2014年3月
オステリア オ ジラソーレ 移転のお知らせ
トップページでご報告致しましたが、またしても懲りずに移転する事になりました。
先ずは、どんなお店になるか、簡単にご紹介します。
まず、皆様。店の形態が変わるのか?等のご心配もあるでしょうが、変わりません。
オステリア オ ジラソーレのコンセプトは永遠に不滅です。
今後更に進化、深化したいとは切に思いますが。。
席数も同程度です。
なら、何で移転すんねん!
となりますね。
よくぞ聞いてくれました。
次のお店は、今のお店の約倍の敷地があります。
その中に、今と同じ規模のオステリア オ ジラソーレがあります。
その横に、(厳密には前に)イタリア菓子専門店(パスティッチェリア)、イタリアの惣菜専門店(ロスティッチェリア)を併設し、イートイン出来るようにバールがあります。
4軒の楽しさを一軒に無理やり突っ込みます。
何故か?
僕が多店舗展開できる器じゃないからです。
ムッチャでっかい厨房作って、全部睨みを利かせ、全部納得いくものに囲まれたい。
僕は、12席の店からスタートしました。
12席だから出来ていた事、12席じゃ出来なかった事。
その後移転し、20席の今の店に移りました。
結局、何かを諦め、何かを手に入れた訳です。
この20席の店は、僕に沢山の事を与えてくれ、僕は人生を捧げました。
俗に言う悪魔との契約です。
飲食業の数あるカテゴリーの中で、いわゆるちゃんとしたレストランは、総合格闘技です。
だからエキサイティングかつセクシーな仕事ですが、ダメージ、摩耗も酷い。
僕は現役を永く続けたい。
出来立ての料理を出したい。
常にその瞬間のベストを尽くしたい。
出来るだけ全部自分で作りたい。
そうなると、20席は限界の限界です。
それにプラス、パスティッチェリアとロスティッチェリアを併設するのは無謀に見えるかも知れません。
しかし、したくて堪らんのです。
全身の全細胞がしたがっています。
こんな店がしたくて、修行して、嫌な事にも耐えて、今がそのチャンスかも?と思った以上、男として挑戦しない訳にはいきません。
一部の方には結構反対もされました。
でもそれ以上に沢山の方に応援して頂いています。
思えばもう12,3年以上前です。
4年半を過ごしたナポリ。
全くお金なく、貧乏で、大家さんに頼み込んで物置にすましてもらったり、友達の家のこれまた物置に転がり込んだり。
最初の物置はドアがありましたが、トイレと窓で繋がっており、人体とはこんな不思議な音を発するのだと色んな発見をし、
二軒目の物置はドアすらなく、プライバシーゼロ。拾ってきたベットで寝てました。
このベット、丁度ど真ん中のあたり気を付けないとスプリングが飛び出しており、誤って寝返りを打つとケツに刺さり朝起きたら血だらけというアトラクション付でした。
三軒目の家は最高でした。
カトリックの教会のゲストルーム。
テラス、バスタブ付。
知人のご厚意で紹介頂き、格安で住めました。
20代の僕は神の家に、料理の本と間違って買ってしまった数冊のエロ本を持ち込んでいました。
頼んでも無いのに信者のおばさんが、僕の部屋を掃除してくれたんですね。
中学、高校とエロ本を隠していた場所は、20代になろうが、外国だろうが変わりません。
三つ子の魂百まで
エロ本を自分のお袋に見つかろうが、外国で熱心なカトリック信者に見つかろうが、そのダメージも良く似ていました。
そして見つけた方の行動も似ていますね。綺麗に重ねてベットの下。
きっと見つけた方のショックも同じなんでしょう。
ほどなくして、その教会に住めなくなりました。
何故だったのでしょう。
その後、片道1時間歩く教会に引っ越しました。
全てのコレクションとサヨナラして。。。
しかし、1日24時間。最低16時間働かされる店で、往復2時間の徒歩通勤はめげました。
最終の棲家は店の近くに乗り捨てられていたキャンピングカー。
最初は電気もなく、ロウソクで暮らしていました。
しかし、腐ってもキャンピングカー。
同僚のお父さんだったかな?修理して、レストランの駐車場から電気引いてくれて、僕の小さな城に明かりが付きました。
嬉しかったなー。。。
こんな、おバカな貧乏修行でしたが、イタリアという国はホントに素晴らしい。
こんなにお金がなくても、ちゃんと美味しいものが食べれるのです。
そのちゃんとというのは、決してレストランで食べるような物ではありませんが、添加物や化学調味料の入ってない、手作り感満載の食べ物です。
例えば、切り売りのピッツァだったり、揚げピッツァだったり、コロッケだったり、スップリ(ライルコロッケ)だったり。。
そうです。つまりはジャンクフードなんですけど、全部手作り。
職人やコックが朝からその日の分を作ってるんです。
日本でいう、タコ焼きとか、昔ながらのパン屋さんの総菜パンとか、おにぎりとかなんですかね。
でも、美味しくて、おしゃれで、温かくて、思わず笑顔になります。
そんな店がしたい。
後、お菓子もそうです。
イタリア菓子は素朴です。
そして詰まってるものが多い。
レストランでコースを食べた後に、日本人がさー、ドルチェ、ドルチェとなるような代物じゃありません。
今のジラソーレでは、小ぶりにしたり、レストランらしい口どけを狙ったりしてますが、思いっきりイタリア菓子をバーンとお出ししてみたい。
僕は酒飲みなので、基本的にあまり甘い物を食べませんでした。イタリアに行くまでは。
イタリアに住みだして3か月程したある日、急にクラクラして立てなくなりました。
そんな僕を見た当時の大家さんが、エスプレッソに砂糖を5,6杯ぶち込んで飲ませてくれました。
あら不思議。
点滴したみたいに元気になりました。
低血糖だったようです。
エスプレッソに砂糖も入れないし、果物も食べない、ドルチェも食べないとイタリアでは糖分が足らなくなります。
和食では、無意識に砂糖を摂取しますが、イタリア料理には砂糖は入りません。
だからイタリア人は果物を良く食べ、エスプレッソには砂糖をこれでもかと入れ、ドルチェはキーンと甘いのです。
そっから甘い物にはまりました。
朝、バールで揚げドーナツや甘いクロワッサン(コルネットと言います)を食べる幸せ。
夕方、ランチとディナーの間の休憩中に貪り食ったカンノーロ。
どちらも将来、絶対自分の店で出そうと誓いました。
それもレストランでなく、イタリアのバールやパスティッチェリアの様に、パッと食べれてパッとデートの続きが出来るようなのがいいな~と思いました。
これらの、揚げたてのドーナツや揚げピッツァ、ドルチェなんかは、小さな子供から大人まで幸せにできます。
レストランには来れない、小さな子供も夢中になる。
口の周りに砂糖をいっぱい着けながらドーナツ食べてる子供もいれば、昼からオープンスペースでスプマンテ飲んで葉巻吸っているオッサンがいる。
これが僕が思うカッコいい店。
そんな店が、色々言われながらも10年も続けば必ず町の風景の一部になると思います。
それがイタリアに憧れ、恋い焦がれた僕が、日本でイタリア料理をする理由になるのだと信じています。
イタリア料理のピンからキリまで。
イタリアの街角を切り取ったような店。
デカい借金して、箱と商品は僕が用意します。
新しいジラソーレ。
今まで以上に皆様の人生にグイグイ侵入致します。
使い倒してくださいませ。
新店舗住所
兵庫県芦屋市宮塚町15-6 キューブ芦屋1F
電話番号は同じです。
6月上旬オープン予定です。
まだ、このお店の最終日も決まっておりません。5月20日位までは必ずやっております。
パニーニ(複)。一個ならパニーノ。
中途半端に日本で市民権を得てますが、実際イタリアでは物凄く日常的に食べられます。
まさに日本のおにぎりと同じ存在。
パニーノと呼ばれるのは基本的に丸いパンです。
仮に中に何にも入ってなくてもパニーノ。
そして、中になんか詰め込むように存在する、パニーノ用パニーノ。その名もロゼッタ。
小さいバラという意味です。
ロゼッタの特徴はしっかりしてるけど、クリスピーで分厚すぎない皮と特殊な成形で生み出される中の空洞。
詰め込む具材はなんでもOK!
生ハムやサラミ、チーズは勿論、カツレツ、サラダ、野菜のマリネ。。
僕の一番はモルタデッラハム。
これを超薄切りにして、これでもかと言う位詰め込む。
これとビール。
なんで戦争とかするんやろ?と思いますよ。
新しい店のファザード。
恐怖とやる気と緊張で錯乱しかけてます。
でもね、絶対良い店になりますよ。
ちょっとハイカウンターな立ち飲みスペースとか、オープンスペースとか、こういうのは凄く好きな方と嫌いな方に分かれます。
例えば、こんなに小さな子供を魅了してやろうと息巻きながらハイカウンター。
子供は届きません。
ワザとです。
必ず、子供もファンになってくれるはず。
ちょい悪オヤジも女子高生も、色んな思惑で来て下されば良い。
でも、誰にも合わせません。
元々、色んな世代に愛されるはずのものだから。
だから子供にも合わせません。
むしろ、早く大人になりたいと思わせたい。
レストランと違い、細かいルールも出来るだけ無し。
その瞬間にそこに居合わせる皆様で、その時ベストな使い勝手を作り上げたい。
大人社会のヨーロッパで学んだ事です。
春支度
2月は大雪が降りましたね。
各地で大きな被害が出ましたが、皆様大丈夫でしたか?
さて、急に春めきました。
僕の頭は年中春めいていますが、水道の水も延髄に衝撃が走るほど冷たくないし、いよいよ春ですね。
春は、1年で一番得意な季節。
食材のヴァリエーションも増えますし、楽しいですね。
まだ、肌寒い日も続きますので冬っぽい物もありますし、春先取りな料理もあります。
ちょっくらご案内しましょう。
最近、突出しの後の冷前菜で良くお出しする、ミル貝の料理。
生のミル貝、フリアリエッリ(ナポリの葉ブロッコリ)、カリフラワーのピュレ、ミル貝のジュレ、水牛のモッツァレラ。
これらの食材を色々一緒に召し上がって頂くとあら不思議。
ミル貝だけ食べるより、ミル貝の味が鮮烈に感じます。
ポイントは油脂分。
カリフラワーのピュレの中に入っているだけで、後はオリーブオイルも一切無し。
以前から、生の貝に生のオリーブオイルって合わないなーと思っていました。
なんか、無意識にかけがちですが、最近そういうことを細かく見直しております。
すると、塩、コショーってセットみたいになってますが、コショーもあまり使わなくなりました。
使うときはしっかり効かせますが、魚、肉ともにほぼコショーはしなくなりましたね。
逆に、貝なんかはコショウ合うと思います。
パンって生き物やなーと最近思っています。
先ず、一般的に天然酵母と呼ばれる、自然発酵種。
簡単にいったらレーズンやヨーグルトなんかの糖質と粉と水を混ぜて放置。
ちょっとづつ水と粉を足しながら更に放置。
放置。
と、放置プレーを続けると酸味が出て、ブクブクしてきます。
只の粉と水だったものに、生命が宿るのですね。
ちょっと神になった気分になれます。
この天然酵母やパン生地ってほっとくと、ドンドン乾燥します。
で、表面カピカピになるんですが、そのカピカピの下は全然大丈夫なんですね。
なんか、怪我してカサブタ出来るみたい。
表面をさっとカピカピにして中を守るというか、全滅を防ごうとしている感じで凄いです。
更に、この急に春らしくなったりすると、発酵が急に活発になります。
オーブンに入れる前から100点の顔してます。
可愛くて仕方ない。。。
ナポリのバールでの朝ご飯と言えば、コルネット(クロワッサン)かグラッファ(この揚げドーナツ)
朝一から糖質、脂質共にマックスです。
でも、ほんとに目がシャキーンって覚めます。
超ハイカロリーですが、必ず笑顔になります。
ナポリでお菓子屋で働いてた時、毎日の朝一の仕事はグラッファからでした。
数か月だけの契約でしたが、毎日食べていました。
流石に見るのも嫌になりましたが、日本に帰ってからたまに無性に食べたくなります。
最近は賄用に仕込んでる事がありますので、ご希望の方はご予約時に有無をお尋ねください。
基本プレーンですが、クリーム入りも美味しい。
さみしがり屋の僕は、はち切れんばかりのクリームを詰め込みます。
昔から妄想癖が酷いのですが、妄想のテーマの一つにサバイバルというのがあります。
僕、サバイバルオタクです。
その、サバイバル妄想のステージの1つに無人島があります。
サバイバル妄想の中では比較的楽しくて、簡単です。
幼少のころから、無人島に持って行くリストというのが頭の中にありまして、持って行けるヴォリュームも決まっています。
何か、新しい持って行きたい物が見つかると、何かを諦めなければなりません。
それがルールです。
無人島に持って行くリストに加えました。
孤独が限界に達して気がふれそうな時でも、グラッファで笑顔が生まれます。