芦屋のイタリア料理とイタリアワインのお店

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COLUMNコラム

秋の食材 パート2 更にジビエ

 今年は無性にジビエに熱が入っております。またマニアックな方向に走りよってと、喜んでおられる方と、ちょっと不安な方と、だいぶ不安な懐具合。
まず、いっきに4種類もジビエを取りそろえかけて学んだ事。(本州鹿、山鳩、山ウズラ、雷鳥)
ジビエ料理は儲からない。一皿の値段はけっこうしますが、なんせ手間暇かかります。
それやったらイワシとかムール貝とかジャンジャン料理してる方が、儲かるかも知れません。

これでとどまらず、この後、エゾ鹿、イノシシ、キジをしようと思っています。
では、何故こんなに今年はジビエの風が吹いているのか?

実は、意外な事に魚料理に今後より力を入れようと思っているからです。
魚料理に力を入れることは、意外じゃないかもしれませんが、それがジビエ熱の原因とは意外でしょ?

ちょっと説明しますと、年々魚がより好きになってきています。以前はメインは肉を食べないと気が済みませんでしたが、今は半々くらいです。
僕は、イタリアで、それはそれは素晴らしい魚料理専門店で働きました。
そのお店は、今でこそ1品くらい肉料理がありますが、僕が働いていたころは子牛すらありませんでした。

ですので、賄いも魚ばっかり。若かったので本当に肉が恋しかった。
で、自分で店をしたら、魚料理にはもちろん力を入れますが、肉料理も頑張ろうと肉料理も色々やってきました。

特に、子豚、子羊、ウサギは南イタリアらしい肉なので色々作ってきました。
色々作ってきた上で、それぞれの肉に対し、2,3パターンのこれ!というものが見えてきて、逆にそれ以上の大きな発展が見えにくくなってきたような気がしています。

もっともっと焼の精度、塩加減の精度を高めるという目標は有りますが、結構好みの分かれる部分でもありまして、焼に関しては最近のフレンチを食べ慣れてる方からすると焼き過ぎに思えるかもしれませんし、塩もたまにきついと思う方もいるかもしれません。
 基本的に毎日イタリア料理を味見じゃなく食事として食べ、当り前のようにワインを飲んでいると自然に突き当たる焼き加減なり、塩加減です。

料理のバリエーションとして、食材の組み合わせとか、温度なんかの工夫も入れて、魚介類の方がやはり豊富です。
魚の方が優れているという事では無いですよ。
むしろ、肉の方がそれぞれ完成しています。ソースも付け合わせも装飾もないの前提でしたら
牛肉をダーンと焼いた物と、天然真鯛を上手に焼いた物、歓声が上がるのは牛肉でしょう。

むしろ魚料理は、シンプルに食べるのも良いですけど、突き抜けた料理に持っていくためには、なんらかの仕事が必要です。

僕の場合、ジビエを料理する時のアプローチと、魚介類を料理する時のアプローチは非常に似ています。
その魚ごとに出汁をとり、その魚だけの為の付け合わせを用意し、料理を組み立てます。

話が少し戻りますが、8月末に博多のアンティカ オステリア トトさんに行ってきました。
魚介だけでコース組んで下さい、でもってシチリア料理でとリクエストをしておまかせしました。

天才です。最初の1品めの伊勢海老の温かい前菜。目をつぶって食べるとホントに地中海が見えます。
この料理の見た目は、ある意味現代的と申しますか、レストラン料理です。しかし、食べると絶対にシチリア料理、もしくはシチリア人が作っていると確信出来ます。
そうです。本田シェフはシチリア料理を創るというステージに立ってらっしゃいます。

危うく働かせて下さいと言いかけましたが、本田シェフは恐いので止めときました。お客のままの方がベターです。
もちろん全品絶品でしたが、もう1品クスクスを出して下さいまして、これも場外ホームラン。
うん、肉無しでも俺は生きていける。そう確信しました。

前置きが長くなりましたが、ジビエって魚の対極の存在とも考えられるし、案外立ち位置にてるなーと。
だって、天然ですし。生息地や時期や食べてるもん、雄か雌化で料理法変えるの魚介か、ジビエですよ。

でもって、味や風味は鮮烈ですが、脂が無い分意外に料理が軽い。ある意味あっさりしてます。
ジビエが苦手な方、無理しなくて大丈夫です。
日本の天然魚は全部ジビエです。
ウロコまで食べるアマダイ、珍重される白子、カワハギの肝、当店はジビエの様に魚介類も1匹丸ごと余すところなく食べてもらえる工夫をしています。
今回は、ジビエのご案内ですが、魚も力入れてます!

 

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こちら山ウズラ。ジビエの中では比較的食べやすい白身のお肉です。
詰め物をしたカセルタ風ローストでご用意します。
 
ナポリ近郊にカセルタという町がありまして、モッツァレッラが有名なのと、後ベルサイユ宮殿よりでかい王宮があります。
 
昔、ナポリは王国で、シチリアまで含めた南イタリアが両シチリア王国と言う国でした。
ヨーロッパ有数の豊かさを誇っていまして、このカセルタの王宮も春と秋の狩猟用の別荘です。
 
南イタリアはあまりジビエ、特に鳥類のジビエのヴァリエーションが少ないのですが、カセルタにはいくつか鳥類のレシピがあります。

 

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脱毛後。
写真でも分かりますが、肉質は白いですね。でもって皮も厚くありません。つまり鳥脂も少ないです。
赤身よりむしろ、白身の方がほんの少し熟成した方が美味しい気がします。
でも、よく言われるようにお尻を匂って軽い腐敗臭。。。てのはよく分かりません。腐敗臭は腐敗臭でしょう。
ちょっとナッツぽい香りが出てきたら十分と思います。
ちなみに、熟成は羽がついたままします。
 
合わせるワインは、赤ならあまり重たい必要はないかもしれません。ガリオッポ種のブドウなんか良いかもしれません。
熟成したしっかり目の白ワインも面白いかもしれません。

 

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こちら山鳩です。
売り切れたら、戎神社に仕入れに行きます。

 

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山ウズラに比べ若干皮がしっかりしています。その下の肉質は赤いの分かりますか?
 
鳩類は、内臓も非常に美味しいです。食べにくい手羽先と、内臓でパテを作りパイ包み焼にします。
胸肉とモモ肉はそれぞれソテーして、ジャストの焼上がりを目指します。
 
ソースはカラブリアの唐辛子とサラミのペースト、ンドゥイアとチョコレートを使ったソースです。
 
こちらはしっかりした赤ワインと合わせて下さい。素晴らしいです。

 

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こちらは雷鳥。日本のは天然記念物ですので食べたらだめです。
 
標高の高い所に住んでいまして、非常に警戒心の強い鳥だそうです。
天敵がいない、雷の日に活動するから雷鳥の名がついたそう。
落雷にも気をつけてほしい所です。

 

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こちらも肉は真っ赤です。山鳩より皮が薄いのでより黒く見えます。
鳥類のジビエの中では最も個性が強烈です。
 
標高の高いとこに住んでいまして、食べモンが、針葉植物くらいしか有りません。ですので雷鳥は非常に針葉樹の香りがします。
 
合わせるワインは、華やかでエレガントなワインを是非。熟成したアリアニコ、バルバレスこ、あとサルでーニアにもお勧めがあります。

 

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雷鳥が最後に食べた食事。見えますかね、つぼみの下に見える葉っぱ。
かなり香りの強い植物でした。

 

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料理の出来上がり写真です。ナポリ風のキャベツと米の煮込みを添え、自家製のソーセージと雷鳥でとったフォンでソースを作ります。
仕上げに雷鳥の内臓のペーストを少し加えます。
 
確かに強烈な個性ですが、完全に癖になります。

 

秋の食材 パート1

秋です。食欲の秋です。これ以上食欲増える必要は、個人的には有りませんが。

実りの秋です。農作物もですが、キノコ、ジビエなどの山里の天然物を触る機会が増えます。

順番にご紹介して行きましょう。

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 ワタリガニ。瀬戸内で蟹と言えば、ワタリです。300-400gくらいのものが良く出回りますが、当店は700gアップの物を仕入れます。
このワタリ蟹で、パッケリ(パスタ)を作ります。
ワタリ蟹のパスタは、殻ごと蟹が入っていて食べにくい事が多いでしょう?
当店は、全部身をほぐします。
この大きさのワタリ蟹になると、身もかなりしっかりしています。ですので身がフレーク状になりません。
身をほぐした後、ソースに加えてもソースを吸いすぎず、身の味が楽しめます。  
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箱入り娘。このサイズだと、丁寧に酸素のボンベ付で生きたままきます。

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トロペア産赤玉ねぎ。カラブリア州の名産の赤玉ねぎ。火を入れて使う事もありますが、特筆すべきは生食。
香りは有りますが、玉ねぎ臭くありません。水にさらさず使えます。
 
たかが玉ねぎ、そこらへんの玉葱使うか、基本食材だからこそ最上の物を使うか。
地方料理をする場合結果は明確です。
 
奥のビンは、自家製の唐辛子のオイル漬け。カラブリアの生の唐辛子です。さわやかな香りと線の細い辛味が、魚介類と最高に合います。

 

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写真がしょぼいのでサーモンに見えますが、芭蕉カジキです。32キロの大物!
これで4キロ分です。
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カジキの、どアップ。見て下さい。もはや肉です。生でも焼いてもすごく美味しい!

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キノコの王様ポルチーニ。
リゾットと、前菜でスープ仕立てにしたものに、穴子、じゃがいのもガットーを合わせています。

 

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トランペット茸。本当にラッパの形をしています。
火を入れると真っ黒になって、視覚的にもインパクト大!
大好きなキノコです。
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これもヨーロッパの天然キノコ。アンズ茸の仲間。
これも思いっきり強火てさっとソテーするとスンごい美味しい。シカに使っていきます。
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プーリア州の名産カルドンチェッリ。味は比較的あっさりしてますが、焼き色をしっかり付けて食べるとこれまた美味しい。
万能の付け合わせになります。

 

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鳥類のジビエを3種類注文したのに、入荷が少なくて来たのがライチョウ。しかも1羽。。。
これは、試作という名目で、僕が次の休みに食べます。来週からジビエも増えそう。お楽しみに!
あ、トリュフの写真忘れた。又今度載せます。

 

ESTATE 2011

 ちょっと暑さもましですね。秋はすぐそこで順番待ちしてます。
お決まりの台風も接近中で、週末の仕入れが大変ですがなんとかなりそうです。
 
 杉原家の一人娘の夏休みの宿題も無事に終わったようです。
僕は学生時代、夏休みの宿題が終わった事が一度もありません。娘の絵日記に触発されましたので、学生時代の罪滅ぼしに、この夏の思い出を絵日記風に大公開しましょう。
 
 まず、8月初旬、持病のLA GOTTA が再発。主食がプリン体で、おやつがカラスミ、お茶がビールな罪と罰。
約2週間びっこを引きながらの苦行でした。あまりお客様に挨拶できず、スミマセンでした。
 
 夏の間は、ほぼ毎週釣りに行くのですが残念ながらそれもお預け。
 
お盆をずらして頂いた当店の夏季休暇。10年来の親友のダ ルーポの森さん一家と二泊3日の滋賀県旅行に行きました。
 
1泊目は、キャンプです。実はキャンプはこの夏2度目。
一体森家と何回、キャンプ、バーべキューをしたでしょう?
 
キャンプ場に着いて、車を止めて2分後にはコロナビールを飲んでいました。
プリン体にも中毒性があるのでしょうか?まだ足痛いのに。。。
 
しかし、当店の常連さんになんと同じ持病をお持ちの方が多い事か!!!
そう言えば、この方たちは僕が少しずつ太って行くたびに、目を細めて(シェフ、また一段と美味しそうになってきたね)と褒めて下さっていました。
その笑顔は、昔お世話になった養豚場のご主人が、豚を愛でている表情と同じな気がしてきました。
そんなこんなで、ダイエットを決意する 2011夏です。
 
さて、1日目のキャンプ。昔はイタリア料理一辺倒でしたが、最近はプチキジ鍋したり、タイ料理したりと変化球もありであきません。
今回はイタリア料理半分、エスニック半分。ガットーディパターテ、アサリのソテー、ポルペッタ、生春巻、鳥のアーモンドソースなど。
翌日のお昼もバーベキュー。
サンマの塩焼きとご飯、ナスのパルミジャーナと子牛のタリアータという日伊異文化交流。
ロゼスプマンテが全ての仲を取り持つ。んーサンマとロゼスプマンテ!!!
 
2日目のディナーは、この旅行のメインイベント、徳山鮓さんです。
琵琶湖の北側にある、余呉湖の産物(鮎、マス、ウナギ等)や山の幸(熊肉、山菜等)を駆使した日本の郷土料理でもてなして下さいます。
そして、ここの真骨頂は鮒鮓などの馴鮓です。
 
イタリアでもこんな感じのお店ばっかり巡っています。日本もまだまだ新しい発見もあります。
ここ数年、国内旅行はちょっとテーマを決めて地方の郷土料理を食べに行きます。
そこの料理自体を参考にするのではなく、土地と店の繋がりを感じに行くんです。
 
 ここ、徳山鮓さんは、超有名店。初めて伺いましたが、今まで行った中で一番土地とのつながりを感じました。
共存共栄。
純和食ですが、ある意味ものすごくイタリア的でもありました。(思想、スタイルの面です。)
 
 
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名店は、入口からして違います。

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余呉湖が目前に広がります。海と違い、音を発せず、むしろ全ての雑音を吸い込んでいるような静寂。

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一度に受け付けるお客様の数も少なく、手厚いもてなしです。
冬も風情がありそう。
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1度しか行かなかった釣り。釣った魚は必ず食べます。
アクアパッツァにして、ソースはパスタに、魚はメインに。
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僕は小学校3年の時、コックになろうと決めました。
不思議な物で、小3の娘も最近コックになろうと思ったらしく、修行開始です。
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仕掛け代、交通費、エサ代を考えると買った方が安い!!!な釣果。
でも、釣った魚を料理して食べる。これが僕の生き甲斐で、調理師の原点です。
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8月最終の週に、九州のシルビオの畑に行ってきました。
畑は、秋冬の準備です。
これはフリアリエッリの苗。
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こちらはスカローラ。待ちきれません!

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見た目全く一緒ですが、左右どちらかがアーティチョーク、どっちかがカルド。
この時点では全く分かりません。
なんか、みょーに納得しました。
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色付かけてるナポリのパプリカ。
香りが鮮烈で、甘さがくどくありません。
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カラブリアの甘トウガラシ。種は甘くありません。悶絶しました。

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ナポリ料理には欠かせないパパッチェッリ。そのまま食べず、酢漬けにします。

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素晴らしい香りのバジリコナポレターノ。最近九州で大雨が続いたそうで、結構やられたとの事。
もったいない!
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エンダイブ。スカローラリッチヤは、寒くなる前にも取れるみたい。早速頂きます。

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へー、こんなんなんや。ラディッキオです。

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もうしばらくナスとの格闘が続きそう。しかし、シルビオが作ってくれたナスのパルミジャーナ旨かったなー。

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カラブリアの唐辛子。ぎょーさんきました。畑を見て回ったあと、シルビオの家の前の海で海水浴をしました。
その後、アンティカ オステリア トトさんの本田シェフもいらっしゃって③家族でバーベキュー。
 
本田シェフが即興で作って下さった、カツオのタルタル旨かった―!
帰ってパクリましょう。ちょっとこれも使って。。。
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あの写真のパプリカちゃんが真っ赤になって当店に到着。

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今シーズン最後と言われたトマト。あんなにトマトまみれな夏だったのに急に寂しくなります。

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もうあなたなしじゃ生きていけない。って気分になって、トマトをビン詰めにしました。こうすると1年中、夏の香りのトマトが使えます。
一粒ずつ心の中でバーチョしながら、ビン詰めしました。
 
僕の夏も終わり。ジラソーレもボチボチ秋の準備を始めます。
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シルビオ家からの夕日。アー良い連休になりました。シルビオ夫妻、本田シェフ夫妻、ガミちゃんお世話になりました。
関西にも遊びに来て下さい!
 
P.S この旅行中、トトさんで食事を頂きました。あまりにも素晴らしかったので、次回のコラムで詳しく書きます。

MELANZANE AL CIOCCOLATO

 毎年、お盆の頃にお出しするデザート、MELANZANE AL CIOCCOLATO(ナスのチョコレート風味)。
 
織田祐二の映画(アマルフィー)の近くのミノ―リという小さな町が、本家みたいです。
毎年8月には、SAGRA DI MELANZANE AL CIOCCOLATO(ナスのチョコレート風味祭り)があります。
 
ナスにチョコレート?と奇抜な組み合わせの様ですが、実際に食べるとものすごく王道な美味しさです。
 
粉や卵で作るスポンジの代わりに、茄子を使ってチョコレートケーキを作ってるようなもんです。
 
意外や意外、すごくエレガントで、茄子と言われなかったら分からないくらい。
では、茄子を使う意味が無いのでは?
そう考えるのも当然です。
でもこれは、奇抜なアイデアからナスで、デザート作ったろーとなったのではなく、夏のナスが旬の時期、恐ろしい量のナスが取れ、なんとか飽きずにナスを食べるための工夫なんです。
ですから、ナスは感じない方がいい。多分、前菜でも、プリモでも使っていたでしょから。
お客さんによく、あまりにも自然な感じで、茄子を殆ど感じないけど特殊なナス?と聞かれます。
いえ、茄子らしくなくて良いので、出来るだけ普通のナス、そこらのナスを使います。
 
以前の僕なら、灰汁の無い水ナスとか試してみる所ですが、前号の続きになりますが、必然性とはこんなもんです。
より美味しい、個性のあるナスは、その個性を楽しめばいい。
 
前回は、文章ばっかりだったので、後は写真をお楽しみください。
 
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真っ青なチェラミカの皿に、綺麗に映えます。
こちらが、茄子のチョコレート風味です。
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こんな感じでケーキみたいに大きく作ります。
作ってから3日目位からが美味しい。

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 地方料理には、クチーナ ポーヴェラ(貧しい料理)と呼ばれるジャンルがあります。
貧しいと呼ばれますが、実はこれこそイタリア料理の神髄が詰まった、心が豊かになる料理です。
これはクチーナポーヴェラの傑作、じゃがいもとミックスパスタの煮込み(pasta e patate)
しかし、美味しく作るのは結構難しいです。
 
以前、イタリアワインの巨匠、アンジェロ ガヤと食事をした事があります。(自慢です)
ものすごく気さくで、色んな話をして下さいましたし、色んな質問をされました。
その中で印象的だったのが、アンジェロ ガヤはこのナポリのパスタ エ パターテがえらくお気に入りの様で、パスタ エ パターテを連呼してました。
おそらく、世界中のトップレストランで豪華な食事をした事があるでしょうに、こんな庶民的なモン食べるやと意外でした。
そして、その時出てきていた料理のサマートリュフを全部よけて残していました。
多分、安い、高いでなくホンマモンが好きなんでしょう。
 
涼しくなったら、ランチでします。
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これは、上のカボチャヴァージョン。
こういう料理を、ナポリではミネストラといいます。スープのカテゴリーです。
でも、実際はスープっ気がそんなにある訳でなく、パスタで作ったリゾットみたいな感じです。
イモ、カボチャの他、白インゲン豆、レンズ豆、エンドウ豆、そら豆、ヒヨコ豆、カリフラワー等など。
非常によく食べます。
 
蛇足ですが、イタリアでは、パスタ、リゾットは、深みのあるスープ皿には盛りません。平たい皿です。
そして、平たい皿の時は、スプーンを使いません。
 
逆に、深い皿で出てきたら、あまり汁気が無く見えてもスプーンで食べます。
 
こちらは、汁気はそんなにありませんが、深皿に盛ります。
ですので、スプーンで食べます。
 
面白い事に、色んなパスタが混ざっています。
これは、ちょっと余ったスパゲッティ、ちょっと余ったマカロニ。。。というようになんでも良いんです。
少々のゆで時間の違いも気にしません。混ぜて使います。
でも、そうする事によって、ちょっと柔らかくなってスープをよく吸ったものや、しっかりアルデンテなものが入り混じり、食べ飽きません。
素晴らしい工夫です。
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こちらも、茄子料理の名品。パルミジャーナ ディ メランザーネ。南イタリアでは、パルミジャーナと言う料理名で、色んなヴァージョンがあります。
ナス、ズッキーニ、アーティチョーク。。。
 
ナスは、味がニュートラルかつ、旨味があるのでかなりの料理のヴァリエーションがあります。
しかも収穫量がえげつない。
ですから、意外にナス料理は、ナス単体の物が多い気がします。
 
 こちらは、オーヴン料理ですが、まず出来たての熱々を食べることはありません。常温です。
昔のイタリア料理の本は、食べる温度の指定が、細かく書かれていました。
 
イタリア人は、あまり熱々の物を食べません。
誤解を招く表現ですが、あったかい位で食べます。
味も一番よく分かる温度ですし、何よりイタリアで料理をすすって食べるのは、かなりのNG.
熱いと、食べれないんです。
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大人気のお惣菜、ピッツァ パリジーナ。パリ風ピッツァという名のピザパイです。
ナポリは、ピッツァも有名ですが、ピッツァだけでなくストリートフードがものすごく発達しています。
 
ビシッとスーツを着ているビジネスマン風のシニョーレでも、街角でこんなファストフードを買い食いしています。
あと、アランチーニ(ライスコロッケ)パニーノ、切り売りピッツァ、揚げもの各種。。。
修行中はお金もあまり無く、大変お世話になりました。
平たく言えばジャンクフードですが、かなり文化的で魅力的です。
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なんか分かりますか?料理の写真は難しい。。。
子羊の頭のオーヴン焼です。
 
ゲテモノ扱いされがちですが、まー美味しい。ホホ肉の所なんて、なんじゃこりゃーと松田勇作になりそうです。
 
90-100分オーヴンで焼ます。
カラッとした煮込みのイメージで。。。
 

地方料理と伝統料理 そして 創作料理と現代料理

 今回は難しいテーマです。そしてアホみたいに長いです。
 
僕はイタリア料理が大好きです。
ここで言うイタリア料理は、バブル期に一気に人気者になったイタメシでもなければ、おしゃれなイタリアンでもありません。
 
イタリアでイタリア人が、心と体の糧とするソウルフードを指します。
そして、そのソウルフードは地理的、気候的要因、歴史的背景等により地方地方でかなり異なり、それゆえ地方料理と呼ばれます。
 
今日はその地方料理と伝統料理、そして創作料理と現代料理の話を。
 
これは、イタリア料理に携わる人間にとって避けては通れないテーマであり、イタリア料理のアイデンティティ― そのものです。
 
 
イタリア料理とは?実は非常に定義が難しい料理です。
イタリア共和国内で独自に発達した地方料理の集合体。
無理やり定義するとこんな感じでしょうか?
イタリア料理とは、実在する料理で無く、便宜上使われる表現、位の捉え方の方が的を得ているかもしれません。
こんなに歴史の古い国ですが、今のイタリアの領地で落ち着いてまだ150年ほどです。ナポリとミラノは200年前は違う国だったんですよ。
 
まー、これは政治的な国境で、すでに文化的な交流はあったと思いますが、それも上流階級の話ですね。
では、一般的な庶民のイタリア人がイタリア料理を意識したのはいつか?
それは、ムッソリーニ政権時代、兵役でイタリア中から集まる若者が、軍隊の食事で経験したのが始まりではないかという説が、説得力あります。
それまでマンマの料理しか食べてない若者が、駐屯地で他の地方出身者が作った他の地方の食材の料理。
日本だったら、米、その時代だったら芋粥とかなんですかね、とみそ汁。
これくらいの共通点はあるでしょう。
今までポレンタしか食べた事無い人が、パスタを食べる。
その逆しかり。
すごいです。
この保守さ加減。
 
 
では、日本料理の定義は簡単か?というと多分難しいと思います。
カレー、ハンバーグ、唐揚げ、焼そば、いずれもかなり生活に密着した日常食ですが、和食でしょうか?
最近新聞で読みましたが、日本料理を無形文化財だったかな?に申請する動きが出て来ているらしく、同じようにカレーや、ラーメン等と一線を画する定義付けを始めたそうです。
 
 これは、実は結構画期的な事でしょう。
食とは生命維持のため、その先にある味覚の楽しみ、20世紀はここまででした。
21世紀は、色んな国で料理を学術的にとらえ始めています。
 
20世紀以前、すでに料理を学術的に扱っていた国が2つあります。
フランスと中国です。
フランスは中世から、料理を外交手段として使っていました。
アントナンカレームって映画にもなっていますが宮廷の晩餐を料理はもちろん、贅の限りを尽くして色んなアトラクションを入れながら演出する職業がありました。
確か、レオナルドダヴィンチもそんな企画を手掛けた事があるような事を読んだ事があります。
 
宮廷料理として発展したフランス料理は、理論的に物凄く発達しています。
すでに厨房設計の理論なんかもあったみたいですから大したもんです。
 
同じく中国も宮廷料理が発達しています。
絶対的な権力者が存在すると食文化は発達するようです。
 
フランスと中国の違いは、外にアピールしてきたかと、基本的に自国と自国民の為の料理かの違いでしょうか。
 
今日に至っては、世界中で食が発展しています。
現在の絶対的支配者、それは資本主義です。
 
中国が、今の好景気に沸く前、15年くらい前ですかね、あるすごく有名な日本人の中華のシェフに聞いた話なんですが、中国に色々食べに行っても最終的には香港が1番美味しいと。
香港のコックは、がんばったら給料が上がる事を知ってるので向上心が全然違うとおっしゃっていました。
そして、1番外国人に料理を作る機会が多い地域でもあったでしょう。
 
その頃ですかね、ヌーベルシノワという言葉も聞くようになりました。
 
僕の勝手な定義ですが、ヌーベルキュイジーヌ、ヌオーヴァクチーナ、ヌーベルシノワ。
これらは、資本主義の産物です。
第二次大戦後、世界的に民主化、資本主義が発展し、市民の中でも成功者、裕福層が増えた事により飲食店の階級も細かく分かれたはずです。
客層が広がった、つまりビジネスチャンスが増えた訳です。
 
ヌーベルキュイジーヌのモードはフランスで始まり、フレッシュな食材を生かすため加熱時間の短縮や、油脂分、塩分を減らした軽い仕上がりを意識した料理を作る動きの事です。
健康に留意する、肉体労働から知的労働に変わる、交通、流通の発達。これらも資本主義の恩恵でしょう。
 
裕福層がどんどん増える事によって、レストラン側は、より多岐にわたるニーズに応える必要が出てきました。
そして資本主義の醍醐味は、ニーズに応える事ではありません。
ニーズを作りだした人が成功者になるのです。
 
そこから料理に創作性を盛り込むという理念が生まれました。
ここでしか食べられない、自分しか作れないという独自性、専売性を強く意識し出します。
 
その動きは盛り付けにも大きく影響しました。
それまでソースはたっぷりと肉や魚の上からかけるのが常識でしたが、先ずソースを皿に流し、その上に主材料を置くという手法が生まれます。
こうする事によって、ソースに頼りすぎず素材自体の味を楽しめるからです。
 
そして、西洋料理の盛り付けに高さが出ました。
立体的になってきたと申しますか。
これは日本料理の影響が少なからずあります。
日本の調理師学校やホテルに召喚され、来日するシェフが増えました。
そしてヨーロッパで活躍する日本人シェフも増えました。
資本主義によって発達したものは、その後必ずグローバル化して行きます。
 
 そして、フュージョン料理というジャンルが生まれました。
ごく自然な成り行きで発生しましたが、少しリスクのあるジャンルです。
フュージョン料理店と謳っている店は、まだそんなに多くありませんが、しっかりと料理の1ジャンルとして確立しています。
そして、元々、どこどこの国の料理という国境がなく、世界中の料理の魅力を取りこんでいますので、仮に、5人、10人集まって食事に伺ってもきっと好みの料理が見つかると思います。
 
そして、アイディアも自由で、ワクワクする盛り付けも魅力です。
カリフォルニアロールを例に挙げても分かるように、寿司を食べ慣れていない欧米人でも抵抗なく食べてもらえる工夫が満載です。
 
この様にフュージョン料理自体は、時代を捉えた魅力的なジャンルです。
何が危険かというと、フュージョンと謳っていない料理店(イタリア、フランス、中華、和食が顕著ですかね)がフュージョン化して行く事です。
 
フュージョン料理には、元々国境の観念がありません。
しかし、世界中のフレーバーが盛り込まれています。
逆に言えば、フュージョン料理にある国のフレーバーを強調すると、その国のモダンな料理に見えてきます。
 
先ほどの例ででましたカリフォルニアロール。
巻きずしの形を取らず、でも食材の組み合わせや味はそのままで、盛り付けをちょっと変えてトマトでも添えれば、イタリア料理店で出てくると、まあ、なんとなくイタリア料理として食べる事になります。
しかし、これはあくまでフュージョンであって、イタリア料理でのアレンジではありません。
替え歌みたいな感じですね。
フュージョンをイタリア料理化する。危ないのはこの線です。
 
 
日本には世界各国の料理店があります。
その中でイタリア料理だけが、イタリアから直接入らずアメリカから日本に入りました。
ピザとスパゲッティです。
パスタという言葉を知る前に、僕たちが子供のころからある、スパゲッティとピザ。
 
今、40歳以上の方で、小学校の頃からキッシュ食べてる方いらっしゃいます?
インスタントのポトフもなければ、冷凍のコック オー ヴァンも無いですね。
 
スぺゲッティとピザは、何十年も前からインスタントも冷凍もあります。
でも、イタリア料理ではなかった。
スパゲッティ、ピザの横にホットドックを置いていても違和感の無い、アメリカの食べ物だったんです。
 
何十年も前からちゃんとしたイタリア料理店も少ないながらありました。
多くは、イタリア人かイタリア系の二世のお店です。
外国の料理は、その国の方が営んでるのが1番自然ですね。
 
で、その頃、西洋料理と言えばフランス料理でした。
イタリア料理は一昔前、エスニック料理の括りでした。
 
日本の高度成長に伴い、先ほどの話とリンクしますが、ファッション、車等の流行りも手伝い、イタリア料理もクローズアップされます。
クローズアップされてから、イタリアに修行に行く方も増え、イタリアの情報も沢山入るようになりましたが、今度はフランス料理の呪縛に悩まされます。
 
 
イタリア料理のニーズがドッと増えた時の、1番の上客は一通りフレンチを食べてきた方です。
先ず、外食に対してお金を払う事にポジティヴです。
そして、食に対する好奇心も旺盛です。
 
しかし弊害もありました。
基本的にフレンチがお好きなんです。
そしてパスタも好き。
僕が見習いだったころのブイブイ言わしてたお客さんは、このタイプの方が圧倒的に多かった。
前菜とメイン、特にメインがシンプルすぎるとダメなんですね。価値が見出せないとおっしゃっていました。
で、パスタはロングパスタ。
変な話、前菜はカルパッチョか、魚介、もしくはフォアグラをちゃっとソテーしてバルサミコ味。
気の効いた?食材の組み合わせのスパゲッティ、フレンチ的なメイン料理に仕上げにオリーヴオイル。
デザートはティラミスとパンナコッタ。
90年代の主流はこれでした。
 
 
そんな中、日本でイタリアの地方料理というテーマで勝負されて初めに大成功を収めたのは、東京のアクアパッツァの日高シェフでしょう。
確実にフレンチと一線を画してなお、レストラン料理としての完成度を持ち合わせた料理は、僕のイタリアに修行に行きたいという気持ちにますます火を付けました。
その後、六本木にラ ゴーラというレストランが出来ました。
ラ ゴーラの澤口シェフの料理が、料理の専門誌に登場するようになり、完全にノックアウト。
やられた!
先を越された!
カッコよすぎる!
これこれ!まさにイタリアの原風景の様な料理。
もしくは歴史的建造物が風景に溶け込んだような料理。
薄く切ったアスパラを並べてみたり、長いアサツキ乗っけてデコレーションしてる皿が稚拙に見えました。
 
エルポニエンテの小西シェフの料理もそうでした。
装飾が無い。
むしろ装飾の余地が無い完成度と申しますか。。。日本の器、陶器に似てますかね。
プリミティヴな美しさ。
高級ブランドの服を着た、メタボなおっさんと、鍛え抜かれたボディーにTシャツとの違い。(作ってる人の話でなく料理の例えです)
僕は、メタボでTシャツですが、料理は鍛えられたボディーにTシャツでありたい。(そんな料理を目指して自分を鍛えると、メタボになります。僕は鍛え抜かれたメタボです。)
 
 
話を本題に戻しましょう。
イタリア料理を大胆にもカテゴライズすると、この6つに分かれます。
 
①伝統的な地方料理
 
②地方料理
 
③時代のニーズに沿った新しい地方料理
 
④アレンジ???
 
⑤創作料理
 
⑥現代的な料理(コンテンポラリー)
 
今回のタイトルで、地方料理と伝統料理を分けたように、必ずしも地方料理=昔の料理という事では無くなっています。
地方色、地方性があるか否か、それは必然性という言葉に置き換える事が出来ます。
 
④,⑤,⑥の料理は、必然性の代わりに閃きと理論の料理です。
 
⑥に至っては、まだあまり日本では、イタリア料理のジャンルでは見かけませんが、スペイン、フランス料理では、かなり認知されているグループです。
むしろ、現地でもレストランガイドのトップは、⑤と⑥で過半数、続いて③、②、①の順ですかね。
 
イタリアでは、①、②のカテゴリーばかりのレストランガイドもあり、僕ももっぱらそっちを愛読しています。
 
 
必然性がある料理とは?少し説明しますと、A+B=C という事なんです。
最強の方程式です。
ある食材を、美味しく食べる最もベストな、最短距離の料理です。
いくつか例をあげましょう。
 
僕は、魚のアクアパッツァをあまり店で作りません。
何故か?
瀬戸内の白身でアクアパッツァ(言い換えると水分調理)に向いている魚が、あまり無いからです。
水分に浸かった状態で火を入れて、美味しい魚が少ないんです。
 
メバルと石鯛、冬の旬では無い時期のスズキのしっぽに近い部分、あと瀬戸内にはいませんがキンメ、これくらいですかね。
納得できるアクアパッツァが出来るのは。。。
メバルや石鯛なんかは、煮汁と上手く馴染ませる事ができるのですが、例えば真鯛なんかは焼くと素晴らしいですが、水分調理は難しいです。
身が、緻密で上質すぎて煮汁をはじきます。
 
イタリアの魚はというと、加熱をすると適度に、身に隙間ができます。目には見えませんが、簡単に言うと硬くならない、煮汁とのなじみもいいんです。
 
そして、アクアパッツァは出来るだけ丸一匹で調理したい。
アクアパッツァは本来、ニンニクとパセリ、ほんの少しのトマトと水とオリーヴオイル、塩のみで作ります。
貝やオリーブ等は、いれません。
となると、必然的に丸一匹の調理が前提になってくるのですが、今日のお客様のニーズは、少量多皿な方が多いんです。
となると、なかなか作るチャンスが無い訳です。
何故丸一匹にこだわるかと言えば、メバルならメバルのむせかえる程の香りを引き出す事が出来ますし、石鯛なら石鯛、キンメならキンメの味しかしない、非常にクリアで綺麗な味の料理になるからです。
だから、ブイヨンでなく水を使います。
 
一人前の切り身のポーションで作るとすれば、やはり貝やオリーヴ等で旨味を足す必要が出てきます。
本来の姿を尊重しながら時代のニーズに合う工夫をした、新しい地方料理と呼べると思います。
 
先出の日高シェフのお店はまさにアクアパッツァという店名で、お魚のアクアパッツァがスぺシャリテです。
日高シェフのアクアパッツァの作り方は、先ず魚をソテーしてから煮込むそうなんですが、これも本来のアクアパッツァとは違います。
でも、実は素晴らしい工夫なのです。
最初に魚をソテ―する事によって、ある意味魚の身にダメージを与え、魚の身に(隙間)を作ってらっしゃるのだと思います。
これも見事な新しい地方料理でしょう。
ポイントは、着地点が分かっていて、そこにたどり着くために必要な、必然的な工夫です。
C'=A'+B' という感じです。
 
 
長くなったついでにもう一つ例えを。
この例えは、地方料理をしていて一番ブルッと来るケースです。
 
ナポリ料理で CARCIOFI E PATATE SOFFRITTI  (アーティチョークとジャガイモの炒め煮)という料理があります。
この古いレシピには注釈があって、(シーズンが終わりに近づくアーティチョークとシーズンが始まる新じゃがの素晴らしい出会い)と書いてあります。
 
今までも、アーティチョークとジャガイモの組み合わせは何度も作ってきましたが、今年初めてシーズン終わりかけのアーティチョークと、シルヴィオが送ってきた新じゃがでこの料理を作った所、今までのは何だったんだ!と衝撃を受けました。
そして注釈の意味を、完全に理解しました。
 
シーズン真っ盛りのアーティチョークは、ポコポコ沢山出てきますので、アーティチョーク単体で贅沢に楽しみます。
で、シーズン後半になってくると収穫量も減ってきます。
そうすると、ちょっと底上げしましょかとなり、出始めの新じゃがを加えるんですね。
よーできてます。
 
しかし、ヒネのジャガイモと新じゃがでこんなに差が出るのかというくらい美味しいんです。
どちらも土臭い香りの野菜なのに、さわやかさを感じるくらいフレッシュで素晴らしかった。
 
そしてシルヴィオの野菜を使うようになってから、あまり味見をしなくなりました。
僕の一番自然な感覚で、大体味が一発で決まります。
 
昔ながらの伝統的な地方料理というのは、全ての条件が揃うと、鍛え抜かれたボディーにTシャツ的な完成度があるんだと、思い知らされました。
 
しかし、この条件は、イタリアでもあまり揃わなくなってきています。
世の中が便利になりすぎたのと、手間がかかるので、イタリアで①のカテゴリーのレストランで素晴らしく美味しい所は滅多に出会えません。
もし出合ったら、その旅行で一番の思い出になると思います。
 
 
 
①の伝統的な地方料理と②の地方料理の線引きは、時代が変わっても、ほぼ、アレンジ、微調節の必要が無い料理。
むしろ変えてはいけない料理です。
 
②の地方料理は、時代のニーズに合わせ、嗜好や年齢等も考慮して、微調節の猶予がある、ベースとなる料理。
③が、その微調節をしつつ、地方性が色濃く残った料理と言えますでしょうか。
 
⑥は、一目で分かります。泡あわだったり、煙が出てたりと、明らかに今までの料理とは一線を画します。
一度、思いっきり奇抜さ、目新しさの方向に針が振り切った様な気もしますが、最近ではそのテクニックを用い、伝統料理を更に昇華させるための、味覚に訴える料理のための方法のひとつとして確立して行く動きもあります。
 
大阪のエルポニエンテ オラさんは、まさに美味しさが伴った、むしろ美味しさのための最新テクニックという感Jで素晴らしく美味しかった。
日本のイタリアンは⑥は少ないですね。
 
⑤の創作料理は、多くの店がこのカテゴリーに入るようですが、実はごく一部です。
創作料理。
今までにない新しい料理。
これは本当の天才だけが出来ます。
全く新しい料理というのは早々生まれません。
 
 
僕の修業先のTORRE DEL SARACINO のジェンナーロシェフは真のクレアティーヴォ(クリエーター)です。
彼のスぺシャリテの一つ、甲殻類と磯部の小魚とグラニャ―ノ産ミックスパスタの煮込みなんかは、見た目はやや地味な古典料理の様ですが、今までにない新しい料理です。
新しい料理なのに、古典料理の様な風格。
この先50年、100年後のナポリ料理の本に載るだろう料理です。
他の州の人が見ると、これはナポリの料理でしょうとすぐ分かるキャラクター、さりげなく、無理が無くでも斬新。
今でもはっきりと思い出せるあの味。
マンマの味の様な、でも情熱と野心をもった男のエロスも感じる本当に素晴らしい料理。
100年後には、ナポリの伝統料理になってますよ。
 
僕はナポリ料理を作っていますが、彼はナポリ料理を創りました。
これが、僕が思う真の創作料理です。
そして、それは(もう食べた事がある)とか、そういった話題で終わりません。
又あれが食べたい!
あれを食べにあそこに行こう!
と、リピート出来る料理です。
 
今の世の中、毎回来店ごとにメニューが変わっているのがよし!みたいな所がありますが、あれが食べたい!という欲求は、まだ食べた事の無い新しい料理が食べたいという欲求に勝るのが自然なのでは???
とも思います。
 
僕は、イタリアの地方料理に夢中です。
そしてナポリ料理を生業にしています。
でもいつかは僕もナポリ料理を創りたいと思います。
 
今回はやたらと長くなりましたが、最後まで読んで下さり有難うございました。
 
 

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