芦屋のイタリア料理とイタリアワインのお店

tel 0797-35-0847 open AM11:30~PM2:00 PM6:00~PM9:00 (L.O)

2024年3月

HOME>COLUMNコラム >2024年3月

但馬牛について語ります。


皆さんは但馬牛をご存知でしょうか。

聞いた事はありますね?

高級和牛の代表格といった認識の方が多数ではないでしょうか。

今回、何故但馬牛について詳しく説明しようと思ったかと言うと、

瀬戸内の魚介、近郊の野菜と並ぶジラソーレのテーマのひとつとして取り組む覚悟が出来たからです。

今後ジラソーレのお肉料理といえば、

純血但馬経産牛

北海道の高橋くんの羊

冬は京都の鴨

丹波、淡路、岡山辺りの猪

夏場は国産の子豚

丹波の鹿

辺りが主力です。

滅多に外国産の物は使わないと思います。

その中で但馬経産牛は一年を通して使う予定です。

少し但馬牛物語にお付き合い下さい。

まず但馬牛ですが読み方はたじまうし、たじまぎゅう両方存在します。

簡単にいうと生きてる間はたじまうし、主に血統の話になるときの呼び名で、たじまぎゅうはお肉になった後の呼び名、ブランド名だと思って下さい。

日本中の黒毛和牛、有名なブランド牛も必ず血統に但馬牛(この場合たじまうしですね)が入っています。しかし純血の但馬牛ではありません。そして日本の全ての黒毛和牛の祖として血統を遡れば田尻号という但馬牛にたどり着きます。

純血の但馬牛は兵庫県にしか存在しません。

何故かというと、明治時代から牛肉食が広まりだし、1800年ごろには但馬牛の質の良さは既に評判になっており(血統に目を向けた前田周助さんと言う方の功績が大きい)、更なる品種改良を目指し外国の牛との交配が盛んに行われました。(大きく育つ様に。つまりはお金目的ですね。但馬牛は大きくなりにくい種なんです)

様々な交配を試した結果、すべて品質低下になっていると気付き海外種との交配は中止され、1898年から牛の血統管理が始まり、その後海外血統が入った牛は排除されます。

しかし純血の但馬牛が再評価された時には僅か4頭しか残っていませんでした。そこが但馬地方の小代(おのしろ)です。

現在の兵庫県で飼育されてる全ての但馬牛はこの4頭からの再出発で、今なお兵庫県は但馬牛の保護を全力でしてます。

兵庫県には他県の牛を一切受け入れない閉鎖飼育が行われており、但馬牛の血統を守っているそうです。

熱い話です。

但馬うしの話をしましたが、今度はぎゅうの話です。

お肉屋さんで但馬牛、神戸牛、神戸ビーフ、神戸肉、KOBE BEEFと色んな名称を見かけますが違いを説明します。

但馬牛のうち、最も厳しい基準をクリアしたものを神戸肉、または神戸ビーフと呼びます。KOBE BEEFはその英語表記で、意外ですが最もよく聞く神戸牛(ぎゅう)は、松坂牛や近江牛に対する俗称のようです。

ですのでこの際是非とも神戸ビーフの名称に慣れましょう。

この厳しい基準というのがかの有名なA5とかA4とか紙のサイズみたいなやつです。

レストランのメニューでも何ちゃら牛A5ランクのフィレステーキとか見かけます。

何となく美味しさのランクに錯覚してしまいますが、基本的にお肉屋さん目線の歩留まりとサシの割合の話しで美味しさと直結した基準ではありません。

しかしながらA4、A5が高値で取り引きされるのは間違いなく、多くの生産者さんはサシの入ったお肉を目指してるのは事実です。

ちなみに養豚、養鶏って言葉は一般的ですがあまり養牛って聞きません。

牛は飼育期間が長いので

繁殖

育成

肥育と分かれていてスキルも大きく違います。

全期間を手掛ける農家さんもいれば、それぞれの期間専門の方もいます。

ここまでは一般的な話しで、牛肉が好き、焼肉、すき焼き、柔らかいお肉が好きという方、あまり牛肉を好んで食べない方、焼肉、すき焼き殆ど食べない方、サシの多いお肉が苦手な方、意見は分かれるかも知れませんが、対象となるお肉は同じです。

食べ物ですので好みが分かれるのは自然な話しで、羊だってめっちゃ好きな人と苦手な人、魚介だって同じく好き嫌い分かれる事は多々あります。

ここからは沢山の裏話とジラソーレ目線の話になります。

まず僕自身サシのキツい高級黒毛和牛は苦手です。焼肉は年に1回オカンの誕生日に行くだけです。もちろんオカンのリクエストです。

すき焼きは小学5年から食べてません。

牛肉が嫌いな訳ではなく、牛肉のストライクゾーンが狭いんです。むしろ自分好みの牛肉をずーっと探してました。

やっぱりね、諦めないのが大事。

辿り着いたのは純血但馬経産牛です。

但馬経産牛自体は数年前から使ってますが、最近淡路島の生産者さん主体に変えました。

先ほどの話しに少し戻りますが、淡路島は淡路ビーフや淡路牛を産出する牛肉の名産地です。

淡路ビーフは神戸ビーフと同格と思って下さい。淡路牛はややこしいですが淡路島で飼育された純血でない交雑種です。これはこれで非常に美味しいです。淡路ビーフよりはお求めやすいお値段です。

今でこそ肥育、出荷までする生産者さんが増えましたが、

以前は淡路島は但馬牛の繁殖の一大産地だったのです。

淡路島で生まれた但馬牛が但馬や三田などの生産地に買われて行き

28ヶ月から60ヶ月飼育され神戸ビーフや三田牛等になって行く訳です。

ですので、淡路島に昔からお住まいの方々は牛を食べるとしたら もうお産が難しくなった経産牛が基本だっそうです。

つまり経産牛を美味しく食べるスキル、文化が発達してると言えます。

最近色々お肉の事を教えてくださる、淡路ビーフ とうげの原田社長をお肉の師匠と崇めてます。

その原田社長はお肉屋さんの2代目で子供の頃からご実家のお肉を食べ続けてましたが初めて淡路島の外で牛肉食べた時なんじゃこりゃ?と思ったそうです。

そもそも何故牛肉はしつこい、胸焼けする、少しで良いと言う人がいるのか理解出来なかったそうですが、一般的な牛肉を食べて分かったそうです。

経産牛は特殊な例として、但馬牛を飼ってる農家さんでもサシの多さを目指さず、

ご自分の信じる美味しさを追求して牛飼いをなさってる方もいます。

もっと言うと、サシがしっかり入る飼い方をしてる農家さんも、自分が食べるのはサシのキツくない物を選ぶそうでこの辺りは消費者、販売者、生産者の幸せの共有が出来てないと思います。

更に裏話になりますが、サシを多く入れようとすると飼料が高カロリーになり、ビタミンを含む草を食べる量が減ります。

反芻動物なのに反芻する必要のない食事が増え、内臓が発達しません。

そしてこの様な飼育理論の農家さんはやはり飼料添加物も使います。抗生剤のモネンシンが良く使われるそうでアメリカ、カナダ、日本では認可されてますが、EUでは禁止されてます。

肉師匠の原田社長はモネンシンフリー(不使用)の農家さんからのみお肉を買っているそうです。つまりはサシ至上主義ではない、牛肉の本当の美味しさを追求する生産者さんと言えるかも知れません。

とうげさんでは、牛を数頭仕入れた際生産者さんも呼んでブラインドテイスティングをするらしいです。

好きな順位をそれぞれ発表するらしいのですが、常にハイレベルな争いの中、ほぼ生産者さんが1番を付けるお肉はご自分で育てた牛になるみたいです。

つまり自分好みの味になる育て方が出来てるという事です。これは素晴らしい話しでしょ?

サシが沢山入るように飼料添加物を使う農家さんもいれば、自分が信じる美味い肉をイメージしその為には牛に愛情を注ぐしかないと、飼育に手間を惜しまない農家さん。

高カロリー飼料はほっといても牛は食べますが、ほし草は本来の食べ物のはずなのに食い渋る事があるそうです。

そんな時は干し草をばさっと適当に与えるのではなく、綺麗に横に揃えてやると牛にとって食べやすく良く食べるそうです。

また短く切った方が沢山食べますが、長いままの方がしっかりはむはむして、しっかり反芻し健康に育つそうです。

短い草を与えるのは甘やかしになるのでしょう。牛が長い草を食べてる間も頻繁に草の向きを整えて牛が食べ易い工夫をします。

世界はそれを愛と呼ぶんだぜ

先日農場を見学させて頂きましたが、

餌をやってるのではないなぁ、牛の食事を用意してはるなぁと温かい気持ちになりました。

感情論としてサシを目指さない農家さんのお肉を買いたいと思うのは当然で、

更にその先の話しが経産牛です。

近年、経産牛に目を向けるレストランが増えているのも事実ですし、相変わらず評価が限定的なのも事実です。

日本の魚介類の価値が和食、もっと言えば寿司屋さんの高級ネタと比例して構築されたままのように、牛肉の価値も一昔前の何となく作られた価値を信じ込まされたままな部分が大きいです。

寿司屋さんんが求める最上の魚と、西洋料理、中華の料理人が求める最上の魚は少し違うはずです。

同じ様に、焼肉屋さん、ステーキハウス、割烹の料理人と西洋料理の料理人が求める牛肉も違って然りです。

凄まじいサシの牛肉にバターたっぷりの赤ワインソースを添える料理人やマグロの大トロとアボカドを合わせる西洋料理の料理人もいますから一概には言えませんが、経産牛は西洋料理向きだと思います。

黒毛和牛は究極的にご飯と合うと思いますが、経産牛は赤ワインが欲しくなります。

経産牛は焼くのが少し難しいです。

それも西洋料理的だと思いますし、サシ入った牛肉は家でホットプレートで焼いても美味しく食べれますが、経産牛はプロが焼いた方が美味しく焼けると思います。

特に経産牛のロースでない部位。

とろける柔らかさはありませんが、香り、歯応え、旨味の余韻にハーモニーがあります。

ジラソーレもほぼお任せコースになり、最後の1品だけ選んで頂きます。

お任せコースのお店が増えて、その多くのお店のメインは牛肉な事が多く、自分がお客さん目線で考えた時、西洋料理店に行って毎回牛肉なのは少し寂しいと思ってました。

実際当店の常連様でも毎回牛肉を選ぶ方もいれば、必ず牛以外を注文する方もいらっしゃいます。牛肉を食べる機会は多いですから。

しかし牛肉を今まで選ばなかったお客様に、是非1度純血但馬経産牛を試して頂きたいと思います。何なら違う種族、生き物だと思って欲しいですね。

先日、淡路島に牛研修行きまして、朝9時半から午後2時半まで、ずーっと途切れるとこなく純血但馬牛の事を熱く語って下さった原田社長の火傷しそうな但馬牛愛を是非感じで欲しいと思います。

ジラソーレでは今後、色んな部位を順番に仕入れ、毎回牛肉を頼んでも毎回違う楽しさを提案したいと思います。

また、生産者さんごとの味わい、経産牛の月齢での味わいの違いもイメージ出来る様、メニューに生産者さんのお名前や月齢、牛の名前も?記載しようと思ってます。

僕は届いたお肉を出来るだけ美味しく料理し、お客様の美味しかったを生産者さんにお返ししたいと思ってます。

お肉の味を追求した飼育をしてる農家さんに、お客様の美味しかったが届かないのは勿体話しです。

そして但馬牛の生産者の世界も跡継ぎがいない問題を抱えています。

生産者、販売者、料理人、お客さん、このすべての人達のハッピーが同じ方向を向けば、少しずつ色んな問題が好転すると思っています。

世界じゃそれも愛と呼ぶんだぜ

love&peace 

瀬戸内の抜群の魚

季節ごとの近郊の野菜

僕のパスタ

美味い肉と赤ワイン

愛憎の間を揺れ動くデザート

全てをひとつの景色に変えてくれる器

love&peace

ジラソーレではそれを愛と呼ぶんだぜ

loading