芦屋のイタリア料理とイタリアワインのお店

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急に暑くなりましたね!ディナーコースのメニューも変わりました。

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急に暑くなりましたね!ディナーコースのメニューも変わりました。

最近PCとHP更新ソフトをパティシエとソムリエに占拠され、中々コラムが書けませんでした!笑

嘘です。

スタッフが急に増え沢山の恩恵がありますが、当然その分新しい課題が出てきたり、違う工夫が必要になります。

時間しか解決できない部分もありますが、しっかりした作戦を立てとかないと時間だけが過ぎていきますので、色々作戦を立てていました。

 

人手が足らないときは全く手が止めれず、ずーっと頭を働かせていてもやはり思考の限界がありますし、試したいアイディアが出ても結局手が足りず半分くらいは試せないまま。。。

やっと心と頭に余裕が少しできましたので、この数年の課題を順次解決しながら更に魅力的な店にしていくつもりです。

この、’’更に魅力的な店’’とは僕が行きたくなる、通いつめたくなる理想の店です。

この通いつめたくなる、というのもポイントで、28才で独立してから今までディナーコースの値段を殆ど変えていません。

毎月メニューを変える以上、毎月通ってくださる方が多いに越したことはありません。

 

8500円という金額はもちろん安いとも思いませんが、コスパが悪いとも思っていません。

ジラソーレ行ったことがある、で終わらずリピートして頂ける内容とお値段のバランスを塾考して決めました。

上質な物をお出しするお約束のお値段だと思っています。

 

あまり金額の事を書きませんが、今回なぜこの流れになったかというと、今月のメニューに珍しくメインディッシュにプラス料金の物が2つありまして、その分選択肢を4つに増やしプラス料金が掛からない物の中でも選択肢があるようにしていますが、皆様の反応がどうかな?と様子を見ているところです。

 

前菜とパスタは、イワシも使えばアワビも使うという感じでやりくりすれば予算内で折り合いは大体つきます。

今回のメインはそういった意味で折り合いが付きません笑

 

仔羊写真

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北海道産の仔羊

本当は神様に感謝しないといけない位恵まれた環境なんだと思います。

一昨年くらいからフランス産の仔羊が再び輸入されているんですから。

多分15、6年輸入止まってたと思いますよ。

あんなに待ち焦がれていたのに、久しぶりの再会で身を焦がす程恋に落ちるかと思っていましたが、案外ぐっと来ませんでした。

勿論上質で美味しいのは間違いないのですが、なんかそれ以上が無い、と言いますか。優等生すぎるのかな。。。

 

対してこちらの北海道産の仔羊。

仔羊のサイズ超えてホゲットですね。

このサイズが半頭で来ると、人手が無い時は大変です。

フランスの仔羊はかなり小さいので、半頭で来ても解体もチョチョイのチョイですし、モモも肩もそんなに固くないので全身普通に焼けます。

 

しかし、北海道産のこのサイズになると部位ごとに料理を変える必要があります。

それが自然なんですけどね。

今回もこの半頭で7種くらいの料理をします。

手間は掛かりますがやっぱり楽しいですし、何より自然です。

そして超新鮮な状態で届き、肉が解れた所から部位に見合った料理をする。

 

殆どの野菜を農家から直接買う様になって久しいですが、納品されてもまだ野菜が生きているんです。

魚介類もそう。

神経〆という特殊な締め方を施した魚介は、生命を絶たれた後も筋肉(いわゆる可食部)は絶命した事に気付いていません。

そしてこれらの魚介類は、全く魚臭くありません。

だから思い切り大胆に、魚を丸ごと使いきれます。

そして思いっきり大胆な火入れが出来ます。

魚種毎の可能性を繊細に探り続けると、気がつけば何処にもない新しい料理が沢山生まれました。

それら魚介類の可能性✖️季節の野菜のバリエーションで更に沢山の料理と出会いました。

それにひきかえ、肉類はどうなんでしょう。

豚肉は魚並みの仕入れ先が開業時からありますので、全身くまなく内臓も一式料理します。

年々内臓系の料理はしなくなりましたが、それは僕も年齢を重ね単純に昔ほど内臓系を体が、味覚が求めていないからでしょう。

でも思いっきり向き合ったお陰で、豚の可能性はかなり多角的に見れたと思います。

そんな経験を牛や羊でも積み重ねていきたい。

強くそう思うようになりました。

ロースやヒレや背肉ばっかり料理してても、楽で美味しいですがその先にたどり着けません。

今までも何度か国産の仔羊を使って来ましたが、‘’本当に仔羊を理解する‘’という第一歩を踏み出しました。

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ディナーコースのメインの仔羊ロースの炭火ロースト

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首とか焼きにくい部位は煮込むと美味い!

仔羊とえんどう豆の煮込みのフジッリ カチョエウオーヴォ

卵とチーズで仕上げる料理でカルボナーラっぽい仕上がりです。

チーズを詰めた仔羊のカツレツも大人気!

これらはカンティーナのアラカルトです。

 

写真無いですが、お昼の6000円のコースの前菜で温かい仔羊のカルパッチョもお出ししてます。

 

この次はすね肉で濃厚な酸っぱくて辛いスープ、肩肉でパプリカと煮込み、仔羊のサルシッチャなんかを予定してます。

ね?楽しそうでしょ??

 

牛肉写真

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実は牛肉が一番の悩みです。

基本的に肉類は見て買えません。

業者さん任せな所があります。

そして納品されたものが気に入らなくても中々交換してくれません。

腐ってるとかは別でしょうけど笑

最近、長年付き合ってきた和牛の会社とは決別しました。

あんまり仕入先を変えない分、新しい仕入先を決めるのに色んな所から牛肉買いまくり!

ついでに色んな部位試しまくり!

調子乗ってホルモン買ったり、油かすまで使い出しました。(前回のサワラ料理)

意識が変わるだけでこんなにも自由な料理が生まれるからこの仕事は最高です。

こんな感じで絶賛一人牛祭り開催しております。

で、どうせなら牛肉の最高峰も試しちゃえ!と先日TVにも出てた滋賀県のサカエヤ精肉店さんの近江牛、そして熟成近江牛も試そう!と自らお店まで買いに行ってきました。

見て買うの楽しい❣️

それがこちらのお肉。

近江牛モモ(写真下段)

熟成近江牛リブロース(写真上段左)

そして近江牛ではありませんが、経産牛リブロース。

どうせなら牛肉3種食べ比べにしてしまえ!

 

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と、メニューに乗せてみました。

メニューにはサカエヤさんのお肉とは書きませんでしたが、アンテナの高いお客さんはこれ、サカエヤさん?と聞いてこられたのでビックリ!

お味は勿論言うこと無しでした。

今回1.5キロお肉を買いましたが、すぐに売り切れました。

今回はお試しで継続的にする予定はありませんが、牛肉の一つの最高峰が見れて良かったです。

そして一つの最高峰を見たお陰で、自分が探している牛肉のイメージがより明確に定まりました。

すぐ見つかるか分かりませんが、しばらく牛肉探しの旅に出ています。

ちなみにプラス料金かからないメインこそ、手を抜きません!

豚コレラのせいで入荷が止まっていた国産の皮付き仔豚のロースト。

ご存知かと思いますが、僕が一番愛するメイン料理は仔豚の丸焼きです。

丸焼きの一部を切り取ったイメージで丁寧に焼きます。

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写真は2年前の15周年パーティで焼いた半丸。もうすぐ17周年…

 

もう一つは写真無しですが、丹波赤鶏の炭火焼き。

今更ですが鳥も奥深いですね…

 

とまあ、メインディッシュからのお話になりましたが、勿論前菜も全部変わってます。

 

https://youtu.be/BKS-j4vFNBk

なははは~ユーチューブデビューしました笑。

毎朝神経〆してくれる針イカです。

動くし透明です。

長いこと扱っていて当たり前になってました。

すみません。

新しく入ったイタリア人コックのマルコが針イカの掃除をしながら、毎回ハアハア興奮するので

『どうしたん?イカ嫌いか?』と聞くと

『シェフ、これが噂のIKEJIMEですね!僕の手の中でピクピクシマース❣️』

と大はしゃぎ。

他の白身も今ならカツオも、イタリアでは見たことないクオリティーだと大興奮。

トッレデルサラチーノも超新鮮な魚介が届きますが、何か違う。

これが噂の日本の活け締め技術なのかと思い知りました、と。

へー。

またも自分がいかに恵まれているか、忘れ去っていました。

こんな良いイカ平気でガンガン煮込んで勿体ない、とは思いませんが、

このイカでしか出来ない料理もしなくっちゃ!

という訳で

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じゃーん

針イカのカルパッチョ 黒ウニ添え イカスミのドレッシング

イメージはクリスト ヴェラート(ヴェールに包まれたキリスト)、、怒られるか笑

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ナポリにあるサン セヴェーロ礼拝堂にある彫刻です。

これ、一枚の大理石から掘り出した作品です。

1752年の作品ですから、最新のテクノロジーも一切なし。

ノミとハンマーだけって事はないでしょうが、いずれにせよ人の手で作られています。

 

極薄にそしてかなり幅広に切ったイカのカルパッチョの下には、初夏の訪れを思わすパプリカのマリネと、過ぎ去る春の玉ねぎのマリネ。

玉ねぎは仕事してます。

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玉ねぎは皮付きで数時間ロースト。

その際粗塩を下に敷いて焼きます。

すると玉ねぎの焼き汁と粗塩が混ざった、玉ねぎ味の醤油の様な液体が出来ます。

皮を剥くと、意外に色白な玉ねぎが肌を見せてくれます。

この玉ねぎをこの玉ねぎ醤油で味付けする訳ですな。

そして生のイカスミが入ったソース。

仕上げにパプリカを乾燥させたパウダー。

それぞれの素材の表面と内面を盛り込んでみました。

 

https://youtu.be/I9qgJPs7Ooo

だいぶんやり方分かってきましたよ!

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活け締め見たいとのリクエストで魚屋見学。朝4時。

手前ポール(大阪交野出身)

奥 マルコ(イタリア カラブリア出身)

パティシエは朝が弱いので欠席。

ソムリエはタコの水槽にかぶりつき。

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フリットにする穴子も神経〆

それよりこの料理15年位作ってますが、15年ぶりにソースが変わりました。

そら豆の酸味のあるソースです。

めちゃ気に入りました。多分5年は変えないでしょう。

 

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こちらもこの数年の鉄板、特大ハマグリ(1個130g)を生のままこじ開け、ステーキの様に焼きます。

ハマグリのビステッカ。

繊細で大胆でしょ?笑

横にいるのが舌平目のサルティンボッカ。

サルティンボッカもイタリア料理の超メジャーな肉料理。

仔牛にセージと生ハムのスライスを貼り付けてソテーする料理です。

しかし、美味いと思った事がない!

淡白な仔牛に生ハムの旨味をプラスするのは理にかなってますが、だいたい生ハムがカピカピに焼けて非常に塩辛く、ただ邪魔な存在でしかないのが常…。

それならっと、舌平目に横向きに切れ目を入れ、開いたところに生ハムを挟む作戦。これなら生ハムの旨味とちょうど良い塩気が間接的に効いて来ます。

あー、スッキリした。

 

そして前菜4品目

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急に蒸し暑い日が続きだしたので、ここで冷たいスープ仕立ての前菜。

カツオとトマトの冷たいスープ仕立て

カツオの4つの表情とトマトの3つの表情が冷ややかに折り重なります。

説明はあまりに長くなりますので割愛!

 

パスタはアワビがタリオリーニからリングイネになり、往年のスペシャリテ

アワビとどんこ椎茸のリングイネになってるのと、

新作

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本日入荷の海老(だいたい足赤海老とかわつ海老のミックス)とヘーゼルナッツとルーコラのフィレイア

これは濃厚海老ソースではなく、あっさり海老とオリーヴソースにヘーゼルナッツとルーコラがアクセントで効いてます。

フィレイアはカラブリア州の手打ちパスタ。

カラブリア出身のマルコにカラブリアのパスタを教えてるのはなんか不思議。

発音はちょっと直されましたが笑。

 

そして最後もう一品

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The あさりのスパゲッティ

ザじゃなくて、ジねジ。

ジ アルフィーのジ。

多分100万回くらい言ってますが、パスタ料理で最も難しいひとつにアサリのスパゲッティがあります。

もう難し過ぎて17年間でメニューに載せたの5回ないくらい。

しかも初めの3年位でその5回したのではないでしょうか。

15年近く逃げてました。

作業的にはシンプルですよ。一見。

でもとてつもなく難しい。

まず、アサリの味であまりにも出来上がりが左右される。

当然塩なんて足しませんし、あわよくば塩を全く入れてなくても味が濃くなりすぎる。

じゃあ、アサリの量を減らすと出汁的な旨さも減る。

そしてそもそもアサリの出汁はお節介気味に旨すぎる。

だからパスタを和える時、混ぜすぎもナンセンス。

上手く言えないけどナンセンス。

ギザギザとトロンを両立させないと、本当のアサリらしさを感じない。

この自分の中のよく分からない高いハードルが、今なら飛びこせる気がしました。

カモメのジョナサンが脳裏に浮かびました。

よし、飛んでみよう。

簡単に言うとアサリは産地と大きさで、大きく味が変わります。

大きさは意外かも知れませんが、小ぶりの方が旨味(甘み)の強い出汁が出ます。

当然、身自体はデカイ方が、自分が出す出汁に負けない力があります。

色んな特徴と問題を整理して、敢えてサイズの異なるアサリを仕入れ、サイズごとにアサリの砂抜き時の塩分濃度を変えます。

当然サイズごとに鍋に投入するタイミングも変え、それぞれに意味のある加熱をし、塩はおろかワインも余計な水分も足さず、オイルとニンニクとパセリとコショウのみ。

1人前なら和える時間は数秒。

我ながら本当にイメージ通りのアサリのスパゲッティが出来ました。

そして毎回味がブレない。

苦手を克服しました。

 

料理の技術、工夫にはまだまだ人の手で向上すると確信しました。

今や厨房にも最新のテクノロジーは珍しく無くなって来てます。

が、そのテクノロジーを使い、仕込んで冷凍した高級料理を堂々と世に出し、またそれを有り難がる消費者がいるのを見ると、料理はまた芸術から遠のいたなと思います。

華やかな盛り付けがアートなのでしょうか?

アーティスティックな盛り付けがアートなんでしょうか?

結構簡単ですよ。

 

難しいのは仕切りのないお重に詰めるおせち。

素人には出来ません。

 

先ほどのクリスト ヴェラートもモチーフとしては、よくあります。

決して奇抜でもなければ、過度な装飾がある訳ではありません。

全てが自然で必然なのでしょう。

 

人手が増え、より深く考察できる今、

神は細部に宿る

この言葉を一番大切にしようと思っています。

 

 

 

 

 

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