いかなご!!!!!
いかなご!!!!!
初めて当店のHPをご覧になる方、ましてや兵庫県の方でなければ、なんのこっちゃ分からないかも知れません。
こんなちっちゃな小魚です。
イワシの稚魚はシラスですが、イカナゴはイカナゴです。
大きくなるとカマスゴとも呼ばれますが、これはニックネームでカマスに似てるからです。
兵庫県の瀬戸内沿岸部では春先になるとスーパーに生のイカナゴがならび、一緒に氷砂糖やでっかいタッパーが売られます。
そうです。
釘煮という佃煮になります。
それを各家庭で結構大量に作って、おばちゃん同志が友達と替えっこしたり、その後一年間の弁当の一ネタとして活躍する訳です。
兵庫県の日本海側は松葉ガニが有名ですね。
カニ漁が始まると漁師さんがこぞって蟹狙いになるので、他の魚種がすごく減ります。
瀬戸内もイカナゴがある間、結構他の魚が減りますね。
大体魚屋さんも、イカナゴの配達がタイムスケジュールの大事なポイントになりますので、いつもより融通が聞かなくなる事もあります。
それくらい、ほんの2,3週間ですがこの辺はイカナゴで沸きます。
2002年にジラソーレをオープンした直後に躍起になって探してた食材がいくつかあります。
・美味しい赤身の牛肉
・乳飲み仔羊
・乳飲み仔豚
・乳飲み山羊
・ナポリ特有の野菜
そして鮮度の良いシラス。
今や山羊以外はまあまあ納得のいくものが手に入ります。
しかし15年前は意外にもシラスさえなかなか手に入らなかったんです。
シラスありますか?って問い合わせると10キロからです、みたいな。。。
シラスを買う方のほとんどがちりめんじゃこの加工用なのでそのロットなんですね。
当時13席の店でしたから、極端なことを言えば毎日100g欲しいのであって10キロなんて買えるはずありません。
で、ある春の日イカナゴに出会ったんです。
あれ?シラス?じゃないな。。。
と恥ずかしながら生のイカナゴを見たことがありませんでした。
市場に出ませんからね。
明石の魚の棚には並びますが、イカナゴ漁の船が帰ってくるのは市場が閉まるころ。
そこからスーパーに直行なんです。
僕も初めて見たのは、スーパーの敷地内で漁師っぽい人が直売してるのを見かけたのがきっかけでした。
ちなみに15年まえは1キロ700円くらいでした。
今は2000円とか、高い時は2500円位します。
へー、イカナゴの生初めて見たわと、安いしすぐに買いました。
ナポリにはシラスの料理が結構あって大好きな食材でした。
イカナゴでシラス料理をすると、そのまま代用しても美味しい料理もあるし、あまり合わない料理もありました。
しかし、なにより衝撃的だったのが鮮度落ちの速さです。
シラスも鮮度落ち早いですが、イカナゴはフェラーリ級です。
小さな店で1キロ買っても全く使いきれません。
安いと言えど捨てるの嫌だし、かといってそんなにイカナゴ毎日食べれません。
そこで閃いたのが、ロサマリーナ。
南イタリアカラブリア州の名産でシラスの唐辛子漬けみたいな保存食です。
それをイカナゴでやって見たろうやないかと。
かといって、今みたいにインターネットも発達してないし、ナポリっ子の僕はロサマリーナのことは知ってるし食べたことはあったけど作り方までは知りませんでした。
ネットでなく、イタリアで買いまくった料理本で調べまくり試作第一弾。
素直に文献に従いましたら、とにかく辛い。
唐辛子の量が凄すぎて、しかもイタリア産の唐辛子ってそんなに安くないし、700円のイカナゴの保存食に対し、唐辛子代の方がはるかに高い。
しかも辛すぎるし、シラスより水分というか内臓が多いためなんか思ってるものとは別の物になりました。
でもなんか美味しい物が出来る予感だけはしてました。
直感的に、長期保存できるものにはならないなと察しました。
でも何もしないと3日目には全く使えません。
そこで考えたのがマリネと塩辛の間くらいの落としどころを探る作戦でした。
これが非常にうまく行き、今のジラソーレの大人気イカナゴのブルスケッタが生まれました。
昔はそれでも結構唐辛子利かせていたので、イカナゴのロサマリーナのブルスケッタと呼んでいましたが、年々ナチュラルな仕上がりになってきました。
ロサマリーナって名前を付けたかったから唐辛子を結構入れてましたが、美味しさだけを考えるとほどほどで良い。
その頃からイタリア料理が好きでイタリアを愛しているけど、料理の本質を見失ってはいけないな、と強く思うようになりました。
写真を見る限り、焼いたパンに調味された小魚が乗ってるだけですが、食べたらブルっとします。
20人に一人くらい苦手な方もいますね。
でもそれ以上に中毒者も多数です。
なんてことない料理ですが、日本でイタリア料理をする難しさと楽しさ、どちらも教えてくれた思い出深い料理です。
昨日解禁でした。
3月いっぱいはないと思います。
気になる方はお早めに!
ランチの前菜の盛り合わせにも乗りますし、シュエシュエでアラカルトでも召し上がれますし、ディナーコースの突き出しでも出ます。
まさにジラソーレの春の風物詩です。