COLUMNコラム
baba' napoletano! o' baba' na cosa seria...ナポリ風ババ
早い物でもう3月中旬。。。
年明けたと思ったらもう確定申告ですよ。
ご存知の通り、年明けからパティシエ不在で今年が始まり、15年前のオープン当初並みに出勤時間が早くなり、1月2月はほとんど僕と木原とトッキーの3人で店を回しました。
お客さんにも多少ご迷惑をお掛けしたと思います。
何より、お席がまだ空いていてもお断りするケースもありましたし、電話に出れないときもありました。
3人だとレストランでコースのご予約がある程度入ると、シュエシュエを機能させれません。
これが悔しかった。
でも木原さんもトッキーも、少しでもシュエシュエも機能させる努力を最大限してくれて、男3人超体育会系なのりで結構楽しく働けました。
お二人には感謝です。
それでも1日24時間。
仕事の総量を考えると、ある程度整理しないととても間に合いません。
苦渋の決断でしたが、続けたかったドーナツは諦め、ショーケースのデザートを4種に絞りました。
出来れば5種にまで戻そうとは企んでいますが。
それプラスジェラートが5,6種類。ジェラートは串カツあーぼんから研修に来てる大くんが、頑張ってくれてるとして
レストランのコース料理は仕込みも全部僕がしますし、シュエシュエの惣菜半分、パンも僕がしてますのでお店がゆっくりしてる日も、1秒も止まらず必死のパッチで仕込み続けないと間に合いません。
さらにレストランでお出しする用のオーダーごとに仕上げるレストランデザート。
これも去年までは2,3種類常備してましたが、これは1種が限界だなと。
そこで思いついたのはデザート部門で潮の香りのパッケリ級の人気者を育て、それを年間定番で置こう!作戦でした。
そこで白羽の矢が立ったのが、ババ。
昔ナポリで習った通りに作り続けてたつもりですが、何となく漠然とまだもっと美味しくなる予感がしていました。
よし、せっかく自分で作るからには生地や発酵全部見直して、ナポリ人が椅子から転げ落ちるくらいのババに仕上げようと1月から工夫しまくりました。
大体こういうテコ入れで工夫しだすと、最初は失敗します。
すみません、1月はイマイチでした。。。
しかーし!2月下旬ごろからイメージ通りのババに近づき、かなりの完成度になりました。
丁度そのころナポリから僕の友達が遊びに来ましてジラソーレで食事をしたのですが、試しに黙ってババを食べさせたら、椅子から転げ落ちませんでしたが椅子から立ち上がり、厨房まで来てまさかこのババもお前作っての?とある意味ドン引きしてました。
よし。
まずこの写真の左側2つは去年までの作り方の物です。
右側2つは一回り大きいのが分かりますか?
1つの生地の重さは計量してますので同じですが、発行具合その他もろもろで大きく膨らもます。
大きく膨らめば良いという訳ではないのですが、これで中に巣が入らず、たっぷりシロップを吸いながらベチャベチャでなく、柔らかいのに弾力があり、こんなボリューミーなのに超軽い。そこを目指し続けました。
更に発酵も研究したことろ、
じゃーん。
真ん中と右のは、上の写真の右側と同じ生地です。
この左側のババの存在感!
もうね、全身鳥肌ですよ。
1年かけてこのレベルになれば良いなあと思ってましたが、偶然でもあるでしょうが2か月で出来ちゃった。
この感覚を忘れないうちに続けて焼いて、まあ、大体このレベル焼けるようになってきたのでご報告します。
僕、優しいのでイタリア出発前の藤本にも自慢げに食べさせたら、
非常に腰が低くなり、シェフ、これもう一度教えて下さい!だって。わはは。
という訳で出発までのわずかな期間、また修行に来てます。毎日ではありませんが。
師匠の面目保てましたが、やはり本職のパティシエにはかなわない事も多いです。
一回りも二回りも大きくなって帰ってきて欲しいもんです。
という訳で、
シュエシュエのショーケースに並んでいるババのビジュアルは現在こちらです。
以前はこんな感じでアマレーナチェリー乗せたりしてましたが、撤去しました。
無いほうが圧倒的に美味しいです。
上のも生クリームの下にババ用に開発したクリームも入っていてクリーム2層です。
僕が作ると料理もお菓子も装飾がどんどん無くなりますが、知った事ではありません。
装飾が美味しさを上回ったケースを44年間見た事ないので却下。
そして
この装飾ゼロのでも完璧に鍛え上げられたボディーを持つババに、立てたての生クリームを添え、お好みの高級グラッパをお選びいただき数滴かけてお出しするのがディナーの新しい定番になりました。
もう一つ
ババには酸味のあるフルーツは要らないと思う。
まあ、のっけりゃ売れるのでしょうが、それよりこれをお試し頂きたい。
ババ用に開発したクリームと生クリームまではシュエシュエ仕様と同じですが、オーダーごとにマラスキーノでマリネしたバナナをキャラメリゼした物と、ラムレーズンの自家製ジェラートを添えるバージョン。
こちらはお酒飲めない方でも大丈夫!
勿論酒好き、甘いもん好きにもお勧めです。
これぞ茶色の美学。
ディナーコースのデザートの新定番です。
最近はオーブンの中でぷくーっとふくれるババが可愛くて仕方ありません。
という訳で、苦手なバースデイケーキもババにしてしまおう作戦です。
今年バースデーケーキのご依頼は全てババでお受けしますのであしからず。
ところで、ちょっと色気づいて流行りっぽい皿買ってみました。
お皿は超カッコいいし、こう見ても悪くないけど、店中から僕らしくないと凄いブーイングでした。
上のナポリの皿が似合ってるとの事。
がくっと来たけど、考えようによってはお皿自体に作家性の強いものと僕の料理やお菓子が喧嘩するなら、こんなに装飾がない料理やお菓子を作っているのに僕の料理やお菓子には作家性、個性が十分あるのかな?と思いました。
2枚だけこのお皿ありますので、興味ある方は声かけてください。
同じ料理を別のお皿でお出ししますよ。
長くなりましたが、ババ美味しいです。
食べてみてください。
春は仔羊!そしてパッケリの新作。
昔から一番好きなお肉は、多分仔羊です。
でも実はあっさり食べるのが好きです。
魚介で濃厚なのは好きですが、お肉はあっさりが良いな。
最近特にそう思います。
ですので、コースでお肉料理お出しするのも少しづつシンプルになって来てるかも知れません。
魚介料理では超シンプルから超手の込んだ物をお出ししますので、この時期の美味しい仔羊は是非ちょっとシンプルに召し上がって下さい。
上の写真が乳飲み仔羊です。
まだ草を食べていない、非常に柔らかいお肉ちゃん。
肋骨の部分は炭火でややカリカリに焼くと、鶏と羊の間のような軽さ。
下の写真は去年から解禁になったフランス産仔羊。
いわゆるセル、腰肉ですね。
あばらと背肉のカレと呼ばれる部分より個人的には好きです。
炭火でじっくり柔らかく焼いてから、仕上げは鉄板で超高温でカリッと仕上げます。
少し前までは、とことん柔らかく仕上げてましたが、最近は焼きムラがある方がむしろ食べやすいというか、美味しく感じます。
こうするとむしろソース要らないですね。
綺麗に均一に焼くと逆にソース的な物がないと気持ち悪いですから。
今回は焼きで勝負します。
この断面に、塩振って、生のニンニク刻んだものとレモンをぎゅっと絞れば最高です。
そして、あまりに絶大な人気を誇る潮の香りのパッケリの前に、新作がなかなか出ませんで、年間通して潮の香りのパッケリを具材を変えて作ろうかと思っていましたが止めます。
毎月は無理でも、季節ごとに胸を張れるパッケリを作ろう!
と思いついた春バージョン。
舌平目とアスパラの入ったアマルフィー風のレモン風味のソースのパッケリ。
むせ返る位春の香りです。
僕はかなり気に入りました。
皆様の反応はいかに。。。
春メニューに変わってます!
先日ご案内しましたイカナゴは、今年も爆発的人気です。
でももうそんなに長くないかもしれません。
結構デカくなってきました。。。
今の一押し食材!
マナガツオ!!!!
青背の大型魚のシーズンも終わり、白身も全部抱卵に入る時期で、いわゆるお魚の抜群はちょっと少ない時期です。
いま美味しいのはマナガツオ良いですね!
マナガツオを低温の炭で温めるように焼いてから、焼いたマナガツオのブイヨンにたっぷりと青のりと焼きのりを加えた海苔のソース!!!
雲丹は海藻で取った出汁にナポリの魚醤を加えたものに数分つけて儚い塩味と海の香りをドーピングしてます。
それに個人的に大好きな蕾菜のフリットを添え、一番下にはすべての物を繋げる秘密の物が。。。
8800円、10800円のディナーコースのお魚料理でーす!
これにはゲヴルツトラミネールをグラスでご用意してます。(めっちゃ良いやつ)
瀬戸内のヨード香満載の春の香りをお楽しみください!
ディナー編、ランチ編、アラカルト編と続きます。
いかなご!!!!!
初めて当店のHPをご覧になる方、ましてや兵庫県の方でなければ、なんのこっちゃ分からないかも知れません。
こんなちっちゃな小魚です。
イワシの稚魚はシラスですが、イカナゴはイカナゴです。
大きくなるとカマスゴとも呼ばれますが、これはニックネームでカマスに似てるからです。
兵庫県の瀬戸内沿岸部では春先になるとスーパーに生のイカナゴがならび、一緒に氷砂糖やでっかいタッパーが売られます。
そうです。
釘煮という佃煮になります。
それを各家庭で結構大量に作って、おばちゃん同志が友達と替えっこしたり、その後一年間の弁当の一ネタとして活躍する訳です。
兵庫県の日本海側は松葉ガニが有名ですね。
カニ漁が始まると漁師さんがこぞって蟹狙いになるので、他の魚種がすごく減ります。
瀬戸内もイカナゴがある間、結構他の魚が減りますね。
大体魚屋さんも、イカナゴの配達がタイムスケジュールの大事なポイントになりますので、いつもより融通が聞かなくなる事もあります。
それくらい、ほんの2,3週間ですがこの辺はイカナゴで沸きます。
2002年にジラソーレをオープンした直後に躍起になって探してた食材がいくつかあります。
・美味しい赤身の牛肉
・乳飲み仔羊
・乳飲み仔豚
・乳飲み山羊
・ナポリ特有の野菜
そして鮮度の良いシラス。
今や山羊以外はまあまあ納得のいくものが手に入ります。
しかし15年前は意外にもシラスさえなかなか手に入らなかったんです。
シラスありますか?って問い合わせると10キロからです、みたいな。。。
シラスを買う方のほとんどがちりめんじゃこの加工用なのでそのロットなんですね。
当時13席の店でしたから、極端なことを言えば毎日100g欲しいのであって10キロなんて買えるはずありません。
で、ある春の日イカナゴに出会ったんです。
あれ?シラス?じゃないな。。。
と恥ずかしながら生のイカナゴを見たことがありませんでした。
市場に出ませんからね。
明石の魚の棚には並びますが、イカナゴ漁の船が帰ってくるのは市場が閉まるころ。
そこからスーパーに直行なんです。
僕も初めて見たのは、スーパーの敷地内で漁師っぽい人が直売してるのを見かけたのがきっかけでした。
ちなみに15年まえは1キロ700円くらいでした。
今は2000円とか、高い時は2500円位します。
へー、イカナゴの生初めて見たわと、安いしすぐに買いました。
ナポリにはシラスの料理が結構あって大好きな食材でした。
イカナゴでシラス料理をすると、そのまま代用しても美味しい料理もあるし、あまり合わない料理もありました。
しかし、なにより衝撃的だったのが鮮度落ちの速さです。
シラスも鮮度落ち早いですが、イカナゴはフェラーリ級です。
小さな店で1キロ買っても全く使いきれません。
安いと言えど捨てるの嫌だし、かといってそんなにイカナゴ毎日食べれません。
そこで閃いたのが、ロサマリーナ。
南イタリアカラブリア州の名産でシラスの唐辛子漬けみたいな保存食です。
それをイカナゴでやって見たろうやないかと。
かといって、今みたいにインターネットも発達してないし、ナポリっ子の僕はロサマリーナのことは知ってるし食べたことはあったけど作り方までは知りませんでした。
ネットでなく、イタリアで買いまくった料理本で調べまくり試作第一弾。
素直に文献に従いましたら、とにかく辛い。
唐辛子の量が凄すぎて、しかもイタリア産の唐辛子ってそんなに安くないし、700円のイカナゴの保存食に対し、唐辛子代の方がはるかに高い。
しかも辛すぎるし、シラスより水分というか内臓が多いためなんか思ってるものとは別の物になりました。
でもなんか美味しい物が出来る予感だけはしてました。
直感的に、長期保存できるものにはならないなと察しました。
でも何もしないと3日目には全く使えません。
そこで考えたのがマリネと塩辛の間くらいの落としどころを探る作戦でした。
これが非常にうまく行き、今のジラソーレの大人気イカナゴのブルスケッタが生まれました。
昔はそれでも結構唐辛子利かせていたので、イカナゴのロサマリーナのブルスケッタと呼んでいましたが、年々ナチュラルな仕上がりになってきました。
ロサマリーナって名前を付けたかったから唐辛子を結構入れてましたが、美味しさだけを考えるとほどほどで良い。
その頃からイタリア料理が好きでイタリアを愛しているけど、料理の本質を見失ってはいけないな、と強く思うようになりました。
写真を見る限り、焼いたパンに調味された小魚が乗ってるだけですが、食べたらブルっとします。
20人に一人くらい苦手な方もいますね。
でもそれ以上に中毒者も多数です。
なんてことない料理ですが、日本でイタリア料理をする難しさと楽しさ、どちらも教えてくれた思い出深い料理です。
昨日解禁でした。
3月いっぱいはないと思います。
気になる方はお早めに!
ランチの前菜の盛り合わせにも乗りますし、シュエシュエでアラカルトでも召し上がれますし、ディナーコースの突き出しでも出ます。
まさにジラソーレの春の風物詩です。