情熱と感動の連鎖
情熱と感動の連鎖
皆様、あけましておめでとうございます!
流石に怒られますか笑
かなり長い間ブログを更新しませんでした。
時間が無い等の物理的要因もありますが、長年の様々な考え事がだいぶん整理出来てまして、全ての迷いを吹っ切ってから書こうと決めてました。
もちろん迷いがゼロになった訳ではありません。
しかし、自分が何処に向かいたいのか、そして現在地は何処なのかは明確になったと思います。
もうすぐ長年の夢に近かった目標が、2つ同時に叶いそうです。
ワインの輸入販売
ワインバーの営業
どこまで皆様にお話してたか失念しましたので、改めてお知らせ致します。
今年の夏までにはイタリアからワインの輸入を始めます。大昔も何度かしましたが、今回は酒販免許も取得して本格的です。
20数年前、全くコネも何もない、飛び込みで働かせて下さい!とお願いして快く扉を開けてくれたイタリアでの最初の修行先であるカンティーナ ディ トゥリウンフォが一昨年閉店しました。コロナ禍の波はイタリアの方がきつかったようです。近年は息子が店を引き継いで頑張ってましたが、非常に残念です。
息子アントニオに、これからどうするの?と聞くとワイン作りに専念するとの事。
そうです。
彼は僕が働いていた頃、ナポリ大学で醸造の勉強をしており、将来はワイン作りをする予定でした。
アントニオと一緒に毎年イタリアで開催されるヴィーニタリーという世界最大のワイン見本市
に3泊4日で行きました。22年前かな
道中80%下ネタで盛り上がり、20%真面目な話をしました。
自分はレストランを継がず、ワイン醸造の仕事がらしたい。両親も賛成してくれている等、毎日アントニオに会ってましたが、初めてオーナーの息子でなく、男同士の話が出来ました。
僕が日本に帰ってレストランをオープンした暁には、アントニオのワインを輸入するよ!と熱い約束を交わした訳です。
映画みたいな話ですが、僕らが旅行から帰った夜、アントニオのお父さん、つまりレストランのオーナーが亡くなりました。
普通に元気に働いてる最中に、急に心臓発作で亡くなったそうです。
アントニオは一旦学業を諦め、レストランを手伝い始めました。
僕はその後イタリアでソムリエの資格を取り、修行の仕上げにミシュランの星を本気で狙ってる店で働き、実際に星を取る瞬間も味わい日本に帰国しました。
ジラソーレを開店し、どん底のスタートから少しずつ持ち直し、数年越しでナポリに凱旋しました。
トゥリウンフォに行くとアントニオがサービスをしていて、嬉しい反面ワイン作りは諦めたのかな、と残念でもありました。
するとアントニオがウインクしながら、『カズ、これ味見して』と白ワインが注がれました。
カンパーニャ州のワインオタクな僕は直ぐにそれがフィアーノというブドウのワインなのは分かりましたがメーカーが分かりません。
ブドウの個性は良く出てるのに、非常にクリーンでエレガントなワインです。
僕が分からないという事は数年前には無かったワイナリーなはずです。
アントニオに新しい作り手?と聞くと
ニヤニヤしながらラベルを見せてくれました。
そこにはla cantina di triunfo
ラ カンティーナ ディ トゥリウンフォと書かれていました。
オリジナルラベルを貼ったハウスワインかなと思いましたが、ハウスワインにしたら上質すぎます。
[これどうしたん?)
と聞くと
『俺が作ってんねん』
レストランの仕事継ぎながら、ワイン作りの夢を諦めずこんな美味しいワイン作ってるとは…
この日から若かりし日の約束は、少しずつ現実味を帯び始めました。
この度、レストランは閉店しワイン作りに専念すると聞き、アントニオのワインを日本で紹介するなら今しかないと思った次第です。
本当にしみじみと美味しいワインです。
お楽しみに!
そしてそのタイミングで長らく閉めていたカンティーナ(お店の手前部分)をワインバーとして再開します。
実はこの店の作りも少しトゥリウンフォと似てます。
アントニオのワインを紹介するショールーム的なワインバーとして、それ以外にもイタリア中のワインを楽しんで頂ける小さいけど、愛と狂気の渦巻くワインバーに育てたいと思います。
カンティーナは去年の秋からジラソーレで働いている岡本勇志が中心となって運営していく予定です。
再開当初はあまりたくさんのメニューは用意出来ないかも知れませんが、彼の成長と共に少しずつ完成していくと思います。
カンティーナは当面、会員制でスタートする予定です。
この件に関しましては改めて詳しくご報告します。
ここまでは、新しく始める話です。
次はジラソーレの話です。
実はこの頃、料理人人生で一番幸せです。
何故か。
本当にしたい事が明確になったからです。
レストランというステージで、食の体験でお客様をハッピーにする。同時に僕たち提供側も、レストラン従事者でしか得れないハッピーを追求する。
ハッピーを少し超えて感動を提供する。
そして僕たちはその感動のど真ん中の日々を過ごす。
シンプルかつ究極で恒久的な目標です。
現在、ランチタイムは原色のナポリ料理というテーマで、イタリア料理でしか味わえない感動を模索しております。めちゃくちゃイタリアに行きたくなる、もしくはめちゃくちゃイタリアに行った気がする。
料理を通じてイタリアに心を鷲掴みにされて頂きたい。
ディナータイムは、僕が心酔する明石を中心とした瀬戸内の魚介類に心を奪われて頂きたい。
こんな美味いものが海のなか泳いでると思うと、自然の素晴らしさ、豊かさを身近に感じます。極上の魚介類の産地の近くで店をしてる幸せ。それら愛すべき地の産物を愛でるのに最適な料理はイタリア料理です。
イタリア料理とはその土地の料理。
その土地の産物を最も美味しく食べる集大成。
それこそがイタリア料理です。
この数年、明石浦漁協に通いまくってるお陰で、ジラソーレで扱っている魚は一線を越えました。極上の極上です。
漁場として超一級
漁師の意識と技術の高さも超一級
その中から更にピンのピンを競り落とす、ジラソーレの相棒の仲買の目利き、その魚の扱いと魚の知識、〆の技術、そして選りすぐりの中の更に選りすぐりを用意するため注文の倍は仕入れ、毎回オリンピックの金メダリストみたいな魚を用意してくれます。
ここに公約します。
ジラソーレマニフェスト
ジラソーレでは明石を中心とした瀬戸内の魚介類の極上のものを召し上がって頂きます。
もしシケが続いて仕入れが難しい場合でも、そのコンディション下で考えうる最上の仕入れをします。これはイタリア料理にしてはいい魚を使ってるという話ではありません。
名だたる寿司の名店に負けない仕入れをしてます。
余談ですが、魚を送って頂く発泡スチロール。
魚によってベストな輸送温度が違います。
全然スペースがあっても、例えば真鯛は常に別箱。もちろんその分送料1500円掛かります。
送料1500円余分に掛かると考えるか、もう1500円払ったら鯛にとってベストな温度で輸送出来るか。
ジラソーレは後者を選びます。
この極上の魚介類を前にして、本国そのままのイタリア料理ではイタリア料理にならないという究極の矛盾に突き当たりました。
僕は残りの現役の時間全てを注ぎ込んで、瀬戸内ナポリ料理を確立しようと燃えています。
50歳を前にして、こんなに夢中にならるテーマに出会えた僕は料理人として本当に幸せです。
あと15年現役とすれば、15年は長いですが春の真鯛と向き合うと思うと15回しかシーズンありません。
あと15回で僕はどこまで春の真鯛を理解出来るのか。
瀬戸内海の究極を垣間見れるのか。
正直焦ってます。
焦ってますが、これまで通り一歩ずす進みます。
今回このブログを書くきっかけは、相棒の仲買が3ヶ月連続でジラソーレに食べに来てる事。
自分の渾身の魚がどう扱われて、どんな料理になってるのか気になってるは分かります。
更に最近は、自分のお客さん連れて来るようになってきました。少しずつですが、彼が思う極上と僕が思う極上が繋がってきたのだと思います。
先日は究極のサワラを釣る漁師(彼は水揚げ量より1匹ずつのクオリティー重視で、釣った端から船上で完璧な手当をします。その分釣る本数は減りますが、競り値は圧倒的に上がります。当然ですね。去年出た明石史上最高値サワラも彼が釣りました)が、ディナータイムにフラッとジラソーレに寄ってくれて、お客さんがどんな顔して食べてるか見にきました。
一歩ずつの前進ですが、方向は間違えていないと確信出来ました。
今晩からイタリアに行ってきます。
アントニオのワインの輸入の最終段階です。
25日から通常営業再開します。
そして3月からディナーコースが12000円(税別)になります。
よろしくお願いします。