です。
 
肝心の今回の子羊祭りのメニューです。
 
前菜で
北海道サフオーク種子羊の内臓の串焼きの盛り合わせ(ハツ、レバー、タン、トリッパ、ミノ)目玉焼きとそら豆のピュレ添え
 
メインで
北海道サフォーク種子羊の頭のロースト(ほほ肉、タン、チェルヴェッロが食べるとこです)
ヨーロッパ産乳飲み子羊のスコッタディート(炭火焼)
ヨーロッパ産乳飲み子羊のオーヴン焼 羊飼い風
ヨーロッパ産乳飲み子羊の卵包み焼 グリーンペッパーソース
 
よかったら1品試してみて下さい。
 

自家製シリーズ パート2 魚介加工品編

 自家製シリーズ第二弾、今日ご紹介するのは魚介の加工品です。バッカラ(塩蔵干し鱈)、ボッタルガ(イタリアのカラスミ)、ロサマリーナ(シラスの唐辛子漬)です。
どれも、基本的には塩蔵です。塩の脱水作用を利用して、腐敗の原因となる自由水を飛ばし、保存性を高める訳です。
 
 ここで、僕のイタリア料理における、他の国の料理と異なるイタリア料理らしさの定義を。
 
イタリアは、狩猟民族と思われがちですが(その性質もありますが)基本的に農耕民族です。農耕民族は地味な感じですが、その逆でいち早く定住に成功し、飢餓の不安を軽減できた文化的な民族です。
 そして、南北に長いイタリアは、地域の差も多大にありますが、かなり食材に恵まれた国です。
21世紀の現在でも、ほとんど昔ながらの土地の料理が日々の食卓に登ります。
これは、都会と地方では差がありますが、それでも日本と比べれば地方地方の個性はより明確です。
 
 このテーマで書きだすと、すごく長くなりますので今日のテーマに関連のある話からします。
よく、イタリア料理はシンプルだと言います。それは、ある意味正解です。でも、単純、簡素なんではありません。
 
シンプルの例をあげると、例えば一つの料理を作るのに、あまり食材を交ぜません。かき混ぜるの混ぜるでなく、例えばズッキーニの料理ならズッキーニが主役。玉ねぎやニンニク、ハーブを入れても3-4の食材で作ります。
ラタトゥイユにせず、ズッキーニだけで先ず美味しく食べる努力をします。ズッキーニの蒸し煮、カリフラワーのサラダ、ペペロナータ。。。それぞれの食材のポテンシャルを引き出す最低限の物しか足しません。
 
しかし、何度イタリアでズッキーニってこんなに美味しかったのか!とかパプリカってこんなに美味しかったのか!と思った事でしょう!カリフラワーしかり。
 
 では、なぜこの理論が発達したのでしょう?それは、旬の物が収穫されだすとしばらくそればっかり食べることになります。
ズッキーニの時期はまず、ズッキーニをうんざりするほど食べないと仕方なかったのです。昔は。
他の食材を交ぜてると減りませんからね。
イタリア料理は、同じものを大量に食べ続ける工夫が施されている。これが僕の定義の一つです。
 
ズッキーニの蒸し煮で例を続けると、鍋に少量のニンニク、または玉ねぎをたっぷりのオリーヴオイルで炒め、香りが出たらズッキーニを加え塩をいれ蓋をする。仕上げにバジリコを手でちぎって加える。
 
ほぼ一行でレシピが書けます。でも信じられないくらい美味しく出来ます。そこには沢山の秘密があります。まず、ズッキーニはまな板を使って切らず、鍋の上でナイフで適当に切ります。当然きった野菜の大きさはバラバラです。それでいいのです。
そうすることで、かってにに崩れる物もあれば食感の残る部分もある。
そうすると沢山のズッキーニを食べても飽きません。塩を最初に入れるのもこのためです。かってに味の濃いとこ薄いとこが出来ます。
 
そんな工夫をしてそれでも食べきれない物は、保存食にします。大体、ソットサーレ(塩蔵)、ソットーリオ(オイル漬け)、ソットアチェート(酢漬け)が基本です。
 
魚介類でも同じ事です。
色んな魚介の加工品がありますが、まず一番にあげないといけないのがバッカラ(塩だら)です。
イタリア全土でよく食べます。数か月以上持ちますので、山間部でもバッカラは食べられます。
 
意外な事に、新鮮な魚がとれるだろう港町によりたくさんのバッカラ料理のレパートリーがあります。そしてバッカラは結構高価です。
実は、イタリア産のバッカラというのはありません。ノルウェー等からの輸入です。ここ最近輸入が、始まったのではありません。大昔から北の海からわざわざ運ばれているのです。
 
そして、バッカラはキリスト教の布教にも使われています。
カトリックは本来金曜日に、肉を食べません。魚をたべます。(魚を食べるのが目的では無く、肉食べたらアカンから魚を食べます)
海から近い人は良いですが、山に住んでる人は、俺ら何食ったらええねん???となった訳です。
そこで、バッカラ登場です。実際、アヴェッリーノとか、べネベントで魚食べると言えば、ほぼバッカラと言って過言ではありません。
 
こんな文化的な食材、使わない訳に行きません。でも日本にはあまりいいバッカラは輸入されていません。
 
ほな、自分で作ろうかーとなって
 
 
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冬の鱈の時期に、馬鹿でかい鱈を買います。でかくないと良いバッカラになりません。
塩蔵の場合、生ハムにしても、バッカラにしても塩によってたんぱく質は火が入った状態に近くなります。
 小ぶりだと、火が入りすぎた状態になってしまいます。
僕の一番好きな食べ方はフリット。次に生。バッカラの生は美味しいです。そしてバッカラマンティカート。
バッカラをペーストにする料理です。
 あと、茹でてサラダもいいですし、ナポリでは軽い煮込みもよくします。
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自家製のカラスミです。去年の秋に仕込みました。以前、九州からボラの卵を送ってもらっていたのですが、他の魚も買ってくれというプレッシャーに耐えきれず、しばらく作っていませんでした。
今回は家島の物が入ったので飛びつきました。兵庫県オタクばく進中です。
 
とにかくカラスミは高い!!!そして当店にご来店の皆様はお気づきだと思いますが、半端じゃない使用量です。削る時も粉にせず荒削りですから。
自家製の場合、原料の卵も高いですが、それでも削る時の気分が少し晴れやかになります。
 
値段はさて置き、自家製の良い所は、好みの塩分と熟成具合に仕上げられるとこです。写真で見てもねっとり軟かそうでしょ?
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こちらは、毎年春にイカナゴで作る、ロサマリーナ。南の赤いキャビアというニックネームがあります。
カラブリアの食べ物なんですが、カラブリアはイタリア一の唐辛子消費地区です。この写真は、イカナゴの色をしてますが、カラブリアのは真っ赤です。豆板醤にシラスが入っている感じ。
そして、長期保存が可能です。
 
ジラソーレのは、辛さも塩分ももう少し手前です。塩からに近いですかね。イカナゴは全く日持ちがしません。
このうちのロサマリーナも1週間くらいでが限度です。でも逆に生だと3日も持たないので、一種の保存食でしょう。
 
このイカナゴのロサマリーナ、はまる方続出で、毎年3月になると沢山のお問い合わせのお電話を頂きます。嬉しい限りです。
 
と、暇さえあればなんか作り続けて、売り上げの割に仕事がやたら多いジラソーレの毎日です。
パート3に続く。

FESTA DI CIGLIEGIO 桜祭り

 今年から収穫祭シリーズをしようと思い、第1回豚祭りに続き、第2回は桜祭りと名付けて開催中です。

まず、ロゼのスプマンテ。1年でロゼワイン、ロゼスプマンテが1番美味しい時期です。桜色してますしね。
不思議と、桜色したものと相性が良いです。

食材のテーマは、貝類、桜肉(馬肉)、桜鯛(鳴門の天然真鯛)です。

貝類は、ミル貝、鬼アサリ(びっくりするくらい身がぱっつんぱっつんです)、サザエ、もう終わりですが坂越の牡蠣、鮑、なんかを取りそろえています。

ミル貝はカルパッチョで麦のサラダと(ロゼスプマンテとサイコーに合います)
鬼アサリはナポリ風ソテーで
サザエ、牡蠣、鮑はウニ、カラスミ、イカと共にパスタ(パッケリ)に

馬肉はメインでご紹介すると敬遠されますが、同じ料理をポーションをおとして前菜にすると不思議な事に大人気。
アスパラとカチョカバッロチーズを巻いてグリルにし、干しソラマメのピュレを添えています。

そして、キングオブフィッシュの真鯛。今回はお好みの調理法でという事で、炭火焼、オーヴン焼、紙包み焼き、グリル、地中海風ソテー等でお出ししています。
飲まれるワインに合わせて、毎回微調節します。また、4名様以上なら半身や、丸一匹での料理は、いかがですか?塩包み焼も人数が集まればご用意できます。

あと、ミル貝のカルパッチョもご予約時(前日まで)にリクエスト頂ければ、赤貝や鮑に変更できます。

桜はピークを過ぎましたが、食材はまだまだこれからです。皆様のご来店お待ちしております。

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